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ウェブ運用の落とし穴。NO.1表示、ステマ、最終確認画面の不備に要注意。
ウェブでビジネスをする場合、閲覧者の信用を得るのが何より大事です。
ビジネスで消費者庁から処分を受けたらダメージは計り知れず、そんな事態になったら処分の黒歴史がネットに残り続けることになってしまいます。
2024年(1月から本記事執筆時の10月18日まで)の消費者庁による景品表示法の措置命令、特定商取引法の業務停止命令の事案を集計すると、「NO.1表示」「ステルスマーケティング」「最終確認画面の不備」の3つが処分の主事由となっています。
インターネット・ビジネスを問題なく展開するために、押さえておくべき3つの事項について解説します。
2024年(10月18日まで)のNO.1表示、ステマ、最終確認画面不備の処分例
3つの事由に該当する処分例は次のとおりです。
【景品表示法の措置命令】
(1)「NO.1表示」
・太陽光発電システム販売D施工事業者 2024年2月27日
・太陽光発電システム販売D施工事業者 2024年2月29日
・モバイルルーター販売事業者 2024年3月1日
・住宅建築事業者 2024年3月1日
・家庭用蓄電池販売事業者 2024年3月5日
・家庭用蓄電池販売事業者 2024年3月7日
(2)「ステルスマーケティング」
・内科クリニック 2024年06月07日
・ジム運営事業者 2024年08月09日
【特定商取引法の業務停止処分】
(3)「最終確認画面の不備」
・健康食品通販事業者 2024年3月15日
・健康食品通販事業者 2024年4月10日
・電子たばこ通販事業者 2024年4月19日
・美容商材通販事業者 2024年10月4日
・美容商材通販事業者 2024年10月17日
これら3つの処分事由はウェブでビジネスをする事業者にとって大きなリスクといえるもので、法令違反の可能性がある広告表現や申込フローについては採用をしないように注意が必要です。
以下に順を追って処分の傾向や適正な対応方法について解説します。
NO.1表示
景品表示法第5条1項では、実際よりも著しく優良と表示する広告を優良誤認表示として禁止しています。
「顧客満足度NO.1」「地域販売量NO.1」「コストパフォーマンスNO.1」等のNO.1を標ぼうする広告表現は、客観的な調査資料による裏付けがない限り、優良誤認表示と認定されます。
実際の処分事例では、
「口コミ人気NO.1蓄電池販売会社」
「〇グループは日本トレンドリサーチによる調査の結果、『土地情報が豊富な注文住宅会社』『高品質なのにローコストな注文住宅会社』『初めて住宅を建てる方におすすめの注文住宅会社』の3項目で満足度NO.1を獲得」
「顧客対応満足度NO.1 海外Wi-Fiレンタル」
といった広告表現が優良誤認と認定されています。
こうした表示の根拠となる調査が、販売事業者のサービスを利用したことのない消費者に対して、ウェブサイトの印象のみで回答を求めるもので、真の利用者のサービス評価ではないことが問題視されました。
調査会社がそのような手法でイメージ調査をしたものをNO.1表示の根拠とする事例が多発しており、消費者庁は調査内容を詳しく検討して不当表示の判断を下しています。
つまり調査会社に依頼して、イメージ調査でNO.1の結果が出たとの調査結果があったとしても、それが真の利用者への調査と確認できないものは、その調査結果を広告に用いるのは不当表示のリスクが高いということを理解しなくてはなりません。
消費者庁は「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しており、比較する商品等が適切に選定されていること、調査対象者が適切に選定されていること、調査が公平な方法で実施されていること、表示内容と調査結果が適切に対応していること、といった指針を示しています。
NO.1表示に関する消費者庁の監視はシビアになっており、明確な根拠がない限りNO.1表示は避ける方が無難です。
ステルスマーケティング
景品表示法第5条3項の総理大臣指定の告示では、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を禁止しており、これがいわゆるステルスマーケティングになります。
ステルスマーケティングは以下の2つに類型化されています。
(1)事業者が自ら行う表示(自作自演のなりすまし投稿)
(2)事業者が第三者に依頼して広告を表示(インフルエンサーに依頼等)
この2つに該当する表示(広告)は景品表示法の禁止行為とされています。
ステルスマーケティングが景品表示法の禁止行為に指定されたのは2023年10月1日であり、その施行から日も浅いため処分例は現時点では2件と少ないですが、わざわざ景品表示法の改正事項に組み込まれたことからも今後は処分が増えていく可能性が高いといえます。
処分例の一つは、クリニックが患者に対し、グーグルマップに星4以上のクチコミを投稿した場合にはワクチン接種代金を値引きするという告知をしたことが、そのクチコミ投稿には報酬性があり、一般消費者にはその関係性が判別できないためステルスマーケティングにあたると認定されました。
もう一つの処分例は、ジム運営事業者が報酬を支払ってインスタグラマーに脱毛サービスの体験記を投稿してもらい、その投稿を自社ウェブサイトで紹介した行為について、広告であることを表示していなかったため、閲覧者にとってはインスタグラマー個人の純粋な体験記であると誤認させるものであったためステルスマーケティングと認定されました。
いずれも「事業者が第三者に依頼して広告を表示」するものであったと認定されています。
事業者が顧客に対してクチコミやSNSへの投稿を依頼する行為自体には問題はありませんが、景品や報酬の支払い等のインセンティブを与え、事業者にとって有利な内容の投稿をするよう指示をした場合はステルスマーケティングに該当します。
インセンティブを与えて投稿の内容を指示した場合は、広告に該当するため、投稿の際には「#広告」「#PR」といった広告であることを告知する表示をするのが絶対条件になります。
投稿者に「#広告」「#PR」の表示を徹底できない場合は、インセンティブを与えての投稿を促すキャンペーン施策は行ってはなりません。
最終確認画面の不備
特定商取引法第12条の6では、通販契約の取引における最終確認画面には(1)商品分量・(2)価格・(3)支払時期と方法・(4)引き渡し時期、提供時期・(5)解約条件・(6)申込期間について漏れなく表示する義務が定められています。
特定商取引法第11条の取引条件の表示義務は、インターネット・ビジネスを展開する事業者にとってはほぼ常識となっており、多くの事業者が「特定商取引法に基づく表示」というページを設けて取引条件を掲載しています。
ちなみに同法第11条の取引条件の表示義務に不備があった場合は行政処分の対象とはなりますが、それを理由とした消費者の取消権は認められていません。
しかし、同法第12条の6の最終確認画面の表示義務に不備があった場合には、行政処分の対象となるうえに消費者の取消権が認められています(同法第15条の4)。
同法12条の6の最終確認画面の表示義務は2022年6月1日に施行された日の浅いルールなので、まだ徹底できていない事業者は多いです。
最終確認画面の表示事項は、消費者がスクリーンショット撮影をすれば事実証明は容易なので、不備があれば取消権の行使により返金対応が必要となり、事業者にとって対応は急務といえます。
特に定期購入(サブスクリプション)契約については、契約期間や支払総額、解約方法などを明確に表示しなくてはならず、それが適正に表示されていないケースが目立ちます。
最終確認画面の表示義務違反で業務停止処分を受けた事例では、広告内容と利用規約で掲載内容が異なっていたり、解約方法で電話を指定しながら全く繋がらないことが指摘されており、基本的な表示義務に対応できていないことが問題となっています。
まとめ
インターネット・ビジネスを展開していく上では、「NO.1表示」「ステルスマーケティング」「最終確認画面の不備」の3つが法令違反となるリスクが高い事項であり、これらを避けてコンプライアンスを確立しなくてはなりません。
これら3つは事業者のうっかりミスもありうる課題であり、消費者庁の処分が下されたら検索エンジンの履歴に残り続ける不名誉な記録になってしまいます。
そのような事態を予防し、クライアントに支持され続けるビジネスを継続するために、以下の3つを徹底していきましょう。
(1)明確な証明が出来ないNO.1表示の広告は絶対に行わない。
(2)インセンティブを提供して顧客にSNS投稿を依頼する際には「#広告」の表示を絶対条件とする。
(「#広告」表示が徹底できないならインセンティブ供与の伴うSNS施策は行わない)。
(3)ウェブサイトの申込フォーム(最終確認画面)には特定商取引法第12条の表示義務事項の掲載を行う。
こうした基本事項を徹底することで顧客からの信頼感は積みあがっていくものです。疎かにすることなく、すぐに取り組みましょう。
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通販の定期購入契約の利用規約(雛型)と解説書|遠山行政書士事務所
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貴社のビジネスに活用頂ければ幸いです。