SNSやブログからLINE・ZOOMに誘導するビジネスに必要な契約書。しくじると業務停止リスクも。
XやInstagram等のSNSまたはブログでアクセスを集め、そこからLINEやZOOMに誘導してコンサルティングを行い、商材やサービスを販売するビジネス手法が広がっています。
こうしたビジネスでは、最終的には閲覧者がインターネット上の申込フォームから手続を行うため通信販売だと思われていることも多いものです。
結論から言うと、こうしたビジネス・スキームは特定商取引法の電話勧誘販売(もしくは訪問販売)に該当するため、販売事業者は消費者に対し紙媒体の契約書を交付する義務があり、クーリングオフ制度の対象にもなります。
つまり販売事業者が通信販売だと認識していて、契約書の交付を怠った場合は、特定商取引法の違反行為になるので、消費者庁の業務停止処分や罰金の対象になり、更には契約書不交付を理由とした消費者からの契約解除(クーリングオフ)にもつながります。
同法では、通信販売には契約書の交付義務やクーリングオフ対応の必要はなく、取引情報を適切に表示すればよいことになっています。
しかし、電話勧誘販売や訪問販売については、必ず紙媒体の契約書を交付する義務とクーリングオフ対応の義務が定められており、違反には厳しい罰則適用があります。
特定商取引法の政令第2条第1号によれば、ウェブ広告を見た消費者に契約の勧誘をすることを告げずに電話をかけさせる行為(いわゆるアップセル・クロスセル)については電話勧誘販売に該当するとされています。
※アップセルとは、商品やサービスをより上位の高価なものに移行してもらう営業活動のことをいい、クロスセルとは、関連するものを組合せで購入してもらう営業活動のことをいいます。
また同法の省令第3条1号~3号によれば、ショートメール、電子メール、SNSを利用したアポイントメントセールスは訪問販売に該当するとされています。
同法の電話勧誘販売と訪問販売のルールは共通しており、交付する契約書に記載が義務付けられる事項は同様の内容になっています。
<契約書面の記載義務事項>
・商品(権利・サービス)の種類
・商品(権利・サービス)の価格
・クーリングオフに関する事項
・事業者の名称、住所、電話番号、代表者氏名
・契約担当者の氏名
・契約を締結した日付
・商品の名称、商標、製造者名
・商品の形式があるときは、その型番
・商品の数量(定期購入の場合は取引条件)
・契約内容不適合責任の特約があれば、その内容
・契約解除の特約があれば、その内容
・その他に特約があれば、その内容
ブログやSNSからLINEやZOOMに誘導して商談を行う行為は勧誘とみなされるため、上記の記載義務事項を網羅した契約書の交付が販売事業者の義務となります。
ブログやSNSからランディングページに遷移して、閲覧者がそのまま申込手続きをする場合には通信販売になり、LINEやZOOMでの勧誘があった場合には電話勧誘販売や訪問販売になります。
販売事業者としては通信販売で申込があった顧客と、LINEやZOOMを経由した顧客で取り扱いが異なることになります。
通信販売での申込者には取引情報の適正表示を行い、電話勧誘販売・訪問販売の申込者には契約書を郵送するという対応をしっかりと行うようにしましょう。
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本記事の筆者(行政書士・遠山桂)は、インターネット取引に関する契約書作成やコンサルティングのサービスをご提供しています。
SNSを起点とする電話勧誘販売契約書のひな形の販売、ウェブサイトの表示事項のコンサルティングについては、以下のテキストリンク先ページをご参照ください。
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