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ネットで定期購入(サブスク)の販売をするのに必要な規約と広告ルール。知らないと炎上一直線。
ネット通販ビジネスを安定的に継続するためには定期購入(サブスクリプション)契約は有効な販売手段です。商材のファンが定期的に自動購入してくれる仕組みは積極的に活用したいものです。
しかし、定期購入を巡るトラブルが多発しているのも事実であり、顧客から信頼されるビジネスにするには特定商取引法に沿った取引条件を適正に表示して、利用規約も整え、広告の内容にも気を配る必要があります。
そうした対策をしない販売事業者は、解約の電話やメールでパンクし、SNSは苦情の声であふれて炎上するリスクを抱えてしまいます。
そうしたトラブルの原因は、定期購入の仕組み(取引条件)がわかりやすく表示されていないことにあります。
定期購入トラブルに見舞われた消費者の苦情の声は以下のようなものです。
「1回だけの購入と思って注文したら定期購入だった。騙された。」
「途中で解約すると伝えたら、違約金を請求された。それは聞いていない。」
「解約の電話が全くつながらない。フォームで問い合わせても返信がない。」
このように「定期購入であること」と「解約条件」がわかりにくいことが不満になっており、更には販売事業者とスムーズにコンタクトがとれないことがストレスを高めています。
この部分をクリアにするだけでも苦情は大きく減ることでしょう。
そうしたネット通販関連のトラブルを防止するためのルールを定めているのが特定商取引法と景品表示法です。
特定商取引法はネット通販について、取引条件の表示義務、最終確認画面の表示義務(違反については契約の取消権あり)、誇大広告の禁止などについて定めています。
景品表示法はネット広告について、実際のものより著しく優良と誤認させる表示(優良誤認表示)、実際のものより著しく有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)、広告であることを隠すステルスマーケティングの表示などを不当表示として禁止しています。
特定商取引法の通信販売ルールでは、通販事業者には第11条(取引基本情報)と第12条の6(最終確認画面)の2つの表示義務が定められています。
通販事業者がこれに違反した場合には営業停止などの行政処分の対象となります。
<特定商取引法第11条>
(1)商品・サービス・権利販売の対価(販売価格と送料の表示)
(2)対価の支払い時期
(3)商品の引渡し時期 権利の移転時期 サービスの提供時期
(4)契約の撤回や解除についての事項
(5)その他の省令で定める事項(事業者所在情報など多数)
<特定商取引法第12条の6(政省令)>
(1)商品分量
(2)価格
(3)支払時期と方法
(4)引き渡し時期、提供時期
(5)解約条件
(6)申込期間
一般的には、第11条の表示事項は「特定商取引法に基づく表記」ページを設けて表示し、第12条の6の表示事項は「最終確認画面」に表示することがスタンダードになっています。
景品表示法では、優良誤認表示、有利誤認表示、指定告示(ステルスマーケティング等7種)について不当表示として禁止しています。
実際よりも著しく優良と誤認させる表示、実際よりも著しく有利と誤認させる表示と一言で括っても、その範囲は膨大で、消費者庁から出ている表示関係のガイドラインを確認するのはなかなかたいへんな作業になります。
特定商取引法や景品表示法のルールに違反した場合には、業務禁止や罰金などのペナルティがあり、消費者庁のホームページやSNSでも処分情報が公表されるため、違反した事業者は深刻なダメージを負います。
特に定期購入を行う場合には、トラブルが多い分野だけに表示や広告内容に不備があると注目されるので行政処分リスクも高くなる傾向はあります。
それでも広告内容は必要以上に委縮する必要はありません。
定期購入ビジネスを行う場合の特定商取引法対策としては以下の事項を満たせば問題はありません。
・定期購入の取引条件と解約条件を利用規約に記載(もしくは契約書交付)
・取引情報ページ(特定商取引法の表示ページ)に第11条の必要事項を記載
・最終確認画面に第12条の6の必要事項を記載
景品表示法対策としては、誇大広告にならないよう、抑制的な広告表現に努める意識を持つことが求められます。
取引条件を所定ページに適正に表示し、抑制的な広告表現を意識することで、閲覧者から信用を得て、長く続いていくビジネスを志向しましょう。
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そうは言っても適正な表示をどのように対応したらわからないという不安があるかもしれません 。
本記事の筆者(行政書士・遠山桂)は、インターネット取引に関する契約書作成やコンサルティングのサービスをご提供しています。
定期購入の取引情報表示に関するひな形の販売、ウェブサイトの表示事項のコンサルティングをしておりますので、以下のテキストリンク先ページをご参照ください。
定期購入契約の規約・プライバシーポリシー・特定商取引法表示の3つの雛形セットと解説書|遠山行政書士事務所
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