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フリーランス新法に不安。特に建設業、情報通信業、士業のビジネスは対応を。

2024年11月1日にフリーランス取引適正化法が施行され、フリーランスに対して外注を行う事業者には取引条件の書面交付等の義務が課せられます。
ところが対策が追いつかない事業者も多いようです。

所管官庁の事前調査では、建設業、情報通信業、士業等のビジネスで同法への対応に不安があるとの報告がされており、違反がないようにコンプライアンスを徹底しなくてはなりません。

フリーランス取引適正化法(フリーランス新法)は、多様化する働き方に対応するため、フリーランスの「取引の適正化」と「就業環境の整備」を行い、弱い立場にあるフリーランスを保護し、円滑な経済発展を目的としています。
 
この新法の規定に違反した事業者には、行政からの指導・勧告と最大50万円の罰金の対象となりますが、違反事実を公表されることのほうが重い意味を持つかもしれません。
違反の申告窓口も設けられるため、フリーランスに対する契約書交付を怠ったら、カジュアルに通報されたというケースも増えることでしょう。
 
違反認定されて公表となった場合は、官庁のウェブサイトはドメインパワーが強いため、事業者名(会社名)をウェブ検索されたときに、自社のウェブサイトよりも官庁の違反公表ページの方が上位表示されるリスクが大いにあります。
そんな事態になったら官庁の違反公表ページを隠すことは出来るはずもなく、ビジネスにマイナス影響が生じるのは確実です。
 
厄介なのは従業員がいないフリーランスであっても、同じフリーランス仲間に業務の外注を行う場合にも、フリーランス新法の書面交付義務は適用されます。
例えば個人のウェブデザイナーが同じく個人のプログラマに仕事を頼む場合にも適用されるということです。
士業同士で、例えば個人の司法書士が個人の土地家屋調査士に図面作成を依頼する場合も同様です。
 
そうしたリスクに備え対策を講じる必要がありますが、なかなか準備が追いつかない業種も多いようです。

公正取引委員会と厚生労働省は、「フリーランス取引の状況についての実態調査」を2024年10月18日に公表しました。
この実態調査はフリーランス取引について問題のある可能性がある業界を把握することを目的として行われ、発注側の委託事業者3,761件、フリーランス側1,539件の合計5,300件が回答したものになります。

「フリーランス新法の内容を知らない」という回答については、フリーランス側は建設業(90.9%)や学術研究、専門・技術サービス業(80.6%)が高い値を示しています。
※1位は医療、福祉の96.6%。

フリーランス新法では取引条件の明示(書面の交付)義務を定めていますが、「取引条件を明示しなかったことがある」についてのフリーランス側の回答では44.6%にも上り、建設業では72.7%、学術研究、専門・技術サービス業では47.5%となっています。

フリーランスからの声では、「事前に契約書を作成するのは稀で多くは口約束。メール等の文字で証拠を残すことを嫌がる傾向がある。」「大手でもそもそも契約書を発行する雰囲気もないです。改善してほしいです。」といった切実なものが挙げられています。

フリーランス新法では買いたたきが禁止行為とされていますが、教育・学習支援業の85.9%、学術研究、専門・技術サービス業の75.6%、情報通信業の66.3%のフリーランスが買いたたき行為を経験したと回答しています。

買いたたきについてのフリーランスの声は、「交渉と言っても殆ど忖度の形式上のもので、無茶な価格を言ってくる」「人の足元をみた値踏みや条件、夜間休日返上の納期を求められることが多くなった。」とのいったものが挙げられています。

こうした調査結果からも建設業、設計士などの士業、ウェブ制作などの情報通信業などで取引条件の書面交付や買いたたきなどの禁止行為の問題が多いことがうかがえます。

これらの業界では、フリーランスの専門家に業務を外注化することが多く行われており、契約トラブルも多発しています。
そうしたトラブルを予防するためにフリーランス新法が施行されることになったわけです。

フリーランス新法では、フリーランスとの取引では発注事業者に対して以下の義務事項が課せられます。

【義務項目】
(1)書面等による取引条件の明示(第3条)
(2)報酬支払い日の設定・期日内の支払い(第4条)
(3)7つの禁止行為(第5条)
(受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき・購入強制・不当な経済的利益の提供要請・不当な変更やり直し)
(4)募集内容の的確表示(第12条)
(5)育児介護等と業務の両立に対する配慮(第13条)
(6)ハラスメント対策に係る体制整備(第14条)
(7)中途解除等の事前予告・理由開示(第16条)

フリーランス新法は下請法のような業種・業界の限定はなく、全ての発注事業者とフリーランスの取引(物品の製造加工委託・情報成果物の作成委託・役務の提供契約)が対象となります。(ネット販売等のBtoCの取引は同法の対象外)。
 
かなり広範な事業者がフリーランス新法の適用対象となるだけに、この新たな義務事項を知らずに違反をしてしまい、公正取引員会・厚生労働省の窓口に通報される事態が増加することも懸念されるところです。
 
特に同法第3条の書面の交付義務については、交付したか否かが容易に証明されるため、違反した場合の通報も簡単であることに注意が必要です。
書面もただ単に交付すればよいというものでもなく、同法第3条の要件を満たした内容で交付をしないと書面の不備という扱いになってしまいます。
 
フリーランスに業務委託をすることがある事業者の方は、フリーランス新法の基本を把握して、取引条件の明示(書面の交付)義務などをしっかりと果たしていきましょう。
 
 
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本記事の筆者(行政書士・遠山桂)が作成したフリーランス取引適正化法対応の契約書と発注書面の雛形と解説文書を下記のテキストリンク先ページにて販売しております。
フリーランス新法についてのもう少し詳しい情報についても記載しています。
 
同法はフリーランスに外注を行う全ての事業者が対象となるため、契約書と発注書面の用意が必須といえます。
 
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外注を行う事業者の方は上記テキストリンク先ページをご参照ください。

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