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【Z世代とベッドルームポップ】 ~ ソーシャル・エクスプレス Vol.12
Z世代とベッドルームポップ
ベッドルームポップという言葉を聴いたことがある人は、もしかするとZ世代についての知見が多い方なのかもしれません。
その言葉通り、ベッドルームポップとはベッドルームでの作詞作曲、レコーディングから生まれた背景を思わすLo-fi(*1)感、ゆったりと心落ち着かせるノスタリジックなメロディライン、アンニュイで静まり返るような歌詞....
そして何より強調させたいのが、ジャンルを伴わないポストジャンル的なミュージックであることです。
『ベッドルームポップとZ世代、どう関わりが?』と疑問に思う方もいるかもしれないが、実はベッドルームポップと呼ばれる楽曲を作成するアーティストの多くがZ世代なのです。
例えば、I could be a pretty girl... が耳に付く『Pretty Girl』を作曲したClairo、アイコニックにも映るジェンダーレスな佇まいのGus Dapperton。
日本ではそうベッドルームポップとは言われないが、独創的なサイケポップミュージックが特徴的でビルボートトップ20入りも果たした『Hug』に代表される空音、そして、海外メディアからは究極のベッドルームポップと称されるメトロノリが挙げられます。
Z世代に見られる傾向の一つ ”チル” (*2) に迎合するかたちで、このようなベッドルームポップはZ世代を始めコロナ禍のスローダウンなライフスタイルに自然と肩を寄せています。
こうも時代を牽引するひとつの音楽ジャンルといえるベッドルームポップですが、ベッドルームポップミュージックを生むZ世代アーティストの多くは、ベッドルームポップと形容されることに違和感を持っているそうです。
実は、ベッドルームポップに対する ”Z世代” のこうした意見や、関わり方、傾向はメディアで取り沙汰されているZ世代の特徴と深い関係性があるのです。
以下では、そんなZ世代とベッドルームポップの関わりを①ポストジャンル性, ②DIYメンタリティ, ③アンビシャスタイプ の3点からみていきたいと思います。
(*1)Lo-fi
極端に高音質なものではない録音環境を志向する価値
(*2)Z世代に見られる傾向の一つ ”チル"
英語で「ゆったりする」を意味する "Chill" に由来し、日本のZ世代の間でもその意味通りに膾炙されている。
①ポストジャンル性
Z世代とベッドルーポップとの関わりを深く示しているポストジャンル性。
この要素を紐解く鍵として、著名なZ世代ミュージシャンであるビリー・アイリッシュの言葉(*1)を以下に載せましょう。
"私はジャンルっていう考えかたは嫌い。曲を何らかのカテゴリーにはめるべきじゃないと思う"
Z世代の女性は1日に5ジャンル以上の音楽を聴くというデータに現れているように、POPやテクノ、スカ、D&Bなどジャンルに囚われないジャンル横断的な嗜好を持っていることが伺えます。
また、ビリーのコメントやZ世代のLGBTQ+に対するかつてないほどの寛容度に鑑みれば、その傾向が確信的であるといえるでしょう。ベッドルームポップはオルタナティブ(= 既存のものにとって変わるような)ミュージックともいわれていますが、まさにこうした傾向から、既存のジャンルから脱する能力までもを備えていると考えられます。
(*1)ビリーアイリッシュの言葉
参考:https://i-d.vice.com/jp/article/g5bmzb/jw-anderson
②DIYメンタリティ
Z世代には、教育や仕事において既存の大学や企業に頼らず自身の力で道を切り拓く”DIYメンタリティ”を備えているといわれています。
変化の激しい時代、本当に価値あるものをスピーディに追い求めるには既存機関ではなく、気軽に受けられるオンライン講座や個人運営のサロンなどのwebコンテンツにZ世代のみならず意識が向いています。
米国在住Z世代の89%が『大学へ進学する以外の進路を考えている』とのレポートも発表されているほどで、そうした既存教育機関以外のコンテンツ需要はコロナ禍を経て更なる高まりを見せています。
ベッドルームポップとはその言葉通り、ベッドルームでのいわゆる宅録から生まれたものが多いと考えられています。『自分自身で道を切り拓こう』というDIYメンタリティからは、”ベッドルーム” という名や "チルい" メロディラインの裏腹、『どんな形であれ音楽を始めてやろう!』というZ世代の熱い気概を感じてなりません。
③アンビシャスタイプ
そして最後に挙げるのが、以下の記事にあるようなアンビシャスタイプ(the ambitious types)です。
ここではベッドルームポップを生み出すアーティストたちが「ベッドルームから楽曲作成を始めようとも将来的には高い目標を達成したいと大志を宿らせた若きアーティスト」と描写されています。
事実Z世代には、とりわけSDGsの領域で起業やコミュニティ運営に精力的なさまが見られ、Shiina代表の露木 氏 や 大久保 氏のHAYAMI、CRRA / 炭素回収技術研究機構 代表理事・機構長の村木 氏 が挙げられます。その他、ユーグレナ初代CFO(最高未来責任者)の小澤 氏 や ヴィーガン食品普及を目指すKaragae2.0の小松 氏、鹿廃棄問題に取り組むDeerveryの渡辺 氏など、様々な活躍が日々取り上げられています。
どうやら「Z世代とかいうイマドキの若者は積極性に欠ける」とか「人それぞれで処理する冷たい距離感」などと言われることもあるようですが、
それはきっと上述したようなZ世代のアンビシャスな側面を目にしたことのないためなのでは、と思わされます。
まとめ
以上、①ポストジャンル性, ②DIYメンタリティ, ③アンビシャスタイプ とベッドルームポップとの関わりを見ながらZ世代の特徴を見出してきました。
いつの世代であれ『若者は勢いがなければいけない!』という強迫観念に駆られ、チルに見るような ”落ち着いた様" や "ゆったりとした様" がネガティブに捉えられる節があったように思います。
しかし、コロナ禍も相まり全世界的にスローダウンなライフスタイルが豊かな人生を送るに当たってあって然るべきものだという考えに包まれ始めています。Z世代はポストジャン的なベッドルームポップをスローライフに取り込んでトレンドを楽しみつつも、DIYメンタリティやアンビシャスタイプを発揮し内なる熱い想いで理想に向かって走り続けている様がうかがえました。
最後に
単なるマーケティングセグメントとして見られているZ世代ですが、
実はその内面やトレンドを掘り下げると思わぬ発見や学びが詰まっている驚きの世代だと感じさせられました。
私自身も人のZ世代として、これからも彼らの活動の様やトレンド、ニューカルチャーを追い続けていきたいと思います。
Z世代を中心とした社会変化やデジタルサービスなどが、彼らのインサイトにどのような変化を引き起こしているのか、そんなお話をZ世代本人が考えてみるマガジン【ソーシャル・エクスプレス】。
その他の記事は、当マガジン↓よりご覧いただけます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。