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君たちはどう生きるか、ブラックモンブラン

僕の場合、世界で一番美味いアイスと云えばブラックモンブランであり、異論は認めない。佐賀県小城市に本社を置く竹下製菓の看板アイス、先代会長がアルプス山脈最高峰モンブランを眺めた際に、雪で真っ白な山にチョコぶっかけて食ってみたらめっちゃ美味いと思ふ、そんな感想を持ち誕生に至ったらしい。ブラックモンブランには当たりが入っており、食い終わったら木製のバーに、はずれ、あたり、と記載してある。高校時代の友人TK君(タケオキクチ、武田金八、哲哉小室では無い)はブラックモンブランの当たりを見分ける能力、透視能力の持ち主だった。コンビニの白い冷凍庫に詰められたブラックモンブランに目を凝らし、これ、と指差す。言われた通りに買うと、当たりなのだ。当時は当たりが出ると追加でもう一本貰えた、つまりTK君がいる場合は在庫がある以上エンドレスにブラックモンブランを頂けた訳で、僕らは夏の間中ずっと下痢気味だった。ただTK君の透視能力はブラックモンブランに限定されていて、可愛い女子生徒を透かして見て、むふふ、ばはは、鼻血ブーとはならなかった。理論的にはブラックモンブランは袋、アイス、木製バー、と構成されておりTK君は袋とアイス、二段階透かして見えるから、制服、下着とくれば可愛い女子生徒の裸を見れる筈なのだ。いや、でもその場合は顔が髑髏になるのか?三段階なら完全に内臓とか骨だろうから、レントゲン写真みたく全然面白くない。まあ、そもそも僕たちの周りには可愛い女子生徒なんて一人もいなかったし、僕には透視能力は無いから完全に想像だけど。実はTK君は当てずっぽうが二、三回続き、僕らが面白がって持ち上げ話を膨らましただけで、透視能力は丸っ切り嘘だったのかも知れない。あれから二十数年、スーパーでブラックモンブランを買ったら、当たりが出た。図書カード500円分。当たりバーを郵送しなければならないらしい。面倒臭いから、ゴミ袋に捨てた。

みうらじゅん氏は敢えて己に向いていない映画を観に行くらしい。自意識と対峙する修行だと。そんな積りで、僕はジブリ映画「君たちはどう生きるか」を鑑賞した。賛否両論の否が多い映画、平日の昼間にも関わらず若いカップル、ヲタク外国人なんかでそこそこ席は埋まっており、ああ、矢張りジブリってメジャー、と思いつつ、当該作はネット上で、訳わからん意味不明時間返せと酷評もちらほら、期待度を極限まで下げていたからか、いや全然普通のファンタジー冒険活劇映画じゃん、宮崎駿が自伝的に脳内イメージを表現したんじゃね、ストーリーは唐突だけどちゃんと台詞で説明きっちり入れてるし、そこまでわかりづらくは無いだろう、わかるように作ってるじゃん、デイヴィッド・リンチに比べりゃ全然優しい作り、継母に母さんと叫ぶシーンとかベタ中のベタじゃん、等と思った。ウィキペディアにストーリー全部載っていたし、まあ特に観ないでも良かった。損は多分、してない。修行だ。当たりでは無いけど、はずれでもない。

阿蘇に行った帰りにカラカラ甲高い金属音がするな、と思っていたら、チェーンケースのステーが折れていた。ケースが垂れ下がってチェーンと干渉していたようだ。チェーンケースを外した。僕は、厄年。



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