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19. 牛歩で進む
2015年初夏。
何度も繰り返すようだけれどぼくらには人工衛星開発のいろはが何にもない。でも、当時メンバーも増えてきたリーマンサットは試行錯誤しながらなんかいろいろやっていた。
■某大学のキューブサット見学会にいった
キューブサットと言えば、大学。キューブサットを何度も作ったことがある研究室で見学会があったので、技術班数名が行って、見て、話を聞いてきた、らしい。ぼくは行ってない。
■うそ発見器を作った
人工衛星と何の関係が? と思うかもしれないが、人工衛星は宇宙で動くコンピュータである。中身は地上で動く機器とほとんど変わりはない。
とりあえず、人工衛星というとかなり敷居が高く聞こえるが、中身はこんなんだよ、と技術班が企画して実施してくれた。
うそ発見器は、手のひらの発汗(水分量の増加)を感知して、光だか音だかに変換するだけの簡単な機構だったけれど、世の中のセンサーの大半はこんならしい、ということがちょっと理解できて楽しかった。
■町工場見学
メンバーに町工場をやっている人がいるので、見に行った。溶接とか旋盤とか。これも僕は行ってない。
■イベント班発足
リーマンサットがやるイベントを取り仕切る班が発足した。というのも、昨年から続き2015年もMAKER FAIRE TOKYOに出ようという話になり、そのために暫定的に作ったようなもの。前回は準備期間が2週間しかなかったが、今回は2ヶ月くらいあるので、いろいろ話したりする班ができた。
内部での企画とかは比較的やりやすいし、MAKER FAIREに向けてちょこちょこ広報的な活動が盛んになってきた。半面、人工衛星については基礎の基礎を学んでいる段階だから、見た目はほとんど進んでなかった。
リーマンサットの当面のお題目は「趣味で人工衛星を作る」なので、肝心の人工衛星が進まないのは本末転倒だ。かといって、人工衛星ばっかり進んでは宇宙オタクの集まりみたいになるので、そのバランスをどうとっていくか、は一つの課題。
それからもう一つ、大きな課題。
■F5
リーマンサットはファウンダーが5人いる。ファウンダーの五人、だと長いのでF5と呼ばれるようになる。
ぼくら5人はただ立ち上げしただけで宇宙開発に関するスキル的なものは皆無に近いので全然すごくないし、あえて特別感を出すことを避けていたし、そう思われないようにしてきた。リーマンサットのコンセプトは「誰にでもできる宇宙開発」なので、「特別な人だからできた」という認識を持たれるのは逆に困る。
でもなんかそれらしいカッコよさげな呼ばれ方がいつの間にか定着してしまって、「特別な人たち」に持っていこうとする何かが働いていたのを感じていた。
メンバーから「どうすればいいですか」と聞かれたりお伺いを立てられたり、「これこれが足りないからどうにかしてください」みたいに組織の上役みたいに扱われることがでてきた。
どうすればいいのかわからなければどうにかできるようにするしかない、足りないなら埋めるにはどうするのかを考えればいい。立ち上げメンバーの5人が、ではない。それをやりたいと思った人たちが、だ。
と、思っていたのだけれど、なかなかそうはならない。
一方で、団体としてこれをした方がいいからこれをやりたい、などと積極的に働きかけてくれる人たちがいたのは純粋に頼もしく思った。
始めたら始めたで課題ばっかりだった。
やることがありすぎて、どれから手をつけたらいいのかわからないし、頭数が5人から数十人に増えたとはいえ、まだまだ人手も潤沢ではない。お金は相変わらずゼロのまま。手を付けるにもすべてこなすには人的資源があまりにも足りない。ないないづくしの日々で、進んではいるのだけど、これでいいのか、もっとどうにかできないか、とずっと考える日々だった。
打ち上げまであと3年と3ヶ月くらい。
リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
https://www.rymansat.com/
PHOTO BY NASA
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