14. 静かなる前進
2015年2月末。
ぼくらは毎度毎度恒例だが頭を悩ませていた。
次月に予定しているミーティングで人工衛星のミッションが決まってしまう。
決まるんだからいいじゃん、次に進むじゃん、と普通は思うだろう。
だが、進んだ先には大きな、それはもう本当に困った大きな課題がある。
人工衛星をどうやって作ればよいのかまったくもって分からない。
うん、確かにぼくらは立ち上げ当初から「誰でも人工衛星を作ることができる」と言っていた。人工衛星もコンピュータシステムの一種なので秋葉原でパーツ買ってきて組み合わせればできる。これは間違っていない。
が、今すぐ実際にパパっと作ることができるかどうかは話が別である。
やったことがないことをできるようにするには、時間と知識と経験が必要だ。
KICK OFFの後、みんなで人工衛星開発入門の書籍を回し読みしつつ、「人工衛星を作るにはどうすればよいか、何が必要か」についての勉強はしていた。
が、
「バス部とミッション部ってどのくらい連動させればいいの?」
「そもそもバス部ってどうやって作ればいいの?」
「衛星の設計図ってどう描けばいいの??」
と、
時間:うーん、これからやっていけばいいのでこれはなんとかなる。
知識:ない
経験:もちろんない
まさにド素人感丸出しだった。
いうならば、立ち上げ当初のリーマンサットはバスケ部に入りたての桜木花○のようなものだ。才能(ぼくらの場合は情熱)はあるが、バスケをまともにやったこともなければ、ルールも知らない。
彼の場合、ゴ○や○暮や安○先生がいて、手とり足とりバスケの技術や戦術を少しずつ身につけていったわけで、ぼくらにも同じような工程が必要だ。
件の○道もまずは基礎の基礎から始まって、その反復を持って一番始めの試合である陵南戦に臨んでいる。ぼくらに置き換えると、入門書でしっかりと衛星開発の基礎を身につけることが第一歩だ。幸いにして、Kick Offでプロジェクトには色々な人が集まってくれていたので、みんなで勉強会やら(計画してた)、それから実際の人工衛星開発現場に見学会に行ったりしながら(思案してた)、少しずつ前に進んでいくつもりだった。(希望してた)。
初心者向けの入門書なんかでそんなちまちまやってないで、大学の先生とかに直接教えを請えばいいではないか、という意見もあるかもしれない。
しかしこの点に関しては「まずはぼくらだけでやる」と決めていた。
ぼくらがやりたいのは「ただ人工衛星を作る」ことではない。最終的に目指しているのは「誰でも作れる人工衛星の開発方法を掴むこと」だ。
誰にでも作れるものを目指すには、いきなり専門家の教えを頂くのではなく、素人なりに試行錯誤をして、何が問題になるのか、どうすれば作れるのかを誰にでもわかる形のノウハウとして、自分たちで積み上げていく必要がある。それは最短距離でぶわっと開発から完成まで走るのではなく、ぐるりと遠回りすることによって得られるものだと思う。
間違っていても、いや、むしろ間違いをたくさんして、どこに問題があるのか、どうすればその問題を解決できるのか、自分たちで考えて少しずつでも前進すること。それこそ「リーマンサット・プロジェクト」だと考えていた。
とか、うまく持っていくとそう言えるけれど、肝心の人工衛星開発は亀みたいな速度でしか進んでいなかった。
ちなみにぼくも人工衛星の作り方なる本を買ったが半分くらい読んで全然理解できないことがわかったので読むのをやめた。
だってぼく生物学専攻だし、機械とは全然わからんし。
そもそも宇宙開発興味ないし。
ということでぼくは他のことをやることにした。
リーマンサット・プロジェクトは確かに人工衛星を作ることが第一だけれど、宇宙と社会の距離を縮めることも大きな目的の一つだ。そのための第一歩として積極的に情報発信を行っていくことも当時の重要なタスクだった。
幸いKick Offの時にWEBについての協力を呼び掛けてみたところ、興味を持ってくれた方が数名いたので分科会をやって話し合ってみた(というかむしろ考えてくださいとお願いした)。
三人寄ればなんとやら、これまでの創始メンバーでは出てこなかったアイデアや見方がぽんぽんあり、
・リーマンサットのコンセプト
・自己紹介ページを作りたい
・リーマンサットの動画を作る(! そんなことができるのか!)
・アイドルプロデュースしてみる(!!??)
というアイデアがでてきた。
それからWEBに限定せず、このプロジェクト自体の進め方についても意見をもらった。
・人は恒常的に集めておいたほうがいい
(こういうプロジェクトは人が突然いなくなったりすることがあるから)
・レポートなどは団体の公式報告というより主観的な視点を活かす形で発信する。
・女性目線が必要
・タ○リ倶楽部に出る(を目標に、アングラ・サブカル感を出す)
・すでに人工衛星開発をやっているところに話を聞きにいく
etc.
これまで5人でああでもないこうでもないとやりあっていたわけだけれど、これまでと違う方向から意見をもらって、また知見が広がったのを感じた。
リーマンサット・プロジェクトはこじんまりとやるのではなく、広くいろいろな人を巻き込んでいくのだ。
このWEB班を筆頭に、これからプロジェクトを広げていけば、きっとおもしろいことになる、と思った。
リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
http://www.rymansat.com
PHOTO BY NASA