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コロナのせいで海外旅行に行けなくなった話

 今回の話は少し愚痴っぽい内容となっておりますが悪しからず。

 今から8か月前、2月中旬ごろ私は満を持して初めての海外旅行に行くつもりでした。“満を持して”と表現したのは、実は私は高校時代の修学旅行でも海外に行く予定だったのですが、世界情勢があまり芳しくなかったことから国内旅行に切り替えられた過去を持つからです。すでにこの時点でパスポートは取得済み、今年の渡航予定時までに2年程度持て余した状態でした。

 今回の事の発端は昨年の12月も後半に差し掛かっていたころ、友人と遊びに行く電車内でのことでした。

「韓国に旅行に行かない?」

 もともと大学在学中に海外旅行に行ってみたいと思っていましたし、バイトで貯めたお金のおかげで資金も用意できそうなタイミングだったので二つ返事で了承しました。

 旅行の予定日である2月中旬に備えて友人とコンスタントに計画を立て続け、近づいてくる予定日にわくわくしていました。一月下旬までは。

 LINEで計画を立てていた時、友人が「肺炎大丈夫かな」と一言こぼしてきました。

 (今この会話を見返すと、コロナ=肺炎として表現していたことを思い出しました。現在はほぼほぼコロナウイルスという通称で報じられているので新鮮さを感じますね。)

 その時の私は全然まだ事の重大さを理解しておらず「ちゃんとマスクしておけば大丈夫やろ」と思っていましたので、そっくりそのまま返答しました。

 しかし、一度そう言われてみると気になってしまうのが人間の性質です。私はSNSで同じような状況の人はいないのか検索してみました。すると、思っていた何倍よりもたくさんの人が海外旅行に対しての不安を抱えている様子が見受けられました。

 「空港や交通手段での感染対策は万全なのか」「渡航先の感染状況はどうなのか」「ウイルスを他国に持ち込んだり、自国に持ち帰って来てしまったらどうしよう」

 当時は現在に比べると流行初期なこともあり情報が錯綜し、不安や混乱が蔓延していた時期でした。私は自分が思っていたよりも深刻な状態なのかもしれないとその時気づかされました。

 心配になった私は周りの人に相談しました。両親は状況を鑑みて、渡航に対して難色を示すようになってきました。また、友人やバイト先でも同じような状況の人が増えてきて、大丈夫という意見もあれば、やっぱり控えるべきだと言う意見もあり、行くべきなのかどうか悩む日が続きました。

 ついに2月に入りました。状況がよくなる気配はないまま決断が迫られていました。私たちはすでにその時ホテルや飛行機の予約も、入金も完了していました。さらによほどのことがない限り行くつもりだったので、キャンセルができない代わりに少し安めのホテルを予約していました。つまり、私たちがここまで旅行のためにかけたお金はこの時点でほぼほぼ返ってこないことがわかっていました。自分も友人もこの旅行のためにバイトなどで頑張って稼いだお金が水の泡になることが悔しかったですし、なによりも私は誘ってくれた彼女が韓国のことが好きなのをよく知っていました。この時悩んだのはお金のことももちろんですが、友人との関係についても悩まされました。

 「せっかく誘ってもらってここまで計画を立てたのに、断るのか?」「ずっと行きたがっていた彼女と行きたい」「このせいで友人関係が悪くなったらどうしよう」

 とてもとても悩みましたが、時間は待ってくれません。ついに渡航10日前になりました。私たちは数日間の話し合いの末に、ついに「行かない」という結論を出しました。

 今まで立てた計画も、お金も、時間も、全てが無に帰しました。すごく虚しかったことを覚えています。

 半年以上経った現在、世間ではGotoキャンペーンが政府によって敢行されています。あの時行かないと決めた私たちの判断とは裏腹に、旅行が推奨されるような風潮さえあります。それでも私は、あの時点で行かない選択をしたことは間違っていなかったと思いたいです。勿論行きたかった気持ちとしての後悔は今でもありますが、不確定要素が多い中行くことは私にとっては負いきれない責任がついてくるものだと思っていましたし、今もそう思います。感染する確率はとても高いわけではないかもしれないけれど、もし私が感染してそれを他の人に移してしまったら「仕方ない」では済まないと思います。その一方で、やはり自分の娯楽のための行動が全て制限されてしまうのは悲しいし、やりきれない気持ちも痛いほどわかります。

 行動と感情の両方に上手く折り合いのつけられる方法が、旅行だけではなくあらゆることにおいて成立する日が来てほしいなと一個人として思っています。

2020/10/25  著者:H.M