愛のために(過去作)
2020年4月あたりの文です
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ふんわりと、何かに守られてるような感覚があった。
あたしが悪い方に行かないように、目に見えない力で自然と正しい方向へ導いてくれて、なんとなくそれに甘えていた。
何も知らないままに王子様と出会って夢の国で恋するように。
じわじわと。
あたしにとって何よりも耐え難い不幸はガツンと一撃で死に追いやるような衝撃的なものでは無くて、じわじわと、だけど着実に狂っていくようなものだ。
世界には愛があふれていると思っていた。
1+1の答えは2だけだと思っていた。
優しさは永久に変わらないと思っていた。
それらすべてひっくり返されて、あの包まれているような優しさが状態異常のヒステリーだと分かったとき、心が壊れてしまった。
小さな針で小さな穴を開けられた。それはいつの日にか大きな穴になっていた。
愛なき世界に生きて、愛なき世界に死ぬ。
いつまでも眠れないお姫様は疑問をぶつける。
どうして?
寝ているあたしに思いきり冷たい水をかけるような世界が許せなかった。
どうして!
優しさなんて無かったのに、得体のしれない何かに甘えて生きてる自分が恥ずかしかった。
どうして。
世界に愛がないことを、あたしを愛さない世界を、受け入れる事はできずに風が吹く。
汚い世界だと思うわ。
こんな深夜の悲しみの隅で、もつれる床と絶望に沈んだ。意味をくれるなら、魂だって悪魔に売るし、逆さ十字の誤解も解かずに殴り殺して心中するし、ああ、不幸不幸。
毒の胞子が漂う悪の部屋。
きっと今夜は眠れない、眠れないの。
転
孤独ではないと彼を愛せないし、彼もまた、孤独な私の吐く声を愛しているの。つめたい夜、窓からメデューサの息吹がする。
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