舞台の力。
初めて舞台を観劇した日。初めて生で見る演技。
とても鮮明に覚えている。
今までスクリーンや画面越しでしか
見たことのない世界が、物語が、
目の前で色付き、進んでいく。
「舞台は生きている」
という言葉の意味を初めて理解した日だった。
劇場をたっぷりと使った演出の数々。
こだわりを感じる舞台セットや衣装、小道具。
そして目線の先には、
物語の中で生きているキャストの姿。
時に笑い、
時に怒り、
時に泣き、
時に問いかけてくる。
「この人たちは舞台の上だけで演技してるんじゃないんだ。」
「客席も巻き込んで演技している。」
観劇していると、その「空間」に溶け込んでしまったかのような感覚になる時が多々ある。
その理由が少し分かった気がして鳥肌が止まらなかった。
私が思う舞台の魅力のひとつは
「同じ空間で演じている」
ことだと思う。
ドラマや映画、雑誌など様々な媒体がある今、
生 であることに意味があると思うのだ。
生だからこそのアプローチの仕方だったり、
生だからこその熱量がある。
キャストの声も、動きも、表情も、
ダイレクトに客席に届く。
同じ作品でも公演ごとに違う空気感、
笑いのポイント、キャストのアドリブ、張り詰めた緊張感があるので、観劇する日ごとに同じシーンでも違う受け取り方ができる。
「同じ公演は二度とない」
といわれる所以だと思うが、これこそ舞台の魅力の一つだと思っている。
また、私が思うもうひとつの魅力は
「カーテンコール」
だと思う。
本当に超個人的な意見になってしまうのだが、
カーテンコールでの座長の挨拶がたまらなく好きだ。
そしてその挨拶から伝わってくる
カンパニーのあたたかさに、
優しさに、力強さに、
私自身元気と勇気、そして生きる活力を
たくさん貰うのだ。
(もちろん舞台でも沢山貰っている。)
最後に座組みんなで手をつないで、
「本日は誠にありがとうございました」
とやりきった顔の満面の笑みと、
公演中のどのセリフよりも大きな声で
深々と礼をするその姿を見ると、
「本当に素敵な舞台だったな」
「また見に来たいな」
と再三思うのである。
また、舞台の上で輝く人間がいるということは、
舞台の裏から支え、輝かせてくれている人間もいるということだ。
キャストだけでは決して創り上げることのできないこの素晴らしい空間。
色んな方のパフォーマンス、技術、発想力の結晶がひとつの舞台にこれでもかと言わんばかりに詰まっている。
それはまるで宝箱のように多様な輝きに溢れ、
手に取る人間を驚かせてくれる。
例えば同じタイトルの再演でも
初演と違うアイメイクのちょっとした変化だったり、ウィッグのセット等、
その違いはハッキリと受け取る側にも伝わってくる。
それらを見ると、裏方で活躍している方の飽くなき向上心にとても感心してしまう。
そして、この自粛期間中に色んな役者さん達のインタビューの中で、
「客席に人がいてこその舞台」
というニュアンスの言葉をたくさん見た。
客席の自分は「演技」を求め、
舞台上のあの人は「反応」を求めている。
演者からすれば当たり前のことなのかもしれないが、客側からすればこんなに嬉しいことはないな、と記事を読みながら思わず涙してしまった。
観劇している人の心をズドンと、雷に打たれたかのように動かす言葉では言い表せない「何か」。
その「何か」を求め、私はこれからも舞台に足を運ぶのだろう。
これが私の思う「舞台の力」なのだと思う。