言薬(ことぐすり)
今日は、職場で働く看護師さんから、言薬のギフトがあったためシェアしたいと思います。
ある看護師さんより、『今まで出逢ってきた看護師さんの中で一番素敵な看護師さんだよね』と、とても嬉しい言葉かけのプレゼントがありました。
こんな風に褒められることって滅多にないため、褒めて下さったことでこれまでの自分が大切にしてきた看護観や対応の仕方など肯定してくださったように感じ、とても救われる思いがしました。
たった一言の“言葉”で、かけられた方の心の在りようが変わる、癒される、元気になる、前向きにもなる。また人生は言葉で作られていると言われているように、自分の発する言葉の大切さや、未来への人生、相手の心の変化も変えてしまうくらいの大きな力がある。
こちら、言薬は以前働いていた病院の緩和ケア医の大坂先生が紹介されている。『ことばは薬になる』という意味で、医療従事者の言葉かけひとつで関わる患者さんたちへ勇気付けたり、癒したり、はたまた傷つけてしまうことだってある。医療関係者に留まらずすべての人間関係においても“言葉”は大切であると伝えている。
そんな私も、以前大坂先生にかけていただいた言葉で、その後の自分の看護師として働く基礎が決まったのである。
当時、働いていた病院では、まだ子どもと小さかったため外来で働いていた。
がんの患者さんたちの専門病院で、初診から、通院での抗がん剤治療、放射線治療、手術、緩和ケアなどさまざまな患者さんたちと外来で出逢った。
その当時、がんという病気は、がん=死という考えがすぐに浮かびあがってくる状況だったため、こころの支えやケアがとても重要で大切だった。
今は、治療を続けながらも、がんと共存している患者さんたちもおられる。
以前、自分は看護師になる前に大好きな祖母が苦しみながら亡くなっていく看取りを行った経験から、身近でそのような死を体験し、看護師になった後も、人の死に触れることがとても怖かった。
ところが、大坂先生の講義を院内で受けたときに、先生がお話されたことで
『その人の大切な終末期に関わりを持てること、最期にあなたに逢えてよかったと言ってくださることの重要性』をお話してくださった。
祖母の看取りから、死=肉体から魂が抜け出るという死生観も獲得したが、果たしてそれが、まさに目の前に死を目の前にされている患者さんへ、伝えることがいいことなのか、余計に恐怖を与えてしまうのではないかと、考え、患者さんから『死んだらどうなるのかな』という質問に誠実に答えることができなかったことがあった。外来から緩和ケア病棟へ異動となったときに、そのことを大坂先生へ相談したことがあった。
今の死にゆく患者さんへ、死とは肉体から魂が抜け出るという話をすることはとても非常識なことではないかと。
ところが、先生は『それはとても貴重は話です、是非、患者さんたちへお話してください、いろんな信仰をもっておられる方もいるだろうから、押し付けではなく、こういう考え?経験?もあるとお話してみてください、信じるか、同意するかは、聴いた患者さんが判断することなので、非常識でもないですよ』と優しく穏やかな表情でお話してくださいました。
それから私の看護師人生は人生の最終段階である、お看取りを関わることになり、今があります。
誰かの言葉で救われる、人生のかじ取りが決まる、癒される、前向きになることがあります。これが“言薬”なのかもしれません。