はなまるの精神科専門医 合格体験記

 どうも、はなまるです。Twitter(@ksksk16g)でぼんやりと呟いたら数人からリアクションをいただいたため書いてみようと思います。何か質問等あればtwitterで連絡していただければと思います。

 2019年度の第11回精神科専門医試験を受験したので、レポートしたいと思います。ちなみに、ワイは地方医大卒、身バレを防ぐため、年次は省略させていただきますが、まだまだ若手です(キリッ)。同じ大学に入局して今回一緒に受験した同期は2人でした。精神保健指定医(以下、指定医)は日常診療において必要なことが多い資格ですが、専門医はなくても仕事にはなる・・・(小声)。ちなみに受験の前年に指定医を受験していました。気になる箇所まで読み飛ばしていただければと思います。

 精神科専門医試験は長丁場です。日本神経精神学会が認定した専門医制度研修施設で研修手帳に従い、精神科専門医制度指導医(以下、指導医)のもとで3年間研修することで、受験資格が得られます。現在は新専門医制度に移行しておりますが、ワイは旧制度であったため、今後は多少のズレは今後出て来るかもしれません。

 2019年度は3月〜4月20日が申請期間、筆記試験受験票が6月末発送、7月14日が筆記試験、面接試験受験票が8月上旬発送、8月31日or 9月1日が面接試験、最終結果通知が10月末となっていました。とにかく受験期間が長い。

 201X年4月初期臨床研修を終えて出身大学の精神科医局に入局したワイが上級医より最初に言われたことは、「日本精神神経学会に入会し、研修手帳をゲットすること」でした。言われるがままに登録を行い待つこと数週間、青色の手帳が届きました。これが研修手帳です。この登録が遅れると研修期間としてカウントされなくなると聞いていました。そして少なくとも3年間の研修を行い、症例を集めて行くこととなります。まず症例数が45例以上、そのうち症例報告数が10例以上必要です。おそらく、ほとんどの先生方は最低限の10例でまとめているものと思われます。この症例報告の条件が面倒くさい。経験すべき治療場面4つ(救急、行動制限、地域医療、合併症・コンサルテーション)をそれぞれ5例以上うち症例報告が1例以上必要となります。また、経験すべき治療形態として、入院治療25例うち症例報告3例以上、入院治療のうち非自発的入院治療(つまり、措置入院や医療保護入院など)が15例以上、そして外来治療が20例以上うち症例報告が2例以上必要となります。

 上記の症例数が必要になりますが、さらに診断ごとに症例報告数が決まっています。統合失調症圏が2例以上、気分障害が1例以上、神経症圏が2例以上、児童思春期症例が1例以上、依存症や中毒症例が1例以上、症状性・器質性症例(認知症含む)が2例以上、パーソナリティ症例が1例以上となっています。つまり、この診断症例かつ上記の治療場面や治療形態を満たすものを症例報告として提出しなければなりません。もはやパズル。この作業が地道で細かくて苦労します。もう二度としたくない。

 わかりにくいですが、3年間臨床経験を積むと集まる程度の症例数であると思います。それらを手帳に書き込んで行くこととなります。どこで研修した際に経験したか、診断は何か、入退院日はいつか、など細かく書かなければなりません。なので、必ずしておいた方がいいことは、自分で作成した退院サマリーを全てファイリングし自分のものにしておくこと。個人情報の問題はありますが、ドクターは転勤族であり、異動した後は症例の情報を得ることが困難になるケースがあります。自分だけでもわかるように情報を集めておくことが大切になります。そして、指導医の先生にサインを毎年いただいて手帳が完成することとなります。

 症例報告は、指定医の緊張感に比べると幾分か楽な印象でした。とはいえ大変なんですけども。指定医を先に提出される先生は指定医の際に厳選していると思いますので、使いまわせる症例もあると思います。ただ症例数が足りない。ワイの指定医の症例報告数は8つでしたし(最近は5つに変更になりました)、専門医では神経症圏症例やパーソナリティ症例、さらには外来症例が必要になります。ワイは1つ上の先輩、2つ上の他大学の先輩に症例報告の添削をお願いして、最終チェックを元勤務先の指導医(尊敬しているスーパードクター)にお願いしました。指定医の時よりも法律関係が省略されるかわりに、使用した薬剤名や選択理由、投与量などを追記、治療による反応や非薬物療法的な関わりなどをやや詳細に記載しました。また、指定医の時と同様にICD−10などを参考に医学用語を用いて記載しました。10症例書き終えて添削まで終了した頃が提出期限であったため、指導医のサインをいただき、2019年4月に手帳と合わせて症例報告を提出しました。ちなみにワイと同期たち、2019年3月に指定医の合格通知が届きまして、そちらに気を取られ3〜4月はやる気がなくなっていました。

 そのやる気のなさはしばらく続きました。「まあ、最悪専門医とれなくても、指定医あればなんとかなるし」なんて思っているとやる気なんて全然なくなり、さらに異動も重なり忙しくなったことでほとんど勉強しない日が続きました。とりあえず筆記試験の問題集でも買うか〜と思い、アマゾンで購入したのがこれ。「専門医認定試験 問題と解説 第1集(第1回〜第3回)」です。学会が出版している問題と解説です。って、第1集?第2集は?第3集は?ワイの受験は第11回だったのに古い問題集しかないの・・・。どうやら第1集しか発売されていないようです。ちなみに第4回以降の問題は学会ホームページからダウンロードできます。が、解答がないのです(涙)。心優しい先生がネット上にupしてくれている解答などを参考にさせてもらいました。そして、購入した第1集を時折蛍光ペンひきながら勉強し一通り問題集が終わったのが6月上旬。その頃同期2人から連絡がきました。「第10回の◯番の問題なんだけどさ、、、」恐る恐る聞いてみると、2人とも6月上旬時点で第10回まで解いている・・・!!ワイ、さすがに焦りました。どうやらやる気なかったのはワイだけだった模様。国家試験からの鉄則「みんなと足並みを揃えて同じことをする」の法則の通りにしなきゃ。しかし、第4回以降は解答がないのです。(2回目)確かに1〜3回に出てきているプール問題もある。しかし新作問題もある。ネットにある解答を信じてやるしかない。といった状況でした。「他の受験生もどうせネットの解答信じて解いてるやろ」とワイの中の悪魔が囁いてきたのでそのまま信じてお勉強。ラストの1ヶ月は結構勉強しました。とりあえず同期と足並みを揃えるため。ひたすら過去問を解いていくのみ。教科書として「カプラン 臨床精神医学テキスト」を持っていました(ほとんど使ってません)。とにかく時間がなかったため頭の中にプール問題を増やす作業。試験前日は一日中家にこもり、よめまる、ちびまるに見守られながら一気に老け込んだアラサーが勉強していました。

 試験当日。ワイは車で会場に向かっていましたが事故渋滞に巻き込まれ、史上最大に焦り。なんとか電車に乗り換えて会場を目指しました。試験開始数分前に到着。机の上には受験票と筆記用具以外のものは出さないように指示され試験開始。案の定、プール問題もそれなりに出ました。分野は満遍なく出題されている感じ。また、承認されたばかりのナルメフェンのような時事問題?新作問題?も出ました。ワイはたまたま前々日に製薬会社による薬剤説明会を受けていたため即答できましたが、もはや考えてもわからないような問題。同様に考えてもわからない問題が続出しました。とにかくプール問題を落とさないように、ただそれだけ。ちらりと横目でみた周りの受験生の先生方もかなり考え込まれているような印象でした。ちなみに試験時間は3時間。長い。試験問題は110問。多い。5つの選択肢から選ぶマーク式。後半の数問は連問形式の臨床問題。脳波など画像を見る問題も出ます。ワイの会場ではトイレで抜ける方も結構多かった気がします。2時間過ぎくらい経過したあたりから、少しずつ終わった人から退出者が出てきていました。ワイも考えてもこれ以上わからないと思い、2時間半ほどで退室しました。まあ、難しかったです。手応えはなし。

 面接試験は東京のため飛行機予約をしようと思っていましたが、受験日がわからず、なかなか予約できませんでした。症例報告を添削してくださった先輩方と飲みに行き情報収集。共通症例について診断や治療方針について聞かれることやロールプレイを行うこと自分の症例報告から2例選ばれて質問されること、などを聞きました。面接試験は2日間の午前午後、4ブロックに分かれており、それぞれ共通症例が異なるようでした。筆記試験の合格通知が来て、すぐに飛行機やホテルを予約。どうやら同じ大学の受験生は日程を変えられている?ような感じでした。ワイは初日8月31日の午前、同期2人は2日目午前、2日目午後と分かれていました。会場は東京のTKP市ヶ谷カンファレンスセンター。ワイは前日入りし品川プリンスホテルから向かいました。数日前に症例報告を何度か見返し、さらに前日にホテルで自分の症例報告を見返したくらい。その他対策なし。

 市ヶ谷駅から歩いて数分、割と細めのビルにスーツ姿の人がたくさん吸い込まれていました。また、他のイベント?もあっていたようで、1階に案内の方が多数いました。「専門医の受験の方はこちら〜」とエレベーターで控え室のある階に連れて行かれました。受験票を提出し控え室へ。控え室では座席がきまっており、面接時間も決められていました。ワイは1日目午前の組でしたが、その中では最後の組(確か5組目)でした。最初の1組目の受験生だけ控え室ではなく、別室に案内されていました(おそらく症例を読む査読室?)。面接室は東地区、西地区に分かれてそれぞれA〜O会場まであるようでした。スーツケースを押しながら座席へ。顔見知りの受験生は話している方もいましたが、ワイは知り合いがおらず(涙)。アラサーくらいの人から年配の先生まで様々でした。ほぼ全員がスーツでした。ワイの控え室には一人だけ私服の受験生いました、あの人は受かったんだろうか(笑)。控え室は飲食可でした。トイレや喫煙室への出入りは受験票さえ持っていれば出入り可でした。挨拶があり、携帯電話やPCなどの電子機器が回収され紙袋に入れられました。その後もトイレなどで出入りは可能でした。案内される順番に査読室に案内されていき、午前ラストの組だったワイは待ち疲れました。いわゆる軟禁状態。

 東西計30人ずつ案内され、面接開始1時間前に査読室に移動しました。一つのフロアは狭いため、移動はエレベーターで階をまたいで移動となります。査読室では20分間査読する時間があり、その後それぞれの面接室へエレベーターを使い移動します。面接室前で受験票や持ち物の確認などされます。自分の症例報告は持ち込み可能でした。適宜空き時間にトイレに行けました。噂によると東地区の受験生には西地区の面接官を、西地区の受験生には東地区の面接官をあてているようです。

 面接室に入り受験票を渡して名前を確認し着席、3人の面接官は挨拶なしですぐに共通症例に入りました。3人とも顔を知っている先生ではなかったです。ワイの共通症例は58歳男性、急性腹症で緊急手術を施行しICU入室、ステロイドも使用し治療、その後一般病棟に移ったのちに躁状態を呈していそうな症例でした(間違っていたらごめんなさい)。まずは文章から症状をあげてくださいと言われ、その後鑑別診断や検査方法を聞かれました。先生の診断だとすると薬物療法はどうしますか?精神科へ転棟させるなら入院形態はどうなりますか?など質問されました。その後、1人の面接官が患者の妻役、1人の面接官が内科主治医役となりロールプレイとなりました。患者の妻役からは、どんな状態ですか?今後どうなりますか?元に戻りますか?など日常臨床でありがちな質問がありました。おそらく、一般の方にわかりやすく説明できるかどうかと審査されていたのではないかと思いました。内科主治医役からは精神科の病気だと思うけど転科転棟できますか?など聞かれました。とりあえず器質性疾患から鑑別していきましょうみたいな答えで着地しました。もう1人の面接官はその間何も話さず、共通症例は終わり。おそらく15分くらいだったでしょうか。その後、自分の共通症例について質問されました。何も話さなかった面接官が中心となって質問されました。ワイは気分障害の症例と、小児思春期症例について聞かれました。気分障害症例は、簡単に要約させられた後、鑑別診断や薬剤選択の根拠など聞かれました。小児思春期症例は、要約した後に同じく鑑別診断、知能検査について、本人や家族にどう説明したか、など聞かれました。予想よりも細かく聞かれた印象でした。ワイは控え室での待ち時間が長かったのでその間に読むことができました、最後に、「丁寧に診察されていますね」って言われたので、受かったかなと安心しました。こんなこと言われて不合格だったら呪ってやると思いました。日常診療について質問をしてくるような感じでした。合計で30分くらいです。緊張していたせいかあっという間に感じました。退室した後に、向かいの面接室から出てきた受験生の先生と少し話しましたが、同じような質問されていたようでした。携帯電話を返却され帰宅となりました。

 また、他の同期の共通症例は以下の通りです。同期から聞いたものの抜粋になります。60代男性、アルコール使用に伴う離脱せん妄や認知機能低下。ロールプレイは入院を嫌がる患者に病態説明をしてください、みたいな感じ。もう一人は、ADHDの方の職場不適応で上司同伴で受診のケースだったようです。質問内容までは不明ですが、産業医学的な内容もあったようでした。また、症例報告は、一人はワイと同じく気分障害と小児思春期症例、もう一人は統合失調症と小児思春期症例。3人とも小児思春期症例を聞かれており、選ばれやすいんでしょうか?

 以上です。Twitterで合格通知が来たと言われている先生を見て焦りましたが、その翌日に無事合格通知は来ました。最初は受からなくてもいいやと思っていましたが、自分が勉強した証になるため、受けてよかったな、受かってよかったなと思っています。また、この勉強をしないと知らなかったことにたくさん出会いました。ただ、二度と受けたくない。ワイが受験する際に面接について(ネットを含め)詳しく情報を得ることができなかったため、詳細に記載してみました。もっとも大切なことは、普段の日常診療に対してしっかりと取り組むことだと思いました。今後受験される先生がこの記事を参考に1人でも多く合格されることを願っています。長文、駄文で失礼いたしました。気が向いたらフォローもお願いします。またtwitterであいましょう!

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