インドリトリートへの道(連載)#6
不便さを楽しむ心
インドの旅は、いわゆるバックパッカー、なるべく安く済ませ様々な体験をするというスタイルだった。豊かな先進国から休日を利用して気ままに歩き回る旅行者とも言えるかもしれないが、できる限り地元の人の生活に触れたいと願っていた。
(写真は聖者ラマナ・マハルシの寺院~ラマナシュラマムに奉仕する菊地さんの自宅にて)
インドは貧富の差が著しいことでは昔も今も変わらないだろう。しかしあらゆる階層の人たちが、それぞれの制約の中で最大限に工夫しながら生きている。それがインドの人たちのしぶとさ、柔軟性であり、生命力だと感じる。現在のインドはIT大国に成長し、人口は世界一でその進展は著しい。そのベースには、じつは「今あるものを工夫しまくって使う」ジュガールという智慧があるのだ。それをあちこちで見て確信した。
ジュガールとはちょっと違うが、これは電気がなくても、少々故障してもすぐに直せるアイロンだ。こういう単純だが柔軟な道具がじつに多い。仕立て屋が路上に机を並べて、これでアイロンがけをしているのだ。傍らには炭火がつねに用意されている。ミシンがけも昔懐かしい足踏みなので電気はいらない。
それらの道具類は、壊れてもその場でなんとか直して使っている。釘をねじの代わりに使ったり、金属の部品を木を削って代用したり、無関係に見える部品をはめ込んだり…。車の軸を木の棒で代用する現場を見たことがある。写真はネットに紹介されていたのもだが、その一端がわかるだろう。ちょっと壊れると捨ててしまう現代日本となんという違いだろうか!
インドツアーのNote記事の第1回に、大停電にもびくともしないコルカタのことを書いたが、皆さん突発的な災厄にもじつに強い。
最近ぼくは土砂災害に会って、まだ山中で車の通せない孤立状態にあるが、電気も水道もガスも来ていて、まったく不自由感はない。瓦礫の堆積に道を刻んだりして、歩く生活を楽しんでさえいる。かつてのインドでのジュガール体験が大いに役立っているように思う。
たとえば、牛糞をせんべい状にして乾かした燃料+小枝を拾って火を焚き、取っ手の取れたフライパンを布で持って、路上で買って来た野菜やスパイスと、目の前でさばいた鶏肉を炒め、井戸で組んできた水でカレーを作る。それは工夫の毎日で、具体的な生活の思考力が鍛えられる日々だった。インドの人たちが「そんなときどうしているのか」観察することが大いに役立った。
柔軟で飛躍的な発想、タブーを乗り越える勇気、協力し合う心、そして多分ユーモア。これらは人間の能力を最大化する条件ではないだろうか? そして「気にしない」こと、恥ずかしさより好奇心が勝っている。日本人が見習うべきたくさんの要素が生活の中にちりばめられている。
ぼくが旅で体験し、今回のリトリートでもぜひ紹介したいのが、こうしたインドの人々の逞しいジュガールの知恵なのだ。
【9/22(日)人生の今から踏み出すリトリート】
*インドとの出会い、マインドフルネス瞑想、40年越しのインドの旅と未来、思いのたけを語ります。(無料券お申込みはこちら)