見出し画像

【娯楽メモ vol.7】バカリズム「プロローグ」(バカリズムライブ『fiction』より)




あらすじ


毎年恒例の、ライブタイトルにちなんだオープニングコント。今回は『fiction』ということで、バカリズムがフィクションの世界に迷い込み、フィクションならではのルールというものに疑問を呈していく。


感想(※ネタバレあり)


毎年行われるバカリズムライブの代名詞ともいえるのが、このオープニングコント。

「こんにちは、バカリズムです。さぁ始まりました、バカリズムライブ〜」と始まるプロローグを見ると、(ああ、バカリズムの世界が始まるな…)とワクワクさせられます。

バカリズムライブは、一本目からクオリティがすごいんですよね。テーマはそのライブタイトルというだけなのでざっくりしていますが、内容が濃い。

一本目見終わった段階で、(まだ一本目なの…?)と思わせるほどの没入感です。

ーーーーーーーーーー

まるで現代創作落語

日常の物事について語りかけるような入りから、一人二役の架空ストーリーが始まる。

これはもう落語ですよね。

バカリズムさんって、落語は詳しいんでしょうか。あまり聞いたことがありません。感覚でこれができているとしたら、天才としか言いようがありません。

落語との明確な違いといえば、立っていることでしょうか。

落語は座ってしゃべるので、二役演じるのに上半身の向きを変えるだけでよく、素早い人物転換が可能です。

一方、バカリズムさんは立ってしゃべっています。そのため、人物の転換には立ち位置を変えて体全体を動かす必要があるため、少し時間がかかる。

でも、それがまったく違和感に感じません。間が長いと感じさせません。それはなぜでしょう?

おそらく、話のテンポ自体がゆっくりだからです。落語は早口でまくし立てることも多いですが、バカリズムさんの会話は比較的ゆったりとしています。

余裕をもったしゃべり方、そしてたまに素早くツッコむ。この緩急を自在に操ることで、違和感のない一人二役が成り立っているのではないかと。

また、立ってしゃべることで、落語にはできない足を使った動作や舞台を広く使うことが可能に。落語が古典芸能と呼ばれる現代、その進化系として広い世代に受け入れられる手法だと思います。

バカリズムさんのような一人二役を継承するピン芸人、あまり見かけませんね。今後もっと増えてほしいなと思います。

ーーーーーーーーーー

フィクションあるある詰め合わせ

  • 番匠井北斗というキラキラネーム

  • 兒玉県佐々見市出身

  • 身長187cm

  • 黒いレザーのロングコート

  • 荒廃した街

  • 重要なことは遠くを見て話し、最後に振り返る

  • 巨悪を倒しに

  • だだ漏れる心の声

  • 法定速度はないが、シートベルトは着用必須

  • ゴミは窓から投げ捨てる (←このモーション好き)

  • 廃倉庫が舞台

  • ラスボスはずっとあなたの身近に

  • 物語を盛り上げるためだけに、婚約者が不治の病に

  • 急に悪者が悲しい過去語りだして同情を買おうとするやつ

  • 銃を向け合ったらお互い撃たないのがルール

  • スローモーションもお互いに

  • いいところで終わって次週へ引っ張る

  • 最重要任務「告知」

  • 冷めること言わないで!(テイ、反社みたいなもんですか、グアムみたい、他のフィクションで見たことを得意げに話す、このBGM持ってる)

…純粋に、一ネタの中でこれだけのあるあるを並べて全部笑いに変えているのエグくないですか。

それもこれも、日常をよく観察し、普通の人が見過ごすところに目をつけて斜めから切り取り、それを大喜利として昇華するという、バカリズムさんだからこそなし得る技です。

しかも、後半に行くにつれてちゃんとボケの盛り上がりポイントが多くなっていく。

  • フィクション無視して容赦なく撃っちゃうところ。

  • 「幸い、ジッポライターに助けられたので」「俺頭撃ちましたけどね」一人二役ならではのボケ。

  • 容赦ない肉弾戦。(座った状態での膝蹴りは弱いだろ笑)と観客に心でツッコませる、長すぎる膝蹴り。

そして、盛り下がることなくそのままピークで終える。

構成として完璧すぎませんか。これでコントライブ1本目ですよ?こんなの書ける人が身近にいたら、この仕事やめたくなります。ほんとにすごい、素直に大尊敬です。

でも、いつか自分もこんな風に、いや、超えられるようにと、いい目標になります。最初は真似でも何でもいい、少しずつ自分らしさを加えていけたら。

ーーーーーーーーーー

ライブを創るチームワーク

ある程度の芸人さんになると、単独ライブのクオリティもそれなりには仕上がります。

でも、バカリズムライブの質はかなり高い。

カメラワークもばっちり、音響のタイミングもぴったり、オープニングや各コントタイトル表示の幾何学的な動画演出も、スタイリッシュさに磨きをかけています。

こんなスペシャリスト揃いのチームで単独ライブができたら、演者にとっては最高ですよね。

自分も作家として、誰かのそんなチームの一員になれるように、精進せねば。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?