【特別編】アパレルブランドを立ち上げる前に考えてほしい「おカネ」の話
僕が書いた記事のうちで一番反響があるのが、↓のアパレルブランドを作ったときのもの。
その反響というのが想定以上で、何人もの人がこれを見て
「よっし俺もアパレルブランド作るぜ!」と
先走り汁をピロピロしながら連絡をくれる。
すごく嬉しい!すご〜〜〜い嬉しい。
んだけど!
↑の記事から時間が経ったこともあり、
僕の中でも情報や認識がアップデートされた部分があって、
過去に戻れるとしたら全く同じことをするか?と問われると正直、
全力で頷くことはできなくて。
なので!
なんでできないの?戻れるとしたらどこを変える?を、
この記事ではぶっちゃけてしまおうと、
思って!おります!
だから先っぽから出てる先走り汁を
ちょ〜っと先っぽ内に再度おさめて頂いて、一旦この記事を読んでみて!
悪いようにはしないから!さ!
…予防線を張っておくと、これから話すのはあくまで僕個人の体験に基づく僕個人の私見であり、たとえそう見えたとしても業界全体がどうだとか言う気は全くない、というか知らない!のでご了承を。
いきなりですが!現段階で僕が出している結論
結論:アパレル立ち上げは、まとまった金を確保してからやれ!!!
いやもうホントこれ。これに尽きる。
どういうことか。
って言っても↑が全てを説明しすぎてて補足もしづらいんだけど、
もうちょっとだけ丁寧に説明する。
理由① 初期投資がアホみたいに高い
再掲だけど↓の記事内で紹介している、1モデル3カラーを作った際の原価(有料にしているのでこの記事内でも金額は言えなくてごめんちゃい)。
僕の場合はパターン(型紙)からオリジナルにしたので高くなった、っていうのはあるけど、
そもそも1モデル作るために、開発費だけでウン十万。
僕の場合は初めてだったのでやり直しもあったし、超超高品質な生地を使ったこともあってこのコストだったので、うまいことやればおそらく10万/1モデルくらいに収斂していく、として。
ここであなたに聞いてみたいことがひとつ。
「アパレルブランドです!」ってあなたが胸張って言える商品点数って、どんなもんでしょう?
例えばそれが3モデルです、だとすると、
単純計算で30万円くらいの値段が開発費としてかかってくるわけです。
個人で始める商売としては結構な投資額になるし、
「大儲けしなくてもいいけどトントンくらいには持っていきたいな。。」と思うはず。
じゃあトントンにするためにはどうする、となるのか。
例えば、開発費:30万円 で、
1枚あたり原価:2,000円
1枚あたり販売額:4,000円
の商品を作るとしよう。1枚売れると儲けは2,000円。
これで開発費の30万円を回収しようとすると、
何枚売れないといけないでしょーーか!はい!
…答えは150枚。
150枚くらい売れんだろ!と思うかもしれないけど、
ゼロから始めて150枚売るのって、結構きついぜ。
当然放っておいても売れないので、広告を回すとかする必要も出てくる。
例えば広告費に5万円かけたい、、と思ったら、
さらに25枚売らないと儲けが出ない、ということに。
そうして頑張って150枚+25枚=175枚売れて、ようやくトントン。
頑張って作ったし10万円くらいは儲けたいなあ、、と思ったら、
オッケーじゃあ追加で50枚売ってね!
だから全部で225枚ヨロシクぅ!
というハナシになるわけでござんす。
でもね。覚えているかい?
コストの話で言うと、先程の開発費ってのはあくまで商品開発のためのコスト。実際に売る商品の在庫を製造するお金は別でかかるんだよ!!!
225枚のウェアを作るコストがな!
ほんでこのコストというのが、
2,000円(単価)× 225枚 = 45万!!!
10万くらいプラス出したいな〜と思って225枚作って売り切る!ってとき、
初期投資は開発費+製造費で75万円もかかりまっせ!
更に広告5万円回そうと思ったら広告費で+5万円かかりまっせ!
…つまり初期投資額は
80万でおなしゃーす!
ということになるわけです。
80万!!!???は!!!????高級チャリ買えるわ!!
当然、よくある「オリジナルのクラT作ろう☆★☆」的なノリで
オリジナルTシャツ作るだけだったら、ぜーんぜんお金かかんない。
そもそも開発費はゼロ(画像を準備する程度)だし、製造も枚数によるけどたぶん1枚2,000円くらいでやってくれる。
だから始めるならそこからでもいいんだけど。
でもさ、タグにPrintstarって書いてあって、
「ブランド!」って感じしないじゃない?とか、
せっかく作るのにパターンは既製品、、
って「ブランド!」って感じしない、、とか思うと
悩ましいよね!!!!!まじで!!!!
そんなこんなで金がかかっていく、というのが理由①でやんす。
理由② アパレルはお金使ったもん勝ち
当たり前だけど、たくさん作れば作るほど、1枚あたりのコストは下がっていく。
たくさん発注すれば割引が効くし、開発費も製造枚数で割るので、作れば作るほど1枚あたりは安く作れるようになる。
例えば、「じゃあ1,000枚作るぜ!」って言ったらおそらく、
1枚あたり単価は1,500円くらいまでは下がるし、
開発費も散らせるので、1枚あたりのコストはガクッと下がる。(下図参照)
1枚あたりのコストが減ると、
販売額をそのままにして1枚あたりの儲けを増やす!
ってこともできるし、
逆に1枚あたりの儲けを変えずに安く提供する!
っていうこともできる。
ただし初期コストは185万だけどな!!!
ハッピーニューイヤーだぜ!!ヒャッハー!!!
↓225枚のとき、1,000枚の時、10,000枚の時の
コストと儲けのシミュレーション
ユニクロとかzaraとか、いわゆるファストファッションって言われてるブランドは、超大量に安く作って、超大量に安く売る!ってことができるから、
結構クオリティが良いものでも安く提供できてるし会社としても儲かる、
という仕組みなんだなああ、、、
そして上の表を見て気づくと思うけど、
225枚の時:投資額80万 儲け10万(投資対リターン 12.5%)
1,000枚の時:投資額185万 儲け215万 (投資対リターン116.2%)
10,000枚の時:投資額1,035万 儲け2,965万 (投資対リターン286.5%)
広告費とか店舗、人件費なんかの「売るためのコスト」とか
在庫を保管するコスト、在庫を流通させるためのコストを入れてないので
ちょっと単純化しすぎな部分はあるけど、
コストをかければかけるほど、どんどん効率よく儲かるようになっていく、
という仕組みになってる。
野郎ども、これが現実なんだぜ。
それでも、「じゃあ大量生産して勝負かけるぜ!!」
と先走り汁がまだ出てるあなた。
落ち着いて。もうちょっと聞いて。
そこで問題になってくるのが第三の理由なのだよ。
理由③ 販売開始から売り切るまでに、時間かかるよ?
単純化すると「80万入れたら90万出てくるガチャ」で、
これだけ聞くとヒャッハーなんだけど、
当たり前のように、
80万使って225枚作った!そしたら全部売れて手元に90万残った!
なんてミラクルが1日で起こるわけじゃなくて。
実際は↓のように、初期投資を数ヶ月かけて回収していく、
というタイムラインになる。
1日1枚売れても1ヶ月で約30枚。225枚売るには7ヶ月~8ヶ月かかる。
でも、始めたばかりのショップが広告費5万かけただけで
1日1枚ペースで売れて、それが7ヶ月継続する、
ってことはあまり起こらないと思う。
だから現実はもっと厳しい。
アパレルってだいたい春夏シーズン、秋冬シーズンでそれぞれ新作を作っていくけど、
新作を作ろうと思うと、当たり前だけどその分の開発費、製造費かかってくる。
だけど、その原価の元手になるはずのお金は、今手元にある在庫が売れないと生まれない。。
↑シミュレーションしてみると分かるけど、225枚を6ヶ月に一度(春夏/秋冬)リリースして、それぞれを8ヶ月ごとに売り切る、というのを繰り返すと想定すると、6ヶ月目(2回目の開発製造時)は損益計算上は100万の累計赤字になる。
細かいことを言うと、実際の現金はそれまでに売れた60万円から補填すればいいので、実際は20万出ていくだけなんだけど。
ただそれにしたって、最初に80万使って225枚作って、6ヶ月目時点ではまだ60万しか手元にない状態で、それ全部と加えて20万使わないと、同じ量の商品を作り続ける事ができない。ということ。
ちなみにこれを繰り返すと、初めて瞬間的にトントンになるのが17ヶ月目。ただ翌月には新しい在庫をつくるので、またすぐにマイナス。
しばらくは累積赤字の状態が続く。
最初に投資した80万円も全部回収してかつ売上だけで在庫を作り続けられるようになるまで、60ヶ月(5年)かかるという計算なわけです。
…5年!笑
計算間違ってないよな。。?
つまり、ある程度のお金がないと、
そもそも商品を出し続けることすら難しいのですよ。ということ。
だから、アパレルはおカネの勝負なのです。
一枚あたりコスト下げないと、
販売額を下げるとか広告費を使うみたいな工夫も難しい。
大量に作ってコスト効率を上げて、全部をさっさと売り切る。
というのが基本的な勝ち方なんだなあ。。
理由④ 企画から販売開始にも時間がかかる
これはおまけみたいなもんなんだけど、
冒頭に戻ると、「もし戻れるなら全く同じことするか?」に対して
「ウン!」と力強く言えない理由が、これ。
↑の記事の中でもさらっとだけ書いてるんだけど、
マジでいちいち時間がかかった。それだけなら「まあそういうものか」で済むんだけど、それに加えて、しょーもないミスが多い。やり直しが多い。
普通に作っても企画してサンプルが上がるまでに1ヶ月。そこにさらに、
・サンプル段階で縫製する部分を間違っていてやり直し(+2週間)
・サンプル段階で刺繍の位置が間違っていてやり直し(+2週間)
・完成品のタグに記載する情報が間違っていて全部作り直し(+1ヶ月半)
・修正依頼を出したら「やっぱり作れないので返金します」
こんなんのオンパレードで、結局想定していたリリースには全然間に合わずだった。仕事のスピード感って全然違うんだな、って思った。
想定していたリリースに間に合わないと、
上に書いたような計画がめちゃめちゃ狂う。
アパレルは季節によって売れる売れないがめちゃめちゃ出るので、
1ヶ月ずれると売れるものも売れなくなる。
初めてだったので、もしかしたらすごい無茶なことをお願いしていた可能性はあるし、
こちらから確認すれば避けられたこともあったんだろうと思うから、
一緒に作ってくれた業者を責めるつもりはない。
単にハズレを引いたのかもしれないし、もしかすると業界の標準がこんなもんなのかもしれないけど、正直今後も継続してお願いしたいか、と言われると、全くそう思わないという残念な結果になってしまった。
だから次に作るとしたら、業者の選定はもうちょっとしっかりやると思う。
具体的には、
・サンプル発注から納品までの納期確認
・納品物にミスが有った際の修正にかかる時間確認
・完成品発注から納品までの納期確認
・納品が遅れた際の割引依頼
このあたりは絶対にしっかり認識を合わせて、
同じことが起きないようにするだろうなあ、、
結論に戻ると
アパレルブランド作るのは超楽しいし、勉強にもなる。
だけど、儲けようと思ったらお金が無いと難しいし、
お金がないなら相当頭使わないと難しい!!
という結論でございました。
こればっかりはやってみないとわからなかったことなので、
めちゃ勉強になった〜
めっちゃビビらせてしまうような記事になっちゃったけど、
ちゃんと頭使えば小規模でも回していく方法って実はあると思うので、
また機会があればそのあたりの戦略を書いてみようかな〜〜と思いまっす!
↓アパレルができるまでを赤裸々に綴った記事はこちら。