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Recommended #2021

行ったこともない国で、戦争が起こっています。家族も友人もいない国で、知らない人達の家族や友人が巻き込まれ、何の犠牲かも分からないまま死の淵に追いやられています。
僕らは、おそらく彼の国が大国であることから、その情報を見聞きし、私見を募らせています。総合的判断などできるはずもなく、そこに「他の国や地域でも同じ事は起きている」などと冷静を装うのはナンセンスです。
ここ日本で、何の特権もない僕らにできることは、これまで受けてきた戦後教育の唯一の成果と言っていい、半ば反射的な「戦争反対」の合唱、これに尽きると思います。あとはいつも通り生活し、出掛け笑い、Instagram にアップし、たまにTwitter のトレンドやLINE のニュースを見て一瞬、愕然とする。
戦争に対して何も知らないながら恐れ慄き、「どうか早く終わってほしい」と祈る。祈りの形は色々あると思いますが、それくらいでいいと思います。というか、それくらいしかできない。あとは、今回たまたま目に留まったその出来事を想像し、ゆくゆくは片隅に追いやられるであろう記憶に写しておくことです。

前回はコロナ禍で(まだまだ真っ只中ですが)、今回は戦争で、いつも前置きが長くなりがちですが、以下2021年の私的ベスト・アルバムです。
僕が敬愛してやまないアーティスト、その方々からのレコメンド、友人あるいはele-king やPOP LIFE:The Podcast といったメデイアから「これは聴くべき」と月々のプレイリストに突っ込んでいたら、とんでもないことになりました。
すべてを聴き終えたのは、今年に入って1月の終わり。だからか、1枚1枚のアルバムに対する思い入れはだいぶ希釈されています。それとなんとなく、ジャンル分けしたような10枚になっていると思います。400トラック近くあるお気に入りから10枚に絞るのは容易ではありませんでしたから。
ここに来て、ここまで読んでくれている皆様には「聴くものに困ったら、聴いてみるといいよ」とお薦めしたい10枚です。何を感じ、何を想うのかは知らないし、けれどその話を聞いてみたいとは思う。そんな熱量でお届けします。
最後に、今年はバンドALPACAのリリースが叶うかもしれません。皆、仕事を抱えていますから牛歩ではありますが「あったらいいな」と思う曲を作っているので、そちらもお届けできたら幸いです。

「to hell with it」- PinkPantheress

10曲20分弱に詰め込まれたグッドメロディの数々、惚れ込みました。TikTok発というのも今時なんだなーという感じ。上に挙げたPOP LIFE:The Podcast も運営するThe Sign Magazine でも1位というお墨付き。というわけで、詳しくはこちらをご参照ください。それよりもまず、聴いてみては?

「THE MILLENNIUM PARADE」- millennium parade

いったい1曲何トラックぶち込まれてるんだと思う程、マキシマムな音像です。だからかコンプ過多気味で、ちょっと詰まったように聴こえるんですが、そこがまた癖になる。メロディは勿論かっこいい。ここに上げたティーザーのごとく、このチームの熱狂を羨ましく思うし、同世代ということにただただ驚嘆するばかりです。

「How Long Do You Think It's Gonna Last?」- Big Red Machine

2020年に素晴らしいアルバムを(しかも2枚も!)送り出したテイラー・スウィフトですが、このアルバムはそれと地続きの - この2枚をプロデュースした - アーロン・デスナー(The National)とジャスティン・ヴァーノン(Bon Iver)を取り巻く仲間達の共作です。「Co」と接頭辞の付く制作方法は一般的になりつつありますが、それを地でいくアルバムです。あとはこちらを、時間があるときにご覧ください。

「Sisei」- arauchi yu

年ごとに素敵なシングルを出してくれているcero(アルバムが超楽しみ!)の鍵盤奏者 - 荒内佑氏のソロ。どの曲がどう、とかではなくアルバム全体の雰囲気も含めて面白く、よく聴いた作品です。2020年のボーカル - 高城昌平ソロのShohei Takagi Parallela Botanica「Triptych」からも通ずる音像。このバンドの新作が待ち遠しいです。

「NO MOON」- D.A.N.

待っていたといえば、このバンドの新譜を待っていました。そしてなんとライブ・セットがフルアップされていた!このあとゆっくり観ようっと。1st「D.A.N.」で大いに惚れ、聴き込みましたが、その後少し遠ざかっていました。今回からまた、小林うてなさん(スティールパン)が戻ってきたことも喜び。このインタビューも面白かったです。

「For Those I Love」- For Those I Love 

以下の記事に、聴いて僕も感じたこと、読むことで理解できる多くのことが散りばめられています。彼の伝える全ての事が分かる訳でもありませんが、そのアイルランド訛りの英語からひしひしと伝わる感情には、心揺さぶられるものがあります。そしてポエトリー・リーディング作品としても、こんな心の動かし方があるんだと鱗が落ちました。

「The End Of The World」- Lil Boom

ヒップ・ホップではこれがベストでした。各曲タイトルから微笑ましいような日本へのカルチャー愛。蟹江さんやドレイクさんもビッグ・リリースをされていましたが、ちょっとその過剰なプロモーションには辟易。そんな胃のムカつきを和らげてくれるような、柔らかいトラックの数々。ラストにはゴッチも参加しているというサプライズ。

「Towako's Diary(『大豆田とわ子と三人の元夫』オリジナル・サウンドトラック)」- 坂東祐大

このドラマも2021年の私的ベストでした。タイムリーに観るということを久々にしたドラマだった。エンディングにKID FRESINOを初めとしたラッパーの面々が前面に出ていたのも新鮮でした。
「過去とか未来とか現在とか、そういうものって時間て別に過ぎていくものじゃなくて、場所っていうか別のところにあるものだと思う」
「亡くなった人を不幸だと思ってはならない
 生きてる人は幸せを目指さなければならない」
「別れたけどさ、今でも一緒に生きてると思ってるよ」
この台詞達が今でもそっと、心に残っています。

「I've Been Trying To Tell You」- Saint Etienne 

これは以下、ele-king の野田努さんのレビューを拝見して、残暑冷めやらぬ緊急停車した通勤電車の中でずっと聴いていました。小学生の時分に、両親に連れられて修善寺に避暑する車中、木漏れ日が明滅する蛇行した山の中で、リップスライムの「楽園ベイベー」を聴いていた時の、あの夏の郷愁を感じるというか、なんというか…

「Knebworth 1996(Live)」- oasis

最後はこれ、もう聴いて下さい。かの名曲達はさることながら、リアムのライブ特有のMCや即興が格好良すぎて。動画の、バックのオケの人達が笑顔なのに何故か感動するんだよなあ。当時4歳なので、行きたかったなどとは到底言えないが、今こうしてリマスタリングされてどこでも聴けるというのは、やはり幸せなことです。ちょっとした解説がこちら

さて、ようやく書き終わりました。2021年の私的10枚、いかがでしたでしょうか?興味を惹くものが、あったらいいな。
世の中では、毎週水曜と金曜0時に新譜がリリースされて、各々リスナーは歓喜し、アーティストはそこにお祝いの一席でも設けるのでしょう。
かたや平日の真っ昼間から戦争が始まり、フェイク・ニュースと夥しい私見、ほんの少しの事実が錯綜しています。
そしてそれらがすべて、手の中のコードで半ば自動的に書き起こされていきます。読んでも足りない情報の数々。思いを馳せれば眩暈がする。
けれど出来うる限りの想像を、妄想ではなく同情を。分断ではなく葛藤を、愛せたらよいのだろうなと思います。

最後の最後に、2021年に気に入ったいくつかを上げておきます。
ありがとうございました。

忘れてた。私的ベスト・ソングはcero の「Nemesis」でした。では。

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