2023年に摂取したコンテンツ感想まとめ
※規約違反で記事非公開にされたので再投稿
いつものやつFinal。ルールは以下のとおり。
・ランク付けではないので全編通して登場順不同
・対象は今年摂取したもの。必ずしも今年発表されたものではない。
・再読等は集計外。初見作品だけカウント。
・印象に残ったものをいくつか抜粋して紹介。
・触れるものにはなるべくリンク貼った。
音楽(聴いた数:たくさん)
全身SpotifyのSpotify人間。
動画枠
解体サケ「回る世界と日々ぼっち(正式表記不明)」
マジで音源化してくれ!!!
漫画<商業>(読んだ数:364冊)
(○=単巻・上下巻 ◎=完結済 ★=今年読み始めた)
追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~(業務用餅/kisui 六志麻あさ)
"気ままに生きることに!!" ← 気まま過ぎ。
今までの人生で読んだ漫画の中で一番タイトルが長い。一見なろう系のような顔をしているが一瞬で化けの皮が剥がれ、シュールでカオスなギャグが敷き詰められた隙間から、突然とんでもなく鋭い筆致の人間ドラマが差し込まれてくる意味不明の作品になった。漫画の自由さを教えてくれる。
1巻時点ではそうでもなかったのが、凄まじい速度で面白さの坂を駆け上がっていって、4巻の頃にはすっかり中毒になっていた。セカンドライフという言葉がここまでの重みを持つようになるなんて想像もつかなかった。 特に16話が本当に本当に素晴らしく、確認してみたら日をあけて三度も名指しで言及しているツイートが発掘された。好き過ぎるだろ。
九龍城でもう一度(藤田三司)◎
とにかく丹念に描かれている、というのがしっくりとくる作品。
全体としての話の流れは概ねあらすじからイメージされるとおりのもので、飛び道具なしの真っ向勝負。それなのにありきたりという印象にならないのは、とんでもなくずば抜けた演出力と、それを実現するだけの絵力によるものだ。読めば読むほど新しい発見があり、隅々までこだわって丁寧に積み立てたのだろうことが十二分に伝わってくる。
個人的に第5話ラストのシークエンスが本当に鮮烈で、初めて読んだ日に興奮して何度も読み返したのをよく覚えている。
3巻で打ち切りの憂き目に遭い、あまりの悔しさに震えてしまいましたが……こんなに良い漫画が読まれないこと、ある?
本当に好きな漫画だった。
ことり文書(天野実樹)★◎
お嬢様×執事モノね~という軽々しい気持ちで読み始めたら、そんなありきたりな言葉には到底収まらない豊かすぎる関係性にぶっ飛ばされた作品。こういう設定の作品をみると、どうしてもジャンル先行というか、要するにあまり良くない先入観が入ってしまう癖があるのだけど、本当に良くないなと深く反省させられた。何というか、感情のレイヤーが多くて像が分厚い……。漫画はキャラクターが魅力的でさえあれば成立する、と言葉では聞くけど、それを体で理解させられた感覚がある。ただ愛おしい。皆が。
3巻で打ち切りの憂き目に遭い、あまりの悔しさに震えてしまいましたが……こんなに良い漫画が読まれないこと、ある?②
辛い。
神田ごくら町職人ばなし(坂上暁仁)
すごい。説明しても伝わりそうにないので1話を読んで欲しい。
星屑家族(幌山あき)◯★
同人作も含めずっと活躍を追っている幌山あき先生の初商業連載作品。「Moon light for」という読み切りが好きで何度も読み返しているのだけど、本作はその裏返しのようなテーマ性だったので、個人的にはそれも嬉しい。
荒唐無稽とも言い切れない絶妙なリアリティラインの制度と、引っかかりを覚えていた点が制度自体の歪みとして浮かび上がってくる転換も鮮やか。全てが愛へ還っていく瞬間の美しさを目撃して欲しい。
潮が舞い子が舞い(阿部共実)◎
完結してしまって、心にポッカリ穴が空いた気分。たった10巻で誇張なし
に数十人いるキャラクターが脳内で生活し始めるの、普通に異常だと思う。
ダンジョン飯(九井諒子)◎
九井諒子先生は本作以前はずっと短編を描かれていたので、本作の連載が始まった当初は短期連載的なものだと勝手に思い込んでいた。ちょうど10年ぐらい連載していたとのことで、本当にお疲れ様でしたという気持ち。
ゆるい雰囲気の単話進行に始まり、終盤はシリアスめの長期エピソードへシフトしていったのだけど、通底する空気感は全く損なうことなく維持されていたのが凄すぎてビビった。結末もお見事……。
最近連載が始まった窓口基先生の「冒険には、武器が必要だ!」から少し近い波動を感じており、かなり期待している。
佐々田は友達(スタニング沢村)★
対称的な二人のウェイトに差をつけずフラットに描かれている、その卓越したバランス感覚に衝撃を受けた。良いも悪いもなく、ただ"居る"ということが軽やかな筆致で表現されている。
読み終えて、タイトルと表紙もしみじみいい。この物語の主人公は、間違いなく佐々田絵美である。それでも、この物語に添えるタイトルと表紙は、きみを見つめる誰かの眼差しであるものこそが相応しい。
ダンス・ダンス・ダンスール(ジョージ朝倉)★
ものすごい熱量。熱い、熱すぎる。すっかり圧倒されてしまって、最新刊に追いつくまで読む手が止まらなくなってしまった。バレエは芸術かスポーツか、なんて問いを聞いたことがあるが、この漫画はその両輪を兼ね備えた作品になっている。スポ根的な鍛錬と、様々な願いや葛藤が、渾然一体となってステージ上に表れる瞬間の美しさたるや。とんでもない表現力。
ウィッチウォッチ(篠原健太)★
たまたまこれを読んで比喩でなく腹抱えて笑い転げたので、1から読み始めたらずっと面白くてビビった。世界、広。
噂に聞いていた「SKET DANCE」も読もうか検討中……。
アオアシ(小林有吾)★
スポーツものってどうしてもフィジカルの方面に寄っていきがちだけど、この作品は頭の使い方の重要性をこそ繰り返し描いていて、そこが圧倒的なリアリティに繋がっている。しかも、舞台をユースに設定することで最低限のフィジカルはあるんですよという前提を言外に敷いていて、結果的に前述のテーマを違和感なく描くことに成功している感もあり、この創り方自体が頭いいなぁと感心した。ここまで説得力と納得感のある展開を続けるのって実はめちゃめちゃ難しいはずで、それを普通にやってのけている(ように見える)の、単純にすごすぎる。
透明人間そとに出る(路田行)◯★
6つの短編が収録された短編集。透明人間、人格入れ替わり、クローンといったSFちっくなテーマもあれば、ゴミ屋敷や家出少年といった社会派ちっくなテーマもある。共通するのは、どれも人間の愛らしさを描いたものだということ。派手さはないけれど味わい深い話ばかり。おでんみたいな感じ。
ダイヤモンドの功罪(平井大橋)★
望まぬ才能を与えられてしまった天才少年の、孤独と苦悩についての話。才能はギフトであると同時に呪いでもある。圧倒的な才は本人だけではなく周囲の人間にまで大きな影響を及ぼしていく、そのグロテスクさ。
この作品の真に優れているところは、小学生が小学生として描かれているところだと思う。優しさも、狡さも、賢さも、浅はかさも、全部が等身大であること。大人たちが彼らをコントロールしようとする時、彼らはその思惑にすら気づくことができない。悪意ではなく、善意とすれ違い、ほんの少しの身勝手な願いが、少年を孤独へ追い込んでいく。それらを俯瞰で眺めたとき、そこに"仕方のなさ"のようなものが見えてきてしまう。それが苦しい。
スペシャル(平方イコルスン)◎
今年読んだ中で最も結末が印象に残った漫画。怪作。
3巻までが本当に好きで、それは4巻が嫌いだという意味ではないけれど、全てがそのための助走でしかなかったと思えてしまうのは、少し寂しい。
上京生活録イチジョウ(三好智樹/瀬戸義明)◎★
めちゃめちゃに泣いてしまった。もっと早く教えてくれ。
漫画<同人誌>(読んだ数:219冊)
出会って4光年で合体(太ったおばさん) ※18禁作品
【noteの検閲によりリンクは削除したので検索してください】
突如リリースされた382pの意味不明なボリュームを持つエロ同人作品。
漫画の体裁をとってはいるが、モノローグを基調とした進行は一般的な漫画作品に比べて相当に文字数が多く、むしろADV作品のような読み味だった。
今年摂取したコンテンツ全体の中からどれか一つだけ薦めるものを選ばなければいけないとしたら、もしかしたらこれになるかもしれない。万人に薦められるものではないはずなのに、そうしたくなるほど強烈な体験だった。ノスタルジーを感じる部分もありつつ、今までに似た作品は存在しなかっただろうと確信できるだけの新規性がある。これはハードSFであり、ラブコメであり、伝奇モノであり、セカイ系であり、そしてエロ漫画である。
もし読むなら一切他の情報を入れずに。
そして、二人の未来に1,000円(税込1,100円)を支払おう。
さよなら。マイワールド(北海道本舗/蝦夷リス)
もはや王道と言っていい類型の物語だと思うのだけど、かなり体重がのっていて、とても良かった。そしてED曲、流石に激アツすぎる。
映画のエンドロールが終わった後のCパート、好きなんだよね。
金蝿(まばたき星雲/ばったん)
バカで股のゆるい女なんて見捨ててしまえ。と単純に断じられないことを理屈でなく心で分からせてくるのがすごいんだよな。ばったん先生は。
無他なるものの祈り(萵苣猫/tayama)
コミティアで初めて同サークルの本を買った時に「ADVにしようと思っていたアイデアが原型になっていて……」みたいなこと(正確じゃないかも)を言われたのを覚えている。たしかこれだった。
その時は正直そこまで刺さらなかったのだけど、そこから数年経った直近の数作品は全部が全部ぶっ刺さりしていて、それはもしかすると、この体に流れるADV民の血が共鳴しているからなのかもしれない、と思った。
あいまいでよく見えない。(chapter22/高野雀)
感情の瞬間最大風速がすごすぎて自分で自分にびっくりした作品。こんなに一瞬で涙止まらなくなること、あるんだ。どうしてなんだろう。
八十九番(非在人事部/くのいちかずひと)
女の子が可愛い。可愛すぎる。だからこそ、少年の葛藤と決心が我が身にかえるようで苦しい。まだ人生は続く。健やかに生きて欲しい。
混信(室外機室/ちょめ)
SF(すこし・ふしぎ)のお手本のような話だと思う。素晴らしい完成度。
わすれもの(SMMKC/白井もも吉)
ありがとう。心のシェルターです。
漫画<ウェブ>(読んだ数:446作)
化け! へだてなく(夜なのに朝日)
夜なのに朝日先生、待望の商業短期連載作品。くぬぎの絶妙なクソガキ感がクセになる、ゆる~っとした日常モノ。かわいくてほろりとくるから人情モノかもしれない。3話で連載が終了となってしまったのが本当に悔やまれる。ロイホのハンバーグ、食べたことないから食べてみたいな……。
昔たまたまビデオを買ったジブリの「ホーホケキョ となりの山田くん」という作品が好きで、ビーフストロガノフという料理の名前が言えなくて延々言い間違え続けるというエピソードで腹を抱えて笑っていたことを未だによく覚えているのだけど、何となくそれを思い出した。
平成狸合戦ぽんぽこの方ではなくね。
AOI++(水田マル)
ロボットと感情というテーマに対する答えとして、新しい切り口を提示したのではないかと思わされた作品。そこへ行き着くための構成も巧みで、アオイの"選択"が物語の中ではなく外に置かれていることが本当に素晴らしい。そうでなければ、獲得の話にならないから。
ともだちになった魚(どのみち孤独)
ものすごい勢いがある。名前のせいかもしれない。どすこい、どすこい。キャラクターがめちゃめちゃ可愛く、満面の笑顔になってしまう。
ぼくははやくなっていく(夏島扉)
全ての要素が気持ちいい場所に配置されている。この設定で描くならこうするのが正解なのではないかと思わされた。余韻を残す台詞も素晴らしい。
空をわたる生き物(コノシマルカ)
田舎と思春期をテーマにした普遍的な話で、展開自体もすごくシンプルなのに、丁寧に描いているからか心にグッと入り込んでくるものがある。この短いページ数で二人のことを好きにさせてしまうことの凄さ。
最後のページを見て、改めて振り返るタイトルも素晴らしい。
きみはまだ見つかっていないだけ(ホニャポコ)
今の時代において普遍的かもしれない感情を、希望をもって描いた作品。創作物にまつわる誰かが誰かの救いであって欲しい(例えそれを認識することがなかったとしても)という祈り、抱き続けていきたい。
今も心に残る斜線堂有紀先生のエッセイを思い出した。
ザファーストピッチセレモニーライフ(山本登)
とんでもない熱量と疾走感があり、力強い。作者の中に確固たる正解があり、そこを目指して描いているんだろうなと思わされる堂々さがある。やり続けることは美しいことという信念が画としても表れていて、シビれる。
確実にこれから来るのではないかと思い注目している作者さん。
初恋(西尾拓也)
ジャンプ+に舞い降りた純文学作品。物語的な余白の多さがすごく、しっかりと読むにはそれなりの漫画リテラシーが求められそうではある。
以前から抒情的な作品を描かれる作者さんではあったけど、本作以降はそれが何段階も上のステージへいった感がある。
現在短期連載中の「夏の終点」も大傑作になりそうなので、是非。
漆黒のカイザー(神羊弱虫)
完璧なフリが効いている……ダークネスルーラー、許せねぇよ。
世界で一番君が嫌い(佐藤夏)
物凄く難しいテーマを、真正面から描き切った作品。凄まじい想像力。 他の作品も全部素晴らしかった。これから先が本当に楽しみ。
作品そのものの感想からズレてしまうけど、どうしても。ここまで一面的にならないよう神経を張り巡らせている作品の、ほんの一部だけを切り取った極めて単純化されたポジショントークの感想を読むと、断絶の深さにどうしようもなく悲しくなってしまう。何もかもそんなに単純ではないという物語のはずなのに。こんなに心を砕いても全部無駄なのかと思えてしまって。
遠い日の陽(横谷加奈子)
その行動に共感できる登場人物が誰一人としていないのに、そこにある彼らの感情の中に自分を見つけてしまうような気がする、不思議な作品。今年読んだ読み切り作品の中では、これが一番かもしれない。
一定のトーンで淡々と進行していく、どこへ着地するのか分からない物語が終着点へ行き着いた時、信じられないぐらい感情を揺り動かされた。短期間でこんなに何回も読み返した短編、たぶんルックバック以来だ。
コミティアで買えた物理本、宝物としていきたい。
小説(読んだ数:6冊)
異修羅(珪素)
数年前にカクヨムで超世界転生エグゾドライブ(※)を読んでからファンになった珪素先生の最新作。カクヨム連載版は以前に読んでいて、わざわざ書籍版を読むつもりはそこまで無かったのだけど、書籍化にあたって何故か新キャラが何人も生えてきた上に展開自体もわりと別物になっているという噂を聞き、そんなことある?と思って読んでみたら、マジだった。
いわゆる"チートキャラ"に類するキャラクターだけを集めてトーナメントをしたら、という思考実験的な設定がフックになっていて、その部分だけでも成立し得るだけの面白さは担保されているのだけど、人間模様が見えてくるにつれて複雑さを増していく盤外戦という頭脳バトル要素、トーナメント自体の名目となっている"本物の勇者"の正体という謎解き要素など、展開が一辺倒にならないように要素を散りばめるのが巧い。
映画(観た数:42本)
映画ドラえもん のび太と空の理想郷(監督:堂山卓見/脚本:古沢良太)
古沢良太ファンなので観に行ったやつ。この人の脚本は良くも悪くも出した要素を最後には全部使い切るのが一つの特徴だと思っていて、本作でもそこはいつもの如く発揮されていたのだけど、その物語的な構造と作品自体が持つメッセージ性が完全に一体化していたのが本当に美しくて感動した。
それはつまり「最初から全部持っていた」ということで、さりげない青い鳥のモチーフ的な引用もニクい。
めちゃめちゃ個人的な感想を言えば、あまり刺さらなかったシン・ウルトラマンで不満に思っていた点が完璧に改善された、完全版シン・人間讃歌という感じでした。それはたぶん、何故"そんなに人間が好きになったのか"を支える部分が、より説得力をもって描かれているように思えたからなんだろうという気がする。あるいはそれは、ドラえもんというコンテンツ自体が持つバックグラウンドによるものだったのかもしれないけど。
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート)
https://www.netflix.com/jp/title/81569721
あまりに凄すぎて映画館なのに観ている時に変な笑いが出そうになった。意味がわからないけど、わかる。矛盾も全て飲みこんでいく新体験。これは流石にアカデミー!!!!と脳内で叫んでいたら、獲った。それはそう。
どういう映画なのかと聞かれても上手く説明ができないから困る。あらすじを読んでも正直いまいちピンとこないし……。一言でまとめると確定申告を目指す大冒険活劇なので、今の時期にピッタリかもしれませんね(?)
THE FIRST SLAM DUNK(井上雄彦)
この映画を映画館で観ることのできた幸運を噛み締めていきたい。流石にスポーツ映画界における金字塔になるだろう、これは。
正欲(岸善幸)
多様性を認めるというお題目が掲げられるようになって久しい昨今でも、現状そこには必ず"社会的に正しいと認められる範囲で"というエクスキューズが付きまとっており、同時にその部分は見て見ぬフリをするのが正しいとされている気がする。これはわりと常々考えていることで、例えば"多様性を認めない"多様性というのは、今の社会的要請としては許容されないだろう。そのことに対して、ずっと何とも言えない据わりの悪さがある。
(念のため補足しておくと、これは自身がそのような主張を持っているというわけでも、その考えだって認めた方がいいのだという主張でもなく、最初から例外が存在しているにも関わらずそれを公言しようとしないことに言葉にならない気持ち悪さを感じているという話です。しょうもな。)
まあ、つまりそういう人間の想像力についての話だった。あとから知ったけど朝井リョウさん原作だったんですね。すごいメディア化の数。
作品の根幹に関わる部分なので経緯は伏せるけれども、作中で性行為のようなことを行うシーンがあり、それが本当に笑ってしまうほど全くエロさがなく、それがエロくなく描かれていることが正しすぎて、本当に感心した。新垣結衣と磯村勇斗の行為シーンがエロくないこと、金輪際ないだろうな。
怪物(監督:是枝裕和/脚本:坂元裕二)
あまりにも現実感のない制作陣で観る前から期待値が恐ろしいことになっていた作品。音楽は坂本龍一。オタクが考えた?
途中で物語的な大きな転換を迎えることもあり、詳細な言及は控えたい。
是枝監督の厳として子供を独立した一個の知性として描こうとする姿勢と、坂元裕二氏の十八番である愛の話が合わさったことで、とてつもない映画が生まれてしまった。怪物、あまりにも怪物すぎる。
ドラマ(観た数:18本)
きのう何食べた? season2
人が人と暮らすことで互いに影響を与えあって少しずつ変化していく。ただそれだけのことを、ここまで丁寧に描いていけることの凄まじさ。そこに成長という耳障りのいいラベルをつけてしまうと何かがズレてしまうような気がして、うまく表現する言葉が見つからないのだけど。
過去2期が単なる新シーズンとしてではなく、1期から連なる時間の積み重ねの先として、ちゃんと2期である今だからこそ描くことができる話をやっているのもすごい。3期も4期もやって欲しい。
個人的ベストエピソードは第5話と第10話です(決められない)
舞妓さんちのまかないさん
原作自体のファンでもあり、是枝裕和さんが指揮をとるとなれば、流石に観ないわけにはいかなかった。物凄く楽しみな一方で、ここまで揃ってしまうと逆に観るのが怖くなってしまう現象に陥ったけど……。
時間をゆったり使った丁寧なつくりで、画面がとにかく綺麗。原作よりも幾分かソリッドな雰囲気にも見えるけど、実写化としてはこのぐらいのバランスが丁度いい塩梅な気がする。役者陣も素晴らしく、何より森七菜さんの大ファンになりました。あまりにも名演。佇まいが"本物"すぎる。
日曜の夜ぐらいは…
生きづらさを抱えた三人の女性が芸人ラジオ「エレキコミックのラジオ君」を通じて知り合い、その出会いがやがて人生そのものを少しずつ良い方へ傾けていくという話。別に何歳から青春してもいいんだよな。
これも舞台で挙げた「二次会のひとたち」と同じ岡田惠和脚本。すごい。ノリにノっている。
ブラッシュアップライフ
https://www.netflix.com/jp/title/81739766
バカリズム脚本のファンなので、主演キャストが発表されたとき、良すぎて夢かと思った。
小さな小さなところから始まって、最終的にはそれなりに大きなスケールの展開へと繋がっていくのに、持ち味であるオフビートな雰囲気は損なうことなく最後まで軽やかなテンポを保っていたのは見事という他ない。もっとドラマ脚本をバンバン書いていって欲しいね……。
架空OL日記もおすすめ。
舞台(観た数:63本)
<1/21>宝飾時計(作/演出:根本宗子)@東京芸術劇場プレイハウス
凄まじいものを観た。間違いなくオールタイム・ベスト級。
自分でも説明のできない感情で涙が止まらなくなる体験、そうできるものではない。いつかのこれを求めて劇場へ足を運び続けているのだと思う。
名曲。
<4/18>二次会のひとたち(作:岡田惠和/演出:田村孝裕)@紀伊国屋ホール
結婚披露宴には呼ばれず、結婚式の二次会の幹事に指名されたひとたち。一癖も二癖もある連中のコメディベースな掛け合いが単純に面白い序中盤それそのものが、この人たちの素直になれなさを表現する手段になっているのが見事。長い長い時間をかけて自身の幸福のために一歩踏み出した彼らの選択に、息を止めて見入ってしまった。お守りみたいな作品だ。
岡田惠和さん、目が離せない。
<8/13>LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」(脚本/演出:山崎彬)@THEATER MILANO-Za
ぼざろアニメのキモだったケレン味のある演出の数々を、舞台的な演出として翻案した上で味わいだけを再現していたのが凄すぎた。これは間違いなく舞台「ぼっち・ざ・ろっく!」だ。山崎彬、その名前覚えたぞ……。
結束バンドのライブを生で観られたのも嬉しい。演奏含め演者は皆素晴らしい入り具合だったけど、特に主演の守乃まもさんが凄まじい。もはや憑依といっていいようなレベルで、どこから見つけてきたのか気になる。
めちゃ良かったから早く第2弾の文化祭編をやってくれ!!
<9/22>柔らかく揺れる(劇団パプリカ)@こまばアゴラ劇場
生々しくも淡々と展開する家族の物語。繰り返される暗転が最後に繋がった時、思わず鳥肌が立った。
これが最後のこまばアゴラ劇場になった。さようなら。
<11/11>静流、白むまで行け(かるがも団地)@神奈川県立青少年センター スタジオHIKARI
夢、ずっと諦めなくてもいいし、別に諦めてもいい。
全ての人へ向けた温かい眼差しが持ち味の劇団だと思っているけど、いつものコメディタッチが抑制された本作はそのコアを目撃した気持ちだった。
ライブ(行った数:85本)
<2/2>日食なつこ/LA SEÑAS@渋谷CLUB QUATTRO
大げさでなく、音楽が昔からずっとあって、これからもあり続けることを実感できるような体験だった。音楽の根っこに触れたような感覚。
<3/11>土岐麻子/竹内アンナ@クラブeX
幸せすぎてどうにかなりそうだった。二人ともかっこよすぎる。なにかのバグでもう一回だけ観させて欲しい……。
<5/19>とけた電球/なきごと/Enfants@下北沢SHELTER
企画3マンだけど、Enfantsの体験が鮮烈すぎて、そのことばかり思い出してしまう。奇跡の夜だった。オールタイム・ベスト・ライブ候補。
<7/8>SAKANAMON/the band apart@Spotify O-WEST
「憧憬」というタイトルが沁みる……。光の中へのセルフカバーが信じられないぐらい良かった。
<8/11>ハンバートハンバート@日比谷野外音楽堂
初めての野音。ハンバートハンバートは生活の音楽だと常々思っているのだけど、虫の声と風の音が二人の音楽と調和してすごく綺麗だった。営み。
<9/3>YONA YONA WEEKENDERS@渋谷CLUB QUATTRO
ステージ上に当然のように冷蔵庫が置いてあるのが面白すぎる。
(メンバーが途中で酒を取り出しては飲むためのもの)
<10/29>エルスウェア紀行@吉祥寺Star Pine's Cafe
最近アイドルを好きな人たちの気持ちが体で理解できてきた気がする。
<11/8>ラッキーセベン@下北沢BASEMENTBAR
踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損々。だった。
<11/11>浦上想起・バンド・ソサエティ@WWW X
いい曲をいい音で聴くと……めちゃめちゃ楽しい!(原始)
ゲーム(やった数:7本)
Refind Self
RjR$HVXUq@UyPyPD
まとめ
丁度5年続けてきたことになるわけですが、冒頭で書いた通りFinalです。
今年も1年お疲れ様でした。