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データビジネスの5つの差別化ポイント

この記事の位置づけ

ここでは「データ生成〜納品」までを一貫体制で行うビジネスについて触れます。
それぞれのプロセスに特化したビジネスも多くあり、プロセスごとに差別化要素がありますがここではその深掘りはしません。
経験則に基づく部分が多く、正確性にかける可能性はありますが読みやすさを考慮して断定的な言い方を意識してます。
とはいえこれが誤りだった場合は筆者である私に責任がありますし、そうでもないのでは?と気がついた方はぜひご連絡ください。

データビジネスの差別化ポイント

データビジネスなので質と量なのでは?と思うかもしれないですが、それはごく一部にすぎません。
下記で記載することが全てでもないでしょうが、主要論点にはなると考えます。

a.スピード

スピードは価値とはよく言われますが。データについてもそうです。
社内データは、オンライン化がすすんで日時など高頻度でデータが更新されている状態があるにも関わらず、
外部から調達するデータの更新頻度が月1回だったら使い勝手は良いと言えるでしょうか?
喉元すぎれば…ということわざがあるように、意思決定したいタイミングで見られないデータは顧客価値が低いです。
今では、小売店パネル調査の圧倒的No1であるインテージのSRIというサービスは後述するデータの「質」という点でも優れていましたが、競合だった世界最大のニールセンという調査会社に日本市場で勝てたのは、月1回更新のデータを週で提供できるようにしたスピードが重要な勝因だったことを当時の事業責任者から伺ったことがあります。

b.価格

toBビジネスなので、購買決定者は会社に対して導入費用対効果を示す必要があります。品質が「変わらない」とみなされれば1円でも安いところに発注をするのが企業人としてはまっとうな意思決定と言えるでしょう。

データはそこから発見できることを示した時点で価値移転が行われる無形商材であることや、購買決定者は普段からデータを見る仕事をしているとは限らないことから、品質の善し悪しを事前に判断することが難しいです。ゆえに価格以外の差別化要素を納品前に明確に意識してもらえないのであれば必ず価格競争に陥りますが、それ故に価格は強力な差別化要素になります。

私が社会人になったころはWeb調査が郵送調査にとって代わる過渡期だったのですが、納品までのスピードもさることながら、提示する見積金額の違いに「これはオンライン調査一択では…」と思った次第です。

なお、価格の決め方としてはコストや限界利益、利益目標から考えるという方法もありますが、購買決定者の立場に立つと、支払い可能金額と支払い方は「意思決定の質がビジネスに与えるインパクトの大きさと、そして頻度」に依存するはずです。

c.使いどころ

自分の考えるデータサービスの本筋は「よりよい意思決定支援」です。
ただ「よりよい意思決定」ができたかどうかがわかるのは事後的かつ、そもそもA/B比較ができません。
よってデータビジネスでは、この「どう事業活動のプロセスにどう取り込んでもらうか?」という視点が重要になります。

顧客は「ドリルではなく穴が欲しい」わけですが、どのサイズの穴をどこにあけるかは、第三者が提供可能なデータだけでは意思決定は容易ではない(というか多くのケースではすべきではないはず)ので「扱いやすい高性能のドリル」を提供するでよいのではないかと考えます。

なお、「扱いやすい」というのは

  • あれもこれもできるのにこの値段で!より、いわゆる”バーニングニーズ”に直接的に、短期間で応えられることが大事

  • 分析者がステークホルダーに説明するときの再加工の手間が少ない

  • 共通言語化している(例えば「ビデオリサーチ社の視聴率」であれば、データ自体の信憑性やデータ定義などから話す必要はない)
    といったことを指していて、データを提供できるAPI、クラウドBIツール経由、CSVファイル、PPTレポート、ワークショップといった納品方式ははこの使いどころによって規定されます。

d.データの質

レストランの食事において食材が大切なようにデータサービスにおけるデータの質は大きな要素ですが、全てではありません。

・データの素性
・データの癖(欠損やバイアス)
・処理方法(クレンジング、正規化、集計用マスター)

はいずれも差別化要素になりますが、顧客はその差を事前に知覚することが難しいです。
主力ユースケースにおいて、競合ではなく自社サービスを利用すべきであるポイントを具体的に明示しましょう。

なお、データビジネスのために収集されたわけではないデータをデータビジネスのために転用するための、手間と工夫はしばし多大でこのドキュメントの読者の会社のマネージャーや、顧客はその労苦を期待するようには認めてくれないかもしれません。
それでも、顧客が関心があるのはあなたのこだわりではなく得られるアウトプットとそこから期待できる便益ですし、あなたはそれにより期待した収益をあげることができるでしょう。
また、データの質の向上・維持は際限がない道のりでもあります。
事業が継続的に提供可能になるように、時に期待値水準を意図的に作りながら、顧客から見える知覚品質に対して必要な水準を達成しましょう。

e.データの量

ギャラップ社の有名な社会調査の事例を引き合いに出すまでもなく、データ量もまた一つの差別化の要素にすぎませんが、他の要素が近しい場合は重要な差別化ポイントになります。
意思決定の内容によって、最低限必要な情報単位、望ましい情報単位があります。
例えば、POSデータのような商品販売に紐づくデータであれば
商品:カテゴリ(カテゴリにも様々な水準があります)、SKU、商品特徴
店舗:エリア、業態、チェーン、店
のどの分析軸において、どの粒度のデータが最低限必要なのかと、どの粒度が向上するとスイッチor追加支出がなされうるのかを見極めることが重要です。
どれだけ「質」が良いデータであっても、最低限の「量」が担保できない場合は顧客の意思決定に貢献ができません。

おわりに この記事を書いた理由

経歴柄、データビジネスに携わる友人知人も多く、またその相談をうけることもあります。

私は
・データは誰かに語られたがってる
・データを活用した意思決定はもっと事業成長に資することができる
・データは人や組織をエンパワーメントできる
といった価値観を持っているので、そういった相談はありがたいと思ってる一方で、そもそもそういう人にとっての手がかりになる情報は(市場規模があまり大きくなくニッチなので)案外情報が少ないなとも思うようになりました。

この記事が、似たような考えを持っている人が事業を検討する上でヒントになれば幸いです。
また、こういうことを知りたいということがあれば続編も考えるのでご連絡ください。

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