前回の記事ではアイデアの種は必ず出るので小さなものでも出そう!
ということをお伝えしました。
その記事はこちら
アイデアを出すのは簡単なように見えて実際はとても大変。
「乾いたぞうきんを絞って一滴の水を出す」感覚です。
でも、アイデアの種は必ず出ます。
そしてその種を育てる。
「アイデアはつくるもの」だと私は思っています。
今回は
数々の失敗談(そのうちお伝えします)がある中
いかにしてアイデアをつくり
ヒットモデルとなったのかをお伝えします。
◇窮地に追い込まれた「USB」◇
私も企画が仕事だったので
どんなテーマが与えられてもアイデアの種を見つけて育てていかないと
仕事になりませんでした。
今回は数ある苦労話の中から
「USBメモリー商品企画」の体験談をお伝えしたいと思います。
(セミナーなどでたまにお話する例なので聞かれた方もいらっしゃるかもしれません。)
USBメモリーが日本で導入されて数年たった
2006年ころだったと記憶しています。
ソニー記録メディア事業の新規事業として
USBメモリーを立ち上げていましたが
どうしても
ソニーでは価格が高くなることもありシェアが下がってきていました。
「このままシェア低下が続くなら赤字の解消は難しいだろう。
必ずシェアを上げろ! ダメなら撤退か…」という騒ぎに。
当時、私は別のプロジェクトを担当していたのですが
幸か不幸か、このUSBメモリーの商品企画に呼び戻されました。
おそらく
2000年頃に日本で最初のUSBメモリーを発売したメーカー2社のうち
その1社がソニーでしたが
そのUSBメモリーの商品企画を担当していたことが
呼び戻された理由のひとつだったのかもしれません。
競合も多々いる中で
どうやってUSBメモリーのシェアを上げるか??
企画担当は私の右腕として来てもらった Sさんの二人だけ。
それはもうプレッシャーもきつく悶々とした日々を
最初は送っておりました。
◇ユーザーインタビューからひとすじの光明の光が!◇
こんなときこそ「ユーザーから聴く」。
当時の王道でもありました。
答えをもらうのではなく「キーワード」を引き出す。
・どんな風に使っているか
・どんなことに困っているか
などインタビューというか座談会のような形で実施しました。
たくさん出てきたキーワードの中から
・落とした時に困る(情報セキュリティ)
・キャップをすぐになくしてしまう
という2つのヒントをを商品企画ピックアップ。
ピックアップしたヒントを足がかりに
人を集めてブレインストーミングを実施しました。
そして引き出した20くらいのアイデアをスケッチにおこし
さらに5つほど絞り込んでイメージモックアップにおこしました。
イメージモックアップを手に
再度ユーザーへグループインタビューを実施。
試作品への意見を聞いてみました。
最初の我々の本命は
鍵付き、ダイヤル鍵付きのUSBメモリー。
鍵メーカーさんに協力をいただいてつくったのですが
これらは全く受けませんでした。
ところが、ある女性からは
「何これ、ありえない! ドン引き!」と失笑される始末。
本命だったのに超がっかり。
いまだにこのときのことは鮮明に覚えています。
一方
そのインタビューで評判が良かったのが
「キャップをすぐになくしてしまう」
という声をベースにしたアイデアから生まれた試作品。
ノック式ボールペンをヒントにした
キャップレスUSBメモリーのイメージモックでした。
◇ユーザーにフィットしたアイデアがさらなるベネフィットを生む◇
実は
メーカーの企画である我々からすると
正直USBメモリーのキャップが無くなっても特に問題にならない。
なので全く重要視していませんでした。
今から思うと完全に作り手視点でしたね。
でも、そんなものだと思います。
キャップレスUSBメモリーのイメージモックに対しては
「 あっ、これイイ!」
「 新しい!」
と、とても好評でした。
さらには
「片手で扱えるからイイ!」という
これまた
我々はそこまで思ってみなかった顧客ベネフィットの反応があり
最終的に「このスタイルで行こう!」と決めて企画を進めました。
◇ユーザー目線からアイデアを創り出す◇
正直、発売するまでは本当に売れるか不安でたまりませんでした。
しかしお陰様でヒットモデル。
さらには15年以上もそのままで販売される超ロングランモデルとなり
会社にも利益貢献することができました。
容量はずいぶんと増えましたが、
今でもそのままのデザインで販売されているモデルです。
https://www.sony.jp/rec-media/products/USM-U/
数々の失敗談もありますが
ヒットモデルとなったアイデアの経緯でした。
困ったらユーザーに聞く
そして、得たヒントの行間を読んでアイデアを創り出し育てていく。
アイデアをつくることが大切なんですね。
ご参考にしていただけるとうれしいです。
追伸:
順風に聞こえるかもしれませんが、
このモデルも
実際には小型に落とし込むのにメカエンジニアが頑張ってくれて
USBメモリーにこの機構を搭載してくれました。
さらにはコストも上がるので、
事業部長からは反対されました。
企画マンは、
よいアイデアが見つかってもそこからがたいへんだと思います。
この話は、2020年11月の
YouTubeライブ配信インタビューでも
お話していますので、
よければ覗いてください。
https://www.youtube.com/watch?v=YouBCkJfUYE&t=546s
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