アイデアはつくるもの~その2~(後半)
今回は「アイデアはつくるもの ~その2~(前半)の続きをお送りいたします。
前回「聴診音のAI診断支援」の医療サービスの立ち上げに携わることになり
ヒアリングやブレインストーミングを行い
アイデアを絞っていったことについてお話しましたが
医療サービスの立ち上げに携わることになり
ヒアリングやブレインストーミングを行い
アイデアを絞っていったところまでお話しました。
その記事はこちら
絞ったアイデアの一つ「手術映像の管理・配信システム」
でした。
私は以前に映像配信システムソリューション事業の経験があり、
それを元にしたアイデアでした。
◇面白みに欠けると感じていたアイデア◇
私は以前に映像配信システムソリューション事業の経験があり、
それを元にしたアイデアでした。
手術映像は、研修医さんのトレーニングにも有効なのですが、
個人を特定できてしまうなど非常にセキュリティが要求されるため、
有効に活用できていないという課題がありました。
また高解像度映像が求められますが、
そうなるとデータが重くなりハンドリングがたいへんになります。
それを解決するソリューションです。
ただ、
ビジネスアイデアとしてはそれほど悪くないのですが、
「今一つ面白みに欠けるなぁ」と感じていました。
そこで、これをもとにもう一歩面白くできないかと
さらに医療関係者や有識者にヒアリングを続けました。
◇必要を感じているのは画像ではなく「聴覚」だった◇
ヒアリングを続けていると
「 白神さん、手術映像の共有も大事なんだけど、
聴診器の音がしっかり聴きとれないドクターが増えていて
それをなんとかできないですかねぇ。。」
とある医師の方がポロっと一言こぼされました。
ただ、
ビジネスアイデアとしてはそれほど悪くないのですが、
「今一つ面白みに欠けるなぁ」と感じていました。
そこで、これをもとにもう一歩面白くできないかと
さらに医療関係者や有識者にヒアリングにまわります。
そのヒアリングの中で、
「 白神さん、手術映像の共有も大事なんだけど、
聴診器の音がしっかり聴きとれないドクターが増えていて
それをなんとかできないですかねぇ。。」
とある医師の方がポロっと一言こぼされました。
医師国家試験での聴診音試験は
実際の音での試験ではなく、
テキスト擬音語での試験だそうです。
そのため、若いドクターは聴診のトレーニングを
医師になってから実際の現場で積むしかないとのこと。
また若いドクターに指導する立場である
ベテランドクターは耳が遠くなって
指導がままならないという状況もあるそうです。
人間ドックなどでの聴診器検査では、
聴き落としも少なくないとのこと。
(もちろんしっかり聴きとれている
ドクターもたくさんいらっしゃいます)
とは言え
聴診器はいろいろな病気を早期に発見するための重要な診断です。
そこで、聴診音の共有、トレーニングを
事業化できないかという企画構想をまとめ、
それをまたヒアリングしました。
◇何気ない一声が独自性あるアイデアへ◇
ここまでの企画構想は悪くはないけれど、
ちょっとインパクトに欠ける=ビジネス性はあまりなさそう
そんな中、エンジニアから
「AIで解析できるんじゃないの」
とのアイデアが。
これだ! と決まりました。
ただ、診断は医師が行う必要があるため、
「聴診音のAI診断支援」
の構想にまとめました。
この構想でヒアリングを行ったところ、
心臓の弁膜症の早期発見に聴診音が有効ということも分かり、
まずはこの弁膜症早期発見に絞った企画に練り直します。
さらに調査をしていくと、
よく似た構想を始めている例もあることが分かったため
少し違うアプローチにしたり、
独自性のある企画にまとめていきました。
いかがでしょうか?
「アイデアはつくるもの、育てるもの」の例として、
アイデアが形を変えながら
企画へとまとまっていった
よい事例だと思っています。
私自身もとても勉強になりました。
画期的なアイデアがすぐに見つかることはなかなかありません。
まずはアイデアの種を見つけて、
想定顧客や現場の関係者へのヒアリングを重ねて、
育てていくことが、有効で確実な方法です。
ご参考になればうれしいです。
追伸:
その後この企画はドクターだけでなく、
聴診器メーカー、医療機器メーカーなども巻き込んだ
プロジェクトへと発展していきます。
ただ、とても残念でしたが、
KOL(Key Opinion Leader)医師が30人の協力ドクターを集めて研究会を
つくるという契約の準備まで進んだところで、
ソニーB2Bは映像に特化していくという中期戦略方針のため、
このプロジェクトはパートナー企業にとりまとめを移管となり、
その後フェイドアウトとなりました。
私の企画パワー不足も一つの要因で、
期待頂いたドクターやパートナーには
ご迷惑をかける形となってしまいました。
私がちょうど50歳になるときで、
このときの残念さや悔しさが、
今の仕事につながっているところも大きいと思っています。
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