ココヘリ(新ジロー)と旧ジローの違いについてまとめてみた(2024年6月27日時点)
はじめに
ココヘリとジローにまつわる情報を自分なりに整理してみたが、あくまで素人理解であり、公式(代表者)への質問の回答は今だ得られていない状況ではあるが、僕なりに解釈した情報をまとめてみる。僕自身は昔ながらのシンプルプラン(今は新規で入れない)でありそれ以外のプランはよくわかっていないし、それ故間違っていることもあるかもしれないので予めご了承いただきたい。
さらに、ヤマレコの代表の的場さんがYouTubeでも解説をしているのでそちらのほうがより詳しく分かりやすいと思うのでそちらも是非ご覧いただきたい。
ただ、僕の理解も概ね的場さんと同様だったのでここでは僕なりに問題点や疑問点の整理の意味を込めて書き記していきたい。
ココヘリ(ジロー)騒動の発端
2022年7月、遭難者捜索サービスのココヘリを運営するAUTHENTIC JAPAN株式会社(オーセンティックジャパン)はjRO(ジロー:日本山岳救助機構)を子会社化し、ココヘリのサービスにジローの金銭的補助が加わり鬼に金棒と言える登山者向けサービスが誕生した。
問題はその後で、1年後の2023年6月にジローのサービスが変更になっていたのだ。知ってはいたが詳細まで気づかなかった人も多く、僕もその一人だ。この度一年の間をおいてSNS上で話題になっているというのがことの発端。
旧ココヘリと旧ジローの統合前
まずココヘリとジローの統合前のサービス(僕が認知している範囲)をざっくり説明する。
ココヘリ(旧)は会員が遭難し、行方不明となったとき、会員が身に着けている専用の発信機の電波を地上、または上空から受信器でキャッチし、位置を特定し、迅速な発見を実現するサービスだ。これはとても革新的なサービスである。3フライトまで無料で捜索ヘリを飛ばしてくれるサービスもあった。
ジロー(旧)は会員が山で遭難や怪我など救助が必要になった場合、それにかかる諸費用を550万円を上限に補填してくれるサービスだ。諸費用の中には家族の現場への駆けつけ費、ボランティアへの謝礼、遺体搬出費なども含まれ幅広くカバーされている。山岳保険的な要素で加入している人もいるが厳密には保険ではなく、共済組合というイメージだ。年会費とは別にその年に発生した会員の遭難件数に応じて事後分担金(数百円)が追加で負担となる。少額の費用を会員同士出し合うことでお互いの金銭的リスクを分散できるのが強みだ。
ココヘリとジローがひとつになった直後
ここまでは理解している人も多いと思うが、次に2022年7月の統合後、どうなったかをざっくりと説明する。
端的に言うとココヘリの捜索費をジローが550万円まで補填してくれるようになったのだ。旧ジローのみに入っていた人はココヘリの準会員という扱いになり特に変わらず(?)。ココヘリだけに入っていた人はジローのサービスが付帯されめちゃくちゃ恩恵が。ジローとココヘリ両方に入っていた人はあまり変わらないわけだが会費など窓口がまとめられ利便性が高まった!という具合だろう。
僕自身は元々両方に入っていたので便利でわかりやすくなったという感想だったが、他の人がどう感じていたかは推測だし会費など詳しくはわからないのでこの辺に関しては認識は多少間違っているかもしれない。とにかくここまでは理想的なサービスだと思っていた。
統合から約1年後、サービス内容が変わった!
ところが2023年6月から流れは変わり、新制度が生まれた。
ココヘリの会員捜索の仕組みは基本的にそのままだが、ココヘリが捜索機関の手配をしてくれるようになった。なので登山届を警察やココヘリに提出してるかどうかや、本人または家族がココヘリに事故の一報を入れたかどうかによって、ココヘリが動けなかったり、後述する自己負担金が発生したりするが、それは僕としては「まあそりゃそうだろう」という感想。ココヘリだって探すためには最低限の情報を把握していないと動けない。
ではジローのサービスがどうなったのか。端的に言うと新ジローは遭難費用の補填をするサービスではなく、ココヘリの提携機関による救助を上限550万円まで無償手配するサービスに変わった。今まではココヘリとジローの二本立てだったのが、ジローがココヘリの捜索をバックアップするようなサービスになったというべきか。つまりココヘリ(=ジロー)の提携機関(民間救助隊)が受信機を搭載したヘリコプター(もしくは地上)からの捜索(これをココヘリの役務範囲としている)を550万円まで行ってくれる。これは保険ではないので、一時的に建て替える必要も無いというのが大きなメリットとなる。
旧ココヘリと併用で旧ジローを山岳保険的に使っていた人は不利益あり
ここまでの内容だと、旧ジローに入っていなかった人にとってはサービスの拡充という印象がある。費用の建て替えや自分で民間救助機関の手配をしなくてもいいからだ。僕も良い事だと思いスルーしてしまっていた。
しかし、規約を詳しく見ると旧ジローに元から入っており、それを山岳保険のような目的利用していた人には問題があることがわかった。なぜなら、実はこの新制度、ココヘリの提携期間が行う救助(規約では「2次救助」と呼ぶ)での費用しか無償にならないのだ。これの意味するところは、ココヘリの提携機関以外の団体から救助をされたとき、その費用は補填されないということだ。例えば「遭難対策協議会(遭対協)」などは山小屋スタッフを中心とした常駐の救助隊だが、これもそれに該当することはココヘリの公式サイトに明文化されている。これらココヘリの役務範囲外の救助、つまり警察や遭対協が行う救助活動は「1次救助」という言葉で規約に記載がある。
遭対協に頼まずにココヘリと警察だけに動いてもらえばいいのでは?と思うが、そうはいかない。警察の捜索費用はもちろん無償だが、警察は一刻を争う場合は遭対協の協力を要請することがある。むしろ遭対協なくして迅速な救助は不可能なのではないかというくらい重要な存在だ。僕もこれ以上は詳しく知らないが、なぜこのように言えるのかというと旧ジローの救助レポートが物語っているからだ。
旧ジローがカバーしていた部分が一部無くなる形になった
旧ジローは、分担金のお知らせをする際にその年の救助と補填の実績をレポートにしてまとめてくれていた。ここにはどういう事故でどのように救助され、いくら費用がかかったのかが詳しく書かれている。ここでよく見るのが「遭対協(遭難対策防止協議会)により救助された」という文言である。
今ここではココヘリの話をしているので遭難=行方不明という前提を持ってしまいがちだが、行方不明にならなくても登山道上で怪我や病気で行動不能になる事例はいくらでもあることは旧ジローのレポートを見ればわかる。そして遭対協に救助された事例ではだいたい十数万~数十万円の費用がかかっており、それを旧ジローは補填してくれていたのだ。
ここからが問題だ。この「遭対協が助けてくれましたという事例」だとココヘリ(新ジロー)の提供する「2次救助」は提供される前に事が終わってしまうので、そもそもココヘリ(新ジロー)は保険ではないので救助費用を出す必要はなく、救助された人や家族の自己負担となってしまう。旧ジローがカバーしてくれていた「1次救助」の諸費用が出ないのだ。これは旧ジロー単体で見るとサービスの一部が無くなったと言える。これについて昨年の案内だけでは僕が気付かなかったことは反省。
一番不利なのはジローしか加入していないココヘリ準会員
もうお分かりかもしれないが一番メリットが無くなったのはジローにしか加入していないココヘリ準会員だ。捜索のサービスは提供されるがそれは「2次救助」だけだし、しかもココヘリ発信機を使用して捜索ができないので捜索の効率が悪くなる。旧ジローに期待していた恩恵は得られないと言えるだろう。
僕は正直、この準会員を全員正会員にするためにこの新制度をつくったとしか思えない。それくらい準会員でいつづけることは無意味だろう…。
ココヘリ自体は依然として恩恵が大きいサービス
しかし僕はこれでココヘリが使えなくなったとは全く思っていないので誤解のなきよう。むしろココヘリそのものはより使いやすくなったと思う。早まって脱会するのは違うと思う。
「一人で登山に行った夫が帰ってきません」という事例では当然ながら初手からココヘリが大いに活躍する。だが前提として登山届を出していること、警察と同じタイミングでココヘリにも通報しておくことが必要になるが、ココヘリに連絡さえすればこちらで手配する必要はないのだ。逆に連絡をしなければココヘリが動くことが出来ないのは当然。
当然警察にも通報しなくてはならないので、救助の初動では警察と遭対協、地元有志なども動くだろうが、ココヘリが事態を把握していれば提携機関が要救助者の電波を受信し、警察らと進んで連携して効率の良い捜索をしてくれる。そしてその際、ココヘリ側が動いた費用は上限までは無償で行われる。また、警察などの「1次救助」が打ち切りになった後もココヘリサイドでは上限までは無償で捜索を続けてくれるのだ。これは大きなメリットがある。たとえ遺体であったとしても見つかれば残された家族の負担を減らすことができるからだ。
山岳保険の検討とココヘリのこれからに期待
とはいえ、旧ジローに山岳保険的なメリットを感じていた人にとっては、「俺たちのジローが無くなってしまった!」という感覚だろう。1次救助の費用が自己負担になるからだ。なのでここを補いたいのであれば別途山岳保険に入るしかない。僕もこれからその検討に入るところなのでどうしたものかと思っている。これについて個人的に思うことは、旧ジローを吸収せずにそのままココヘリの年会費を上げてこのサービスの実現をして欲しかったものだが…。つまり旧ジローなくしてほしくはなかった。
最後に、ヤマレコの的場さんもおっしゃっていたし、ココヘリの会員向けメールにも書いてあったが、現在ココヘリは遭対協との関係を強化して「役務提供」が出来ることを目指しているとのこと。それにはめちゃくちゃ期待せずにはいられない。
おわり
2024年6月28日
この記事はブログ「絶対にマネをしてはいけない山歩き。」からの転載であるが、本人のものによるためパクリではないので悪しからず。