出ていったビート その2

夫が一生乗り続けると誓ったその車は
「スバル アルシオーネSVX」
その筋では人気の貴重な車で
とても人気があるというのだが
私には平べったくて乗りにくいとしか価値がない。

生産中止で、修理部品がなくなるからといって
ヤフオクなどで部品を買い漁っていた。
中にはバンバーやドア、エンジンなど
大きいものもある。
私が「車の取っ手みたいなの」と呼ぶ
後部につけるエアロパーツもあった。
これは他の人が別のパーツをつけるために入れ替えて
いらなくなったものを安く売っているのだそうだが
自分の車にはすでについているものをいったいどうするというのだろうか。

アルシオーネ以外にも
私の乗っている車のバンパーの予備が駐車場に置いてあった。
私がぶつけて擦ったらいつでも取り替えてくれるんだそうだ。
休みになると作業着を着て
坂をおりたところにある駐車場まで台車で部品や工具を運び
何往復もしながら車の整備をしていた。

外の倉庫もいっぱいになり、
外には置いておけないという部品や道具は
2階の納戸をいっぱいにし、
さらに子供部屋になるはずの6畳にも入り、
私は登りたくない見たくない屋根裏までいっぱいだった。

彼は宵っぱりで、夜中に作業をしていることも多い。
なるべく音を立てないものをしているらしいが
ガサゴソするたびに目が冷めることもある。
「屋根のある車庫があったら、
 夜中でも雨でも修理できるのにな」

5年ほど住んだ奈良の家は
家の横のカーポートの下で作業ができたので
収納が少なかったけれど、移動は少なくて快適だったらしい。
ドアを塗装して、付け替えたり
エンジンをまるごと替えていたこともあった。

アルシオーネのために駐車場も借りていたが
できたら部品取りのために、アルシオーネがもう一台欲しいという。
ちょっと調子の悪くなった電化製品を直したり、
床の傷を埋めて目立たなくしたり、
家の中のメンテナンスもしてくれるので
あまり文句は言えないのだが、
そのための「道具」や「部品」や「予備」が家の中に溢れていた。

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