場所で人を追う
皆さんは好きなテレビ番組はありますか?
「テレビ離れ」が進みつつある今、いろいろな番組が試行錯誤を重ねている。私は、noteでもたびたび書いているように、お笑いが大好きなので、バラエティ番組はよく見ている。録画一覧はほとんどがバラエティ番組で埋まるほどだ。
そんなバラエティばかり見ている私の心を捕まえた唯一のドキュメンタリー番組が、今回紹介したい『ドキュメント72時間』(NHK)である。
この番組は、NHK総合で毎週金曜午後10時45分から放送されている。
あるスポットに3日間(72時間)密着し、人々がそこに訪れる理由を通して、どんな人生を歩んできたのかを見つめるという番組である。
ドキュメンタリー番組といえば、どこかの第一線で活躍する特定人物を密着するというイメージがあるが、この番組が密着するのは「場所」なのである。だからこそ、多種多様な人が集まり、いろんな人生を垣間見ることが出来る。
どの回にもありとあらゆる人生があって、優劣などつけられないが、その中でも私が印象に残っている回を3つピックアップして紹介する。
「ガム当たった!」「クラス替えどうだった?」子どもたちのにぎやかな声が響くのは、神戸の下町・兵庫区にある駄菓子屋。10円玉を握りしめて、何を買うか考える女の子。共働きの親が帰ってくるまで店先で過ごす男の子。夜になると、かつて常連だった若者たちが、懐かしい時間に浸りにやってくる。駄菓子を食べて、ケンカして、また仲直りして成長していく。小さなようで奥深い「子どもの世界」にカメラを据えた。
子どもから大人まで、たくさんの人が訪れ、笑顔になって帰っていくこの場所。年齢で分断されずに、集えるここは、現代においてとても貴重な場所なのではないかと思えた。子どもたちをまちが育てる、そんな場所になり得ていると思った。
小さいころからお世話になっていたお店の方に、人生における重要な報告をする男性のシーンが強く印象に残っている。
あなたにとって、今も昔も変わらず訪れたいと思える場所はあるだろうか。訪れてきた場所に想いを馳せたくなるような回であった。
春、別れの季節。長崎県・五島列島の玄関口、福江島では、毎年風物詩となっている光景がある。島中の人々が集まって、島を出る人との別れを惜しむ、見送りの風景だ。就職・進学・結婚、さまざまな理由で島を離れる人たち。ターミナルのロビーで家族や同僚、同級生、教え子らと別れを惜しんで抱き合い、涙ながらに言葉を交わしてフェリーへ乗り込む。3月の終わり、新たな土地で新たな一歩を踏み出す人々を見つめる3日間。
色々な人が交錯するこの場所。前向きに笑顔で、寂しくて涙を浮かべて、手を振りながら去っていく人たち。それを言葉やパフォーマンスで見送る人たち。この場所が人生における重要な分岐点となっているようで、グッと胸が締め付けられた。
この回では、自分を救ってくれた看護師の先輩を涙ながらに見送る女性の話が印象深い。
人生が航海に例えられることもあるように、「船」という乗り物はやはりどこか特別なイメージがある。自分はどんな出会いや別れをしてきたっけ。改めて振り返ることができる回だった。
東京・初台に24時間急患が駆け込んでくる老舗の動物病院がある。開業は今から46年前。野良猫に襲われた犬、骨折したハムスター、交通事故にあった猫など首都圏全域から毎日100匹前後が運び込まれる。ペットブームと言われて久しい現在、目立つのは1匹の動物とじっくり寄り添う人の姿だという。認知症の犬を世話する主婦、23年間1匹の猫と暮らしてきた老人…。家族以上に強い絆で結ばれる、人と動物の物語。
正直、この回に関して深く内容は覚えていない。だけど、この番組を見るようになったのは偶然見かけたこの回からであり、見ながら衝撃で涙が止まらなくなったことはよく覚えている。オンデマンドも見つからなかった。またどこかでちゃんと見られないかな。
番組の内容に加えて、この番組のエンディングで流れるテーマソングが好きだ。寄り添うように、大人になった自分の複雑な気持ちをしっとりと歌い上げるこの曲。是非一度、聴いてみてほしい。
大人になってゆくほど 涙がよく出てしまうのは
1人で生きて行けるからだと信じて止まない
それでも淋しいのも知ってるから
あたたかい場所へ行こうよ
参照→ http://j-lyric.net/artist/a001cf0/l0095f3.html
冒頭のこの歌詞が、年齢を重ねるほどじんわりと胸に染みてくる。
いまこの世界で生きる誰かが自分と同様に人生を歩んでいるというその事実は忘れがちだけれど、しっかりと思い返したとき、世界が誰かの軌跡で溢れている事実にゾッとするほど怖くなることもある。あまりに重すぎて考えきれないから。だけど、誰かと共に生きていくなかで、その人に歩んできた人生が、これから歩む人生があることは忘れてはならないと思う。
そのことをはっきりと教えてくれたのはこの番組である。
この番組が好きな人とどの回が好き!とか語り合ってみたい。
今日は画像なしのテキストオンリー。
久々の更新に加えて長文駄文...。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。わたしからのスキを贈ります。
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