愛知県選管発表の「直接請求制度の運用に関する提案書」を読んでみる

はじめに

愛知県知事リコール騒動で、愛知県が署名調査の理由としていた、直接請求制度の見直し提言について、報告書が出されました
今回はこの記載内容について読み込んでみたいと思います。

なお、私自身もどうすればよいか?の考察のため、何があったのかを推論しながらここまで来ています。先入観が多分にあるので、一部の方からすると偏った評価と見えるかもしれませんが、ご容赦ください。

引用元

前提というかそういうもの

私が県のこの発表を心待ちにしていた一つの理由が、対策を論じるためには、発生事象を理解することが必要であり、逆説的に言えば論じられた対策から発生事象を推論できるのでは?と考えていたためです。

しかし残念ながら、今回の県の発表は、これまでの県のプレスリリースで出された事項について、半ば表面的な事項についての対策考察しかしていないように、私には見えてしまいました

また、一連の県含めた微妙な対応について、そこの微妙さには触れず、さらっと自己実施事項を正当化しているような表現もあり、その点はうーんとなってしまいました。

さておき、個別内容に行きましょう。

P4の序章部分

結局調査筆数は435,334筆となったまま。提出数として県が公表した435,231筆との齟齬は謎のままですね(;^_^A

1 委任届制度の再導入

これが最初に来ていて、かつ内容が残念なのが一番気になったところ。

事実認定記載が以下のようにあります。

・今回、愛知県選挙管理委員会が実施した調査において、選挙人名簿に登録されていない受任者により収集された署名が、有効と認められない署名のうち約 24 パーセントを占めていた。

で、その原因系として挙げているのが以下

・ こうしたことが実際に起きてしまった原因の一つとして、請求代表者が委任を行うに当たり、委任を受ける者が選挙人名簿に登録されているかどうかを確認できないことが挙げられる。

これは、請求代表者が、意図せず選挙人名簿に登録されていない人を受任者にしてしまったと原因推定していると読めます。
が、死者やらなんやら言っていた事象や、数量からしてそんなケースは稀ではないのか?(推定)

受任者が選挙人名簿に無かったケースについて、どういう「名簿に無い」人だったのかの考察が全くありません(わかっていないのか、調査していないのか、意図して気づかないふりしているのかは不明)。

意図せず選挙人名簿から外れるケースは、結構レアじゃないかなぁ・・・
もしも本当にそういうケースであれば、提案内容もアリとは思います。

一方で、不正意図で架空氏名住所や実在氏名住所を代筆等で実施する場合には、受任者事前登録は、市区町村選管の手間が増えるだけで効果は薄いと私は考えます。

2 署名収集者の署名の義務付け

これはおおむね同意。ただ、もっとシンプルに、請求代表者収集時も、どの請求代表者が集めたものかを記載すべし、でよいと思う。
ここに、受任者でも請求代表者でもない「収集者」なるものを登場させることそのものが、法令の意図することを読み違えているように感じました。

さらに言えば、1人以上とかぬるい事を言わず、1名のみ書かせて、その署名簿の収集時責任者は受任者or記載請求代表者にすればよいかと思います。

3 署名簿の調査権限の付与

これ、視点によっては微妙すぎる記載方法と感じた事項。

・現行の直接請求制度において、仮提出された署名簿の内容を調査することができる旨の明文の規定はないが、地方自治法第 245 条の 4 第 1 項の規定を根拠として調査の依頼を行ったところである。

法令に無いけど、自分たちの調査指示は問題ないと暗に表現しているように見えたのは、私の思い込みが強いからかも。

この前提として、提出署名簿の所有の帰属問題、及び情報公開請求の対象となる行政文書に該当するのか?の課題設定をすっ飛ばしています
まぁ県からすると、その点の問題はない、との認識なのでしょう。

また、この提案については実行においては、調査要否をどう判断する?などの課題が大きい。その点もあまり触れていないのは、自己の行為正当化するために…というのは、私の先入観でしょうね。

4 請求代表者に係る総代制度の導入

これは全く同意。過去も途中で請求代表者が辞任した事例やら、一部の請求代表者が委任した署名簿について、当該請求代表者が途中で辞任した場合の有効性の話など、いろいろ課題感あり。責任者を明確にするという意味合いでは、有効な手立てと思います。

5 署名簿の取扱責任者の指定

これもまた、事実誤認というか歪曲というか、間違ってないが一部マスキングというか…を感じられる事項。

・現行の直接請求制度においては、仮提出された署名簿が本提出に至らなかった場合に、当該署名簿を請求代表者に返付する旨の法令上の規定はない。

これ、法令はないのですが、数量に満たず提出された場合は、それを理由として審査せず返還せよという通達は出ています。地方自治法実例集というやつです(手元コピーたどり寄せるのが面倒なので、過去Note参考)。

ただ一方で、以下文面はたしかにそうだな、と思う部分あり。

当該署名簿は請求代表者に返付すべきものと考えるが、請求代表者全員の総意が得られない場合において、各市区町村選挙管理委員会は誰に対して署名簿を返付すべきかなど、今後の対応に苦慮することが想定される。

この導入部分がすこし気になるものの、提案事項はおおむね同意です。

6 署名権者等の早期確定

これ、分母たる選挙人名簿人数が確定しないと必要数が出せない、という問題と、署名者が署名権者たるのは、署名時点か審査時点かという課題をごっちゃにしている感あり。
そうでないとみても、完全に選管サイドの要望に見える

従前では、審査時に選挙人名簿に無くとも、転出届や転入届の確認などをして、署名時点でどうだったかのチェックをさせる取扱い規定となっていた。ようはこの追跡調査をやめたい、とも読めてしまう。

ただ一方で、確かに署名時点では有権者でも、署名期間中に引っ越したらどうなる?という課題感もあり。県内他市区町村引越しの場合、県外の場合などケースによって課題も変わる。その面も踏まえている…ようには見えないなぁ・・・。

7 縦覧制度のあり方

個人的には重要な事項。提案切り出したことは評価。ただ少し薄い。

ここでいう「氏名のみを見せる」は、有効無効含めて見せる事だろうが、仮に事故の署名が無効判定とされていた場合、その住所氏名やらの確認が取れないと、自己の記載したことを証明することが困難にならないか?結構難しい問題。

個人的には、「関係人に」縦覧させるの「関係人」の定義の明確化・公報活動もやってほしい。


終わりに

とりあえずざざっと書いてみた。

また気づいたことあれば、随時追記修正していきたいと思います。

皆様はどう感じられましたか?

今回はこれぐらいで。




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