名古屋市議会解散請求をふりかえる その7(署名簿流出報道等)

はじめに

愛知県知事リコール活動のゴタゴタを考えるために、約10年前の名古屋市議会解散請求の振り返りを行っています。今回はその7。リコール解散選挙後に浮上した署名簿等の流出報道等を受けてのやりとりをふりかえります。

平成23年(2011年)4月11日記事

名古屋市の河村たかし市長が主導して昨年夏に実施されたリコール(議会の解散請求)運動で集まった署名簿が電子データとして保管され、外部に流出した疑いがあることが11日、分かった。一部は、3月の出直し市議選で市長側の地域政党「減税日本」から出馬した候補者らが選挙で利用したとされる。

まずこのタイミングで、電子化された名簿の使用疑義が出ます。
ただ、注意いただきたいのは、リコール署名で集めた情報を政治活動に使用するのはグレーであること。真っ黒ではなく、いくつか条件クリアでより白くなる、という形でしょうかね。

平成23年  6月 定例会 06月29日-12号

東郷哲也議員

(前略)
 何でも日本一がお好きな河村市長は、政令市では初めてという歴史的快挙とも言えるリコールを成功させ、出直し市議選においては、圧倒的な民意を得て28議席を獲得し、減税日本ナゴヤが第1党に躍進しました。河村市長の気さくな人柄や庶民性だけでなく、市長の改革をぶれずに貫く姿勢や、破壊力、カリスマ性に多くの市民が熱狂し、議会改革への期待を一身に集めました。
 しかしながら、わずか3カ月余りで、今や幻滅日本とやゆされるほどそのほころびが次々と出て、市民の期待を裏切るような不祥事が相次いでいることは、まだ全員が1年生で、議会ルールなど右も左もわからないといったことを寛容しても、社会人としての常識すら疑わざるを得ません。
 そこで、まず、リコール署名簿の流出に関する問題についてお伺いをいたします。
 4月11日の毎日新聞によると、河村市長が主導した市議会解散請求において、市長の支援団体ネットワーク河村市長が集めた署名簿がスキャナーでコピーされ、減税日本ナゴヤの公認漏れした無所属の候補者らに流出したとのことであります。
 個人情報保護法では、政治活動に関連した名簿は規制の対象外であり、違法ではないが、これまで団体側は目的外使用はしないと再三言ってきました。河村市長は、この問題が発覚後に会見で、署名簿提出前の昨年10月ごろに、署名簿について事務所でスキャナーで取り込まれ、電子データ化されるのを見たと、コピーの存在を認識していた点をお認めになっています。その後、会期中であることや、選挙対応の多忙を理由に、4月26日の衆院6区の補選後に調査をするとしていました。
 そこでお聞きしますが、それから2カ月余りがたった現時点においても、この件に関して、いまだ調査結果の公表がなされておりませんが、まずはどのような方法で、どのような結果であったのかお答えをください。
(後略)

河村たかし名古屋市長

 まず、リコール署名簿の件についてでございますけど、それから、請求代表人の中で名簿管理委員会というのがつくられておりまして、その方にこのことをきちっと報告してくださいよと申し上げまして、確認しましたところ、区をまたいだ署名や内容の不備などへの対応のためにコピーをしたが、流出した事実については確認できないということでございまして、私も流出の事実については確認しておりません。そういうことでございます。
 コピー自体は、これは選管に聞いていただければいいんですけど、これは別に合法的なことでございます。あと、適法に使うというルールがあるだけでございまして、そういうところで私は申し上げてきましたけど、責任者に確認したら、そういう返事でございました。
(後略)

東郷哲也議員

(前略)
 今、大体一通り答弁をいただきました。順番にお聞きしていきますけれども、まず、リコールの署名簿でありますが、要は今の答弁を聞いて納得した市民が何人いますか。結局やっていないということじゃないですか。
 署名活動の中心になっておられた方、その中に名簿管理委員というのがいた。この人に聞いてどうするんですか。あなたが責任を持って調査する。やるやると言って、結局やらない。
(中略)
 大体、適法に管理していて、これでよしとするのであれば、確かに個人情報保護法という壁があります。こういった適用除外だからいいというものじゃないでしょう。印影だとか、指紋がデータベース化されているんですよ、この新聞記事とかによりますと。こんな指紋のデータベースなんて犯罪者しか、こんなものは扱っていないんですよ。
 今、ここに、4月28日、毎日新聞の記事がございます。署名者のはがき、これを読みますと、名簿の流出というのが、ここに河村市長の選挙、それと、大村知事の選挙のいわゆる選挙はがきに対して、これを受け取った方、瑞穂区内の男性、84歳の方、この方にそれぞれ同一シールで、しかも、あて名の字体、こういったものもすべて一緒のものが送られていると書いてあります。推薦者の欄には、ここにいる議場の瑞穂区の議員2人の名前も連なっているわけです。そうした中で、こういった事実が現に出てきているんですよ、4月28日。あなたは、4月26日に調査を開始すると言った。こういったものを調査したんですか。お答えください。

河村たかし市長

 その方に直に当たれませんし、それから、もう一つ、中部経済新聞に出た方につきましては、直接電話をかけまして、いろいろお聞きはしました。ですけど、本当に流出した原簿が今のところ出てきておりません。ですから、推測では申し上げられないし。
 それと、もう一つあるのは、どういう状況かわかりませんけど、受任者が本部に持ってくる前にコピーしたのも相当あるということは聞いております。これは、やっぱり受任者の皆さんも、自分が集めた人を知りたかったという話は聞いておりまして、そのことについては、これはまた把握はできないという状況でございます。

東郷哲也議員

 ここで、名前は言いませんけど、あなたは党首なんですから、減税日本の。聞けばいいじゃないですか、議員を呼んで。この名簿が同一シールで出てきた、どうしたことだ。
 これが名簿の流出、目的外使用ですよね。明らかにリコールのための署名で集めたものが、市長選挙と知事選挙、百歩譲って、市長選挙は市議会改革のためなら許しましょう。知事選挙にも使われているんですよ。
(後略)

ここまででわかった事

・4/11毎日新聞記事にて、署名簿流出疑義の記事
・市長選挙と知事選挙で、当該情報が使用された模様

あと、真偽不明ですが

・受任者がコピーしていたケースがある模様

一旦、議事録確認を続けます。

平成23年  9月 定例会 09月14日-19号

東郷哲也議員

(略)
 次に、署名簿の流出でありますが、6月定例議会で私の同様の質問に対して、河村市長は再調査するとの答弁をされておりました。仄聞するところによると、ぶら下がりの会見の席で記者からの問いに対して、ようわからぬかった、あとは請求代表者に聞いてくれと投げやりで、自分は全く関係ないとの、調査結果の公表について、改革派の河村市長さんらしくない、歯切れの悪い消極的な姿勢だったというようにお伺いをしております。
 この問題は、インターネット上で4万人もの大量の個人情報が流出するという事態となっておりますが、まずはどのような調査を行ったのか、よくメモしておいてください--いつ、どこで、だれに対して行ったのか。具体的に、そして、その結果どうであったのか、お答えをいただきたいと思います。
 また、今回、ネット上に氏名や住所だけでなく、生年月日や押印、拇印まである署名簿が流出していますが、今も不特定多数の第三者が簡単に入手できる状態となっております。犯罪に利用される危険性もありますが、このまま放置しておくのか、名古屋市としてどういう対応をされるお考えか、お答えください。
 そして、この名簿は、ちょうど昨年の今ごろ、河村市長が主導して集められておりましたが、市長さん御自身の責任をどう認識しているのか。
 以上、3点について、誠実に、的確に御答弁をお願いします

河村たかし市長

 まず、署名簿の流出問題について、いつ、どこで、だれに調査をということですが、これは電話と、それから、実際会って話をしまして、その前提として、署名運動というのは1個の法的な制度でございまして、そこには請求代表者としてきちっとした責任といいますか、制度があるものですから、僕もちょっと考えましたけど、やっぱり請求代表者の中の2人が特に中心になってやっておられましたので、その人にしっかりやってくださいよということで何遍も申し上げております。名前をだれと言いますけど、名前を言いますのは、やっぱり議会でございますので、別に隠しておるわけじゃありませんけど、ちょっと遠慮させていただきたいと思います。
 それから、放置するのかにつきましては、まことに申しわけないことだと思っておりまして、私もこれは、今、被害者として警察に、それと変な怪文書が出ておりまして、マスコミに、それも事実と全く違ったことが書いてありますので、私のことも含め、それから、この名簿の請求代表者、それから、何人かの方が調査委員会をちゃんとつくって、今警察と鋭意相談しておるというところでございます。
 市長の責任についてですが、精いっぱいやってまいりましたけれども、こういう格好で、4万人の方ですか、出たということは、まことに申しわけないというふうに思っております。

(途中省略)

東郷哲也議員

(略)
 もう一つ、リコールの署名簿でありますが、まず1点、選挙管理委員長に確認の意味でお伺いしたいと思いますが、この署名簿、私の手元に、今、CDであります。一部打ち出したものが原本と思われますけれども、まず、この署名簿、流出したものが本物であるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

選挙管理委員会委員長(山田將文)

 インターネット上に公開された署名簿についてお尋ねをいただきました。
 お尋ねの署名簿は、署名番号の記載がないことから、請求代表者から選挙管理委員会に提出される前の署名収集の段階のものと思われますが、署名簿の様式を見る限りでは、本物である可能性はあると思います。
 以上でございます。

東郷哲也君

 今、この署名簿、本物だというお答えをいただきました。
 河村市長さん、この名簿、今、当事者じゃない、被害者みたいな言い方で警察と協議をされているとおっしゃいました。あなたが去年、ちょうど今ごろ、集めろと言って、市民に対して、こうやってリコールの署名を先導したわけであります。そして、目的外使用をしない、こんなことをずっと言ってきた。6月議会でも再調査を行うと言った。そして、結局請求代表者2人に聞いたというだけで、これが本当に調査なのか。
 なぜあのとき、僕は6月に言いましたけれども、減税所属議員、聞かないんですか。本来であれば、4万人の名簿が流出しているということは、企業でいえば、例えばこんなことは外部調査委員会がきちっとできて、弁護士や有識者を入れて、調査結果を報告する。当たり前じゃないですか。そして、処分をしっかりする、あなたの責任も含めてですよ。企業の社長だったら、こんなことは引責辞任ですよ。そのぐらいの名簿の重さがあると思います。
 そして、この個人情報、本物だって言います。ここにあるんですよ。簡単に私はダウンロードできた。4万人の名簿が今もたなざらしになって危険にさらされている。悪徳業者に渡るかもしれない、あるいは振り込め詐欺みたいなこういった犯罪利用される可能性も起こっている。これを請求代表者のせいにして、市として何も講じないのか。この辺、市長さんの認識をもう一度お伺いしたいと思います。端的にお答えください。

河村たかし名古屋市長

 それは、私もきちっとやらないかぬということですが、実際に署名運動というのは、請求代表者という仕組みがちゃんと法的に、明確に定まっておって、その責任においてというか、そういうものなんですね。私がいろいろいろんな意味で声をかけたことも事実でございますけど、請求代表者の皆さんにお願いするというのがそうなので、それは何遍もくどいぐらい言ってまいりましたけど、なかなか発見されなかったということで、今回こういうことになりましたものですから、どういう経緯でそうなったのかについては、今、相当、この間もちょっと聞きましたけど、調査が進んでおって、同時に警察にも申し上げておるという状況でございます。

東郷哲也議員

 先ほどから、交通局長や総務局長が謝っていますけど、一番謝らなきゃいけないのはあなたでしょう。
 この名簿ですけど、4万人の北区で収集された名簿、一例ですけれども、北区の名簿、県会議員の選挙において、ある候補者の陣営に、この名簿を買わないかとの話があったと聞いております。このデータをインターネット上に流出させた人物かどうかは特定できませんけれども、複数の関係者から、私が聞いた限りでは、署名簿の収集をめぐって内部で不満を抱く者からのあるという、こういう証言を受けております。
 この名簿、選挙で利用する。これはもう目的外使用だと思います。これが犯罪に利用される可能性が、さっきから言っているようにあるんですよ。市民がこのまま危険な状態にさらされている。そしたら、あなた、どういう責任をとるんだ。そういう思いでいますが、再調査を行うということですから、これは6月に、あなた、やるやると言っていて、今日5カ月たって、問題が発覚してから5カ月たってやっていないんですよ。
 だから、ここで最後に1点だけちょっと確認しますが、この名簿、一部散見したところによりますと、同一筆跡による署名が何件も見られるんです。もちろん、署名の審査や縦覧を経ておりますが、不正署名は明確な自治法に抵触する違法行為であります。今後、この署名簿を検証していくことをあなた自身がお考えになっているか、あるいはまた、仮に替え玉や組織的な不正の関与が発覚した場合、どのような責任をとる覚悟があるか、最後にお答えいただきたいと思います。

河村たかし名古屋市長

 それは選管がきちっとやっておられることなので、そういう違法な署名はいかぬと思いますよ。

東郷哲也議員

 全然答えになっていないと思いますが、ちょっと時間がありません。今、大変こういったゆゆしき問題、このまま放置しておく、そして、これが、今後、あなた、自分で警察に告訴するとか、こういった検討をされているというようなことを先ほど言っていましたけれども、果たして、本当にこの問題がもっともっと真相の深い--リコール自体をどうこう言うつもりは今さらありません。ただ、民主主義の根幹を揺るがす大きな問題でありますから、しっかりと検証していただく、我々がそういう思いで、今、これからしっかりとやっていきたいと思っております。あなた自身も、そういうことを肝に銘じて、これからの仕事に当たっていただきたいと思います。ありがとうございます。(拍手)

ここまででわかった事

・インターネット上に名簿が流出した
・東郷議員はそれをCDに焼いた
・当該名簿は選管提出前のものである

疑義レベル(信憑性は大小ありますが)のもの

・とある減税日本議員が名簿を使った
・北区でこの名簿を使わないかと持ち掛けられた人がいた
・名簿中に、同一筆跡の者がある

そして以下の2012年3月まで、署名簿流出、および同一筆跡署名の話題は出てきません。

平成24年(2012年)3月28日記事

 河村たかし名古屋市長が2010年夏に主導した市議会解散のリコール運動で集められた署名簿の一部が、インターネット上に流出した問題で、河村氏は28日、減税日本代表として記者会見し、リコールの事務作業を取り仕切った60代の会社社長の男性が署名簿をコピーし、市議選の候補者に渡していたと発表した。
(略)
会社社長の男性は「選挙活動に署名簿を使わせてあげたかった」と話しているが、インターネット上に流出した経緯については分からなかったという。

ちなみに、名古屋市会は以下のような決議文を出しています。

名古屋市会は、名古屋市議会の解散請求に係る署名簿及び受任者名簿を選挙活動に使用しないことを確認するものである。
以上、決議する。
平成25年12月6日

ちなみに、減税日本の当時のプレスリリースは魚拓にあります。

[判明した事実]
・リコール署名活動において事務作業をとりまとめていた A 氏が市議選候補者に署名簿を渡していた。渡した時期は候補者によってまちまちで平成 22 年 11 月~23 年 2 月。
・A 氏が署名簿を渡した候補者は減税日本公認 10 名(内当選8名)、非公認 3 名(内当選 0 名)であった。
・A 氏が署名簿を渡した理由は減税日本の公認の有無にかかわらずリコール運動に係わった候補者には署名簿を使わせてあげたいというものだった。
・減税日本公認候補のうち1名が署名簿を元に後援会入会案内を送るなど選挙に使用していた。
・北区の署名簿データをある党の国会議員事務所や県会議員事務所(北区選挙区)に買わないかと持ち込んだ人(B 氏)がいた。

まとめと私見

以降の委員会議事等でも、署名簿の選挙利用良否(特に大村知事選挙や他国政選挙等)などの議論はされています。
しかし、同一筆跡署名発言は、定例会1回のみ。以降の議員追及もありません。

しかしながら、当時の署名簿は選挙活動で使用され、更に残念なことにインターネット上へ流出や、売買に用いようとした輩がいたようです。

一方で、以降の委員会議事録を見ていると、「政治目的で名簿を使用するためには、そもそも名簿保有団体が政治団体でないといけない」等の発言もありました。ただし、当方読みの個人情報保護法では、そこまでの規定はなかったような。。。

また、名簿の使用に関しての問題の出し方、提起の仕方がぶれまくりです。

①目的外使用そのもの
②市と関係ない選挙(知事選挙)に用いたこと
③政治団体でない団体が政治活動に用いたこと


などなど、一見まともそうに見えつつも、グレー領域をあおって黒に見せかけているようにも見えます。
おそらく、このあたりの文面の読み方・感じ方は人によって大きく振れるかなと推察します。

加えて、同一筆跡問題
正直、のちに議員達は10年後の今の愛知県知事リコールに至るまで、話題にしていない事も不可思議です。
また、選管の審査・縦覧を経た署名簿の中の、「多数ある」と言っているのが具体的にいくつなのか、どれぐらいの割合なのかが全く不明
私は、正直怪情報の域を出ないと現時点では判断しています。
まぁこの部分も、人によって大きく振れる内容とは思いますが。

ちょっとまとめになっていませんが、また頭を整理して、必要に応じて加筆修正したいと思います。


皆様はどう感じられましたか?

今回はこれぐらいで。

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