J2 第30節 vsモンテディオ山形
※カバー写真は、なおきさん(Twitter:@Naaaokiii_11 )よりお借りしました。
ビジター席未設置ということでDAZN観戦となったこの試合。
試合前の16時ごろ僕は仮眠をとった。起きたら0時38分だった。そんなばかな…
スマホの時計が壊れたのかと思いつつ恐る恐るスポナビで結果を見る。
山形 0-2 京都 ……そんなばかな。
1.試合情報
2021年9月18日(土) 19:00 KickOff
明治安田生命J2リーグ 第30節
NDソフトスタジアム
モンテディオ山形 0-2 京都サンガ
得点者:宮吉拓実(44分・京都)、三沢直人(60分・京都)
【スタメン】
【選手交代】
◇山形
71分:樺山諒乃介→マルティノス、山田康太→木戸皓貴
82分:ヴィニシウスアラウージョ→林誠道
◇京都
46分:荒木大吾→武田将平
53分:福岡慎平→三沢直人
71分:荻原拓也→本多勇喜、宮吉拓実→白井康介
84分:飯田貴敬→イスマイラ
2.戦評
序盤から互いのゴール前を行き来して決定機を作る、文字通りスリリングな試合展開だった。
「お互いのストロングポイントが出た、非常に良い試合だった」「たまたま我々が勝ちましたが」(曺貴裁監督)(京都サンガ公式HP より引用)
前半3分のヴィニシウスのシュートをバイスがゴールライン上でクリアしたシーンや、前半43分の5対2という圧倒的な数的優位のカウンターで山田康太が放ったミドルシュートをGK若原がはじくシーンなど、山形からするとこの一本を決めていればという場面はいくつもあった。
山田康太のミドルシュートのこぼれ球が得点に直結するカウンター返しとなったことなどが「京都がワンチャンスをものにして勝ったゲーム」という評価に繋がったのだろう。
しかし京都は一瞬たりとも集中力を切らさず、時には体を投げ出して、最後まで全員でピンチをしのいだ。
「我々のペナルティエリアでの守備が今日は非常に良かったと思います」(曺貴裁監督)(京都サンガ公式HP より引用)
我慢して作ったチャンスを、ウタカと宮吉のカウンターで仕留めて1点。後半には右サイドでの華麗な崩しから三沢がミドルシュートを決めて追加点。
試合の流れをぶった斬る2ゴールで京都の勝利。
試合内容自体は概ね山形のペースとの見方が強いが、京都側も攻撃で良さを出したうえでの0-2というスコアと京都ディフェンス陣の集中力の高さを踏まえると案外妥当な結果に落ち着いたのではないだろうか。
この試合の面白かったポイントは京都のプレス対山形のビルドアップの点である。
前半は京都のプレスが無効化され、後半は山形がビルドアップで苦しむシーンが見られた。そこをメインテーマとして取り扱おうと思う。
3.前半 〜数的不利の中盤〜
◇両チームの特徴
京都のプレッシングの特徴は以下の通りである。
「守備時の形は433。前線3人は相手DFラインの中間ポジションに立ち追い込みをかける。そうしてボールを片側に誘導したところで、3センターの選手がボールサイドに寄せ、マンマークによってボールの出しどころを消す。 SBの選手がマーク を捨て前に踏み込みボールに寄せることもある。」
(2021年 チーム分析 京都サンガ 〜秩序のあるカオス 矛盾への挑戦〜 より引用)
ひとつ付け加えておくと、最終ラインでの横パスやバックパスに合わせてプレスのスイッチを入れることが多い。
山形は相手の嫌がるポジションを取り後ろからパスを繋いで攻めてくるチームだ。
具体的に言えば、後方でのビルドアップでは常にフリーの選手をどこかに作っておく。中盤で数的優位を作り出し、フリーの選手を使って中盤を突破したところで一気にスピードアップ。相手が守備対応で空けたスペースやフリーになった選手を使って速い攻撃でゴールを目指す、という攻撃だ。
ポジショニングとパスで相手を剥がしながら進めるという部分はポジショナルな攻撃であるが、ゴール前の最終局面ではスピードを落とさずにゴールに迫れるかが鍵となっている。
というのも前線の選手のクオリティがJ2上位クラブと比較すると劣るからだろう。やはり札束は偉大だということがわかる。
◇偽サイドバック吉田朋泰による数的優位
山形がボールを持った時の大まかな陣形は下図のようになる。
ポイントは中盤の枚数差と山形のSHの立ち位置である。
山形は左SBの吉田が内側に絞って3センターの脇あたりにポジションを取る。さらに2トップの一角の山田康太とボランチの藤田がトップ下のようなポジショニングをする。最終ラインは3枚になり京都の3トップと枚数が噛み合う形になるが、ウタカの運動量の少なさや京都のプレススイッチを踏まえた上での戦術だろう、ウタカが南へのパスコースを切ってもそれを上回る動きでマークを外してボールを受ける。
3センターの1人が南にプレッシャーをかけようとするが3センターに対して山形は4人を中盤に配置しており、そのためプレッシャーをかけにくくなっている。
さらにサイドの攻防を見てみると山形の両SHが外に張ることで京都のSBが中盤を助けることが出来なくなっている。
こうして山形は早い段階で南にボールを預けて起点にし、中盤のフリーの選手を使うことで京都陣内に攻め入ってきた。フリーの選手がボールを持ち運ぶのにあわせて、中盤から人が飛び出してきて攻撃に厚みをもたらす設計になっている。
3トップがプレスをかける前に南にパスが入って前を向かれ、インサイドレーンの左SB吉田に前向きにボールを運ばれたのが立ち上がりのヴィニシウスのシュートになった。
右サイドでも山田拓巳が同様の立ち位置から前に運ぶシーンがあった。
改めて要点をまとめると
①偽サイドバックを使って中盤に数的優位を作る
②SHが外に開いて相手のSBが中盤のサポートに行くのを防ぐ(ピン留め)
③フリーのアンカーに早い段階でパスを送り、前を向いて攻撃開始
となる。
◇飲水タイム後の京都の修正
福岡をトップ下に置き、フォーメーションを4231に変更。
福岡が相手のアンカー南をマークすることで中央からの攻撃をケアする。
さらに両サイドの宮吉と荒木をやや下げることで4411で対応しつつ可能な範囲でプレッシングを行うようになる。
その結果山形の攻撃ルートを外に誘導することに成功。押し込まれはするものの、福岡が44ブロックの前にいるので、ボランチを使った展開や横パスに対応する時のリスクを最小限に抑えて受けきれるようになった。
サイドは飯田・宮吉、荻原・荒木で対応。CBとSBの間のスペースは川崎や松田が下がり、それによって空いた中盤のスペースは福岡が落ちる。
4411→541→5311→4411といったふうに連動して陣形変え、スペースを埋めて山形を迎撃した。
4.後半〜スペースに誘導するプレス〜
京都は後半から荒木に代えて武田を投入。
武田を左IHに、松田を左WG置く433に布陣を戻す。
山形はアンカーがマークされていたため、後半から藤田も下がって2ボランチの形でビルドアップを試みた。
京都のプレスは、主に山形ゴールキック等の低い位置からのビルドアップに対して変化を見せた。
①宮吉が左SB吉田をマーク
②ウタカが野田→南のパスコースを消す
③松田が中間ポジションをとり山崎をケアしつつサイドチェンジも警戒
④IHが2ボランチをマークし川崎がその背後のスペースをケア
⑤左CB野田にボールを持たせ、そのボールの行き先に応じてプレスをかける
基本的に山形の右SB山田拓巳は一応フリーの状態である。
京都の左サイド(山形の右サイド、山田拓巳の前方)には大きなスペースが存在する。
京都は山形のビルドアップをそのスペースに誘導し、右SB山田拓巳に対してアプローチをかけることでボール奪取を試みた。
①野田→山崎のCB間の横パスに松田がプレス
②武田が山田拓巳にプレッシャーをかけ、福岡(三沢)が空いたボランチにスライドして対応
③武田が中央へのコースを切りながら山田拓巳に寄せる
④山田拓巳→縦へのボールは荻原が、中央へのボールは福岡や川崎でカット
ボール奪取は以下の2パターンが主だった。
●パターン1:山田拓巳からの縦パスをカット
サイドに張っていたSH中原が下がってボールを受けようとしたとき。
●パターン2:山田拓巳からの中央へのパスをカット
ボランチの藤田やトップ下の山田康太が動き直して山田拓巳からパスを受けようとしたとき。
これによって生まれたショートカウンターが63分のウタカのシュートである。
特定のエリアを封鎖、誘導するエリアを限定することで山形の得意な攻撃をほぼ完全にシャットアウト。
ただ野田→山田拓巳といったひとつ飛ばすパスによってフリーでボールを受けられた場合は山田拓巳に運ばれることとなった。
限定されたエリアからの突破を許した場合は武田や川崎がすぐさまプレスバック。他の選手も中央のコースを消しながら戻ってブロックを形成し山形の攻撃に対応した。
「少しプレスの形を変えたら相手のビルドアップの立ち位置をうまく消しながらボー ルを奪えるのではないかという狙いがあったからです。それが少しうまくいった場面が何度かあったと思います。」(曺貴裁)(京都サンガ公式HP より引用)
前半よりも前で奪う回数が増えただけでなく、簡単に京都ゴール前まで攻め込まれるというシーンも多少減った。
三沢のゴールで0-2とリードを奪ってからは、ミドルゾーン(中盤あたり)でプレスをかけつつもかわされたらリトリート(撤退)して相手の攻撃を受けるというなんとも潔い戦い方に。
試合終了まで集中力を切らさず守りきって、クリーンシートでの勝利を掴んだ。
5.クローザー・イスマイラ
京都サンガ加入後、6試合(全て途中出場)で3ゴールをあげているイスマイラ。身体能力の高さや土壇場で決める勝負強さに加えて、献身的にボールを追うプレーも魅力の選手である。
が、この試合では最も求められていた献身性を欠くプレーが目立った。
彼の役割はボールを運んだり、キープしてカウンターに繋げたりすることだけでない。前線からプレッシャーをかけ続けることで相手の自由と選択肢を奪い、後方の味方が少しでも楽に守れるようにすることだ。
役割をどこまで理解していたのかはわからないが少なくともプレーはそれとは程遠かった。プレスのかけ始めが遅く簡単に剥がされる。剥がされた後に2度追い、3度追いするような姿勢も見られない。ならばと少しでも下がってスペースを埋めるようなこともほとんどなく。
起用法からしてこれから先、長い間チームに貢献できるようにしようという意図は見て取れる。
辛辣なようだが、彼のプレーがこうも怠慢では話にならないしはっきりいって起用自体が失敗だったと言わざるを得ない。飯田を休ませるだけの交代でしかなく、それならば他の選手でも良かったとなる。
できるできないだけでなく、理解しているか、理解していることを示す姿勢があるか。
試合の強度が高くて試合に入れなかったというほどでもなかろう。
チームスタイルが明確な以上、彼に限らずこういうところは露呈しやすいものなので、試合に入るメンタルを十分に作ってほしい。
6.最後に
試合前(寝る前)までは勝ったとしても1-2、2-3などの打ち合いになると思っていたが予想の上をいくクリーンシート(無失点)という結果に。
相手に判断ミスがあったり三沢のシュートのディフレクションがゴールに吸い込まれたりと運も味方し、前回のレビューで課題に挙げていた守備の集中力という点で大きな収穫を得られ、結果的に素晴らしい勝ち点3になったと思う。
他の上位陣が勝ち点を取りこぼす試合が増えてきた中でもなんとか結果を出せるあたり、今年の京都は強いなと思うばかりである。
しかし残念なことに、バイス・麻田のCBコンビが揃いも揃って警告累積3枚、つまり出場停止にリーチがかかっている。二人とも出場時間が長いので有給休暇を取得するのは構わないが、二人仲良く有休取得だけはやめていただきたい。
今回は珍しくやる気を出してみました。たまにはこんな回があってもいいよねと。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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