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【備忘録】2020シーズン 京都サンガ

明治安田生命J2リーグ 2020シーズン
8位 16勝11分15敗 勝点59 得点47 失点45 得失点差+2

これが今季の京都サンガの成績である。

ちなみに昨季(2019シーズン)は

明治安田生命J2リーグ 2019シーズン
8位 19勝11分12敗 勝点68 得点59 失点56 得失点差+3

最終節の1-13込みでこの結果。

リーグ戦の中断、超過密日程、12月中旬まで行われたシーズン…

異例だらけの2020シーズンを終えて22チーム中8位。

決して悪くはない。なんならJ2で旋風を巻き起こした昨季に並ぶ順位である。

しかしなぜか後味の悪いシーズンなのだ。

第1章 補強は100点

2020年、柏という暴君が去り、多くのストライカーがJ1へと旅立った上、ウタカやバイスといったスーパー助っ人を招き入れた京都サンガ。

J2やJ1のレギュラークラス、元日本代表選手らも補強に名を連ねた。

大型補強で目指すはもちろんJ2優勝、そしてJ1昇格であった。

2019年に猛威を奮った3トップが抜けたとはいえ、他の主力は残留。陣容を見ればJ2でも上位クラスであった。

どこまでが監督の望むところか分かりかねるが、これだけの駒を目の前に置かれたならば「補強は100点!」と笑みを浮かべるのも無理はない。

第2章 蓋を開けたらあら不思議

新チームが始動して以降、私はキャンプ前の紅白戦、キャンプ後のトレーニングマッチ(以下TM)2試合、そして新スタジアムの杮落とし(vsC大阪)を観戦した。

2019年に主に取り組んでいた433のフォーメーションに加え、3421にも時間を割いてチーム作りをしている様子が伺えた。しかし気になった部分はフォーメーションではない。

土台の消失である。「やってきたことを見失ってない?」という印象が強かったのだ。

昨季1年間で、ボール保持による攻撃回数の増加&守備時間の減少を目指すサッカーの土台を作ったはずであった。

チームが始動して間もない頃なので、新加入選手がすんなり溶け込めないことも、昨季の主力が多い方が狙い通りにできることも理解している。

それにしても昨季のような意図が見えなくなっている。

昨季をベースに戦うのであれば、まず昨季やっていたことを反復してチーム全体で共有した上で積み上げていくものを考えるのが妥当ではないのか。(指導者としての経験もプレイヤーとしての経験もないのでチーム作りの順序はよくわからないが。)

昨季足りなかった「+‪α‬」の部分にフォーカスしすぎるあまり基礎が疎かになり、出来ていたことが徐々に出来なくなっていくような感じがした。

迎えた開幕戦、アウェイに乗り込んだ京都サンガはレノファ山口に0-1で敗北。

目も当てられない内容だった。悪い予感は的中した。

シーズン終盤にはある選手がインタビューでこんなことを語っている。

『前線にウタカがいて、そこを中心に縦に早いサッカーが最近は主流になっていた。奪ってカウンターというサッカー。そこから(松本戦は)自分たちがボールを握るとなったとき、積み上がっているものが無かった。選手同士で連動できず、ボールを握ることも相手の方が上手かった。』

【京都 vs 長崎】「勝つことが正義。だけど・・・」金久保順が語る今季の現状と、昨季との違い
2020年12月1日(火)
』より引用

昨季なんてなかったかのように、チームは様変わりしていった。

第2章 中断の功名

長い自粛期間を経て、各クラブともコンディションが整ってない中で再開されたリーグ戦。京都は他クラブに比べてフィジカルコンディションが良く、強度の高い練習をしてきた事がうかがえた。

フォーメーションを532(3142)に変更しバイスを中心とした守備を整備することで開幕戦とは見違えるチームになった。
532の強固なブロックと中盤の激しいプレス、そしてウタカを生かしたロングカウンター。

・ハードワークできる選手が中盤に揃っていたこと
・ウタカの得点力
・超過密日程による(相手からの)スカウティングの難航

が功を奏し、8月中旬まで比較的好調であった。

悲しいことに昨季の面影は消えていた。それでも勝ち点だけは積み重ねることができていた。

試合を重ねるとさすがにウィークポイントが見えてくる。また過密日程でターンオーバーをしても疲労が蓄積されるので、当然パフォーマンスが下がってくる。
8月中旬〜9月上旬にはそれらの要因が重なり勝ち星から遠ざかった。

第3章 加速する個への依存

個性・特長が特に強烈な場合、圧倒的に優れている場合に「個の力が強い」と言う。

簡単に言えば「質が高い」ということだ。

サッカーには―どのように攻撃してどのように守るのか―各チームで異なった戦術があり、11人でそれを遂行して勝ちを目指す。

戦術遂行に際して「個の力」に強く依存するケースが往々にしてある。
"とある選手の存在が戦術に大きな影響を与える"。
いわゆる「属人的なサッカー」である。

対になる言葉に「組織的なサッカー」があるが、こちらは"誰が出てもおおよそ同じような戦術の遂行が期待できる"という意味になろう。

京都サンガは「属人的なサッカー」に終始した。

他クラブに比べて選手の平均的な能力は高い方だ。その中でも攻守において3本の柱がある。

守備の要「ヨルディ・バイス」
司令塔「庄司悦大」
絶対的エース「ピーター・ウタカ」

上から順に出場試合数は39試合、41試合(うち途中出場4)、40試合(うち途中出場2)となっている。監督から圧倒的な信頼を得ておりチームの中心であることが分かる。

この3人は試合中に相手から厳しいマークを受けることが多く、3人の出来次第で試合結果に差が出ることとなった。

J2得点王になったウタカは文字通りなんでもできるため特に依存する割合が大きく、"彼がいないと点が取れないどころかボールを前に運べない"というケースもしばしば。

チームの中心は3人と書いたが、もっとも「ウタカのチーム」であることは誰の目にも明らかだった。

誰が見てもウタカのチームだし、ウタカがいないと普通のチーム以下の実力しかないのが現状だと思う。

ここで言っておきたいのは、悪いのはウタカではないということだ。
アルコールもタバコも同じである。それ自体が悪いのではない。依存してしまう人間の弱さ、未熟さに問題があるのだ。

京都の監督は監督して未熟であるがゆえにウタカ依存に陥ったといえよう。
昨季と違って選手への自由度を上げて伸び伸びプレーできる環境を作りたかった。しかしそれがいつのまにかウタカが点を取れるようなサッカーへ、彼に依存するサッカーへ…

他にも中盤の守備では豊富な運動量で広範囲をカバー出来る曽根田、宮吉、福岡、庄司に助けられた部分が大きい。
サイド攻撃では突破力のある飯田に頼りきりであった。

8月中旬〜9月上旬の勝てない期間を経て、黒木や福岡と言った昨季の主力が出場機会を増やした。よりボールを保持に重きを置いた戦い方に方向転換する為には彼らの力が必要だったのだ。

「ウタカを中心としつつディティールを他の選手の質に頼る」方向転換が行われ始めたのがこのころである。

第4章 仙頭の帰還

今季の京都サンガにおいて、背番号15・仙頭啓矢の復帰は外せない話である。

昨季はチームの中心として活躍しキャリアハイの10ゴールをマーク。シーズンオフにチャンピオンチームの横浜Fマリノスへと移籍した。しかし思うように出場機会を得られず夏に京都にレンタル移籍の形で復帰した。

僅か半年の間だったが、J1の環境で揉まれた仙頭は圧倒的な存在感を放ち、ウタカと並ぶチームの攻撃の核となった。
その証拠に19試合(うち途中出場1)でチーム2位の6ゴールをあげている。

仙頭の復帰後はフォーメーションを3421にほぼ固定。
ウタカのワントップに仙頭と(主に)曽根田の2シャドー。

手堅く守りウタカと仙頭を中心としたカウンターでゴールを脅かす。いわゆる堅守速攻のチームに戻った。

戦い方はさておき、仙頭の活躍がなければ8位という比較的好成績でシーズンを終えることは不可能であった。
まさに大車輪の活躍だった。

photo by ぺんね(@penne_soccer.photo)

第5章 定まらなかった戦術

ボールを保持し自らアクションを起こしてゴールを狙うのかと思いきや、守備ブロックを作りカウンターで少ないチャンスを狙うサッカーになったり。引いて守るのかと思いきや、前線から激しくプレスをかけてみたり。手堅く試合を運ぶのかと思いきや、オープンな展開で殴りあったり。
シーズンを通してだけでなく1試合の中で戦い方がコロコロと変わるのが今季の京都サンガだった。

中田一三・前監督がチームの方向性を定め、佐藤一樹コーチがそれを実践するための戦術設計を行い、實好コーチ(当時)はゲルト エンゲルス前コーチ(現・INAC神戸監督)や、S級ライセンス取得の為にチームを離れることも多かった佐藤尽コーチと共に、チームや選手を様々な面から支えている。今季は監督へ就任し、チームの決定権と責任を併せ持つことになった。』

【京都 vs 群馬】指揮官・實好礼忠が過ごした濃厚な1シーズン
2020年12月19日(土)
』より引用

去年はボールをつなぐスタイル、持つことにこだわってやりましたが、よりゴールに向かっていくシーンを見せたいという考えがありました。

佐藤一樹コーチの戦術設計の上に監督なりの考えで色を足していこうとしていたがどうもうまくいかなかった。


なんでもこなせるウタカがいるのとボール保持に関して昨季のベースがあるので何をやってもそこそこ形にはなった。しかし現実と理想のギャップに苦しみ続け、信念を貫き通すことも割り切って戦いきることもできず中途半端に終わってしまった。

実際のところ「我慢強く守ってカウンターで少ないチャンスを者にするサッカー」が合っていたのだが、「多彩な攻撃と出足の鋭い守備による攻守でアグレッシブなサッカー」を体現したいというロマンを最後まで捨てきれなかった監督の心理と、結果を出し続けなければならないプレッシャーが大きく影響したのだろう。

振り返ると『何故、ああいう選択をしたのか』、『なんでだ、なんでなんだ』という思いがある。それがチームにも影響して、こういう結果をもたらしてしまったなという気持ちがすごく大きいです。

第6章 試行錯誤のその先に

トライ&エラーと言えば聞こえは良いが、実際にやっていることは小手先勝負でしかなかった。

2018シーズンのボスコ監督に似ている。

ボスコ監督は降格回避のため時間が無い中であれこれやっており、實好監督は特殊なシーズンで練習時間が少ない中で最適解を導き出そうとしていた。

時間的な余裕のなさという面も多少似ている。

『勝つことが正義というか、勝点を取ることが正解なので。』
『勝っても負けても、自分たち主導でサンガの形を出して、その上で勝ちや負けの結果があった。スタイルはハッキリしたものがあった。(中略)今年はメンバーが変わって、強烈なストライカーがいて、それを支える選手たちがいるチームになった。それも正解だし、それで勝てるのもサッカーです。』

勝てば良い
ボスコ監督の時は「降格を回避する」ためだったが、實好監督の場合は「新スタジアム元年に昇格する」ためだ。

どちらもクラブ上層部やスポンサーからのプレッシャーが大きかったことだろう。なんとしても勝って勝ち点を1つでも多く積み上げなければならなかった。

目先の勝利のためなら手段を選ばないその様は潔ささえ見られた。

『正直な気持ちを言えば、1年ごとにサッカーを変えてるのではなく、継続すること。例えば(現在首位の)徳島には積み上げてきた自分たちのサッカーがあって、こういう苦しい日程でその差が出るんだと思う』

だが積み重ねのないチームが勝ち点を積み上げることは難しかった。

順位の割に勝ち点は少なく、勝ち星の割に充実感はなく、厳しいシーズンを乗り越えた割に成長はなかった。

なんのための42試合だったのだろうか。

最後に

サンガスタジアムbyKYOCERAの初年度を非常に残念な結果で終えることとなった。応援・観戦スタイルも大きく変わり、何につけても満足のいくシーズンではなかった。

アウェイでは愛媛戦以外1度も勝てず。遠征してはため息を着いて帰京するばかりだった。

降格圏に沈んだシーズンのほうが幾分かマシと思えることもあった。

そんな不甲斐ないシーズンだが、最後まで戦ってくれた選手たちには感謝しかない。
監督やコーチにはやはり厳しく当たってしまったが、同様に感謝の気持ちは忘れないでおきたい。

京都サンガ、Jリーグに関わる全ての皆様。
1年間本当にお疲れ様でした。サッカージャンキーの日常を少しでも取り戻していただきありがとうございました。

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