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2019第17節 大宮アルディージャ×京都サンガ

想像以上に悔しい敗戦だった。負け惜しみしてるこのツイートで察していただけると思う。では、マッチレビューのはじまりはじまり。

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6月8日(土)

明治安田生命J2リーグ 第17節
@NACK5

大宮アルディージャ 3-1 京都サンガ
得点者:奥抜侃志(12分・大宮)、仙頭啓矢(25分・京都)、河面旺成(39分・大宮)、ファンマ(62分・大宮)

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1)試合前プレビュー
2)試合展開及び雑感
3)ゴラッソは止められたか
4)最後に

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1)試合前プレビュー

4節以降負け無しもここ4試合は引き分けと今ひとつ勝ちきれない大宮と、5試合連続複数得点で6試合負け無し2連勝中の好調京都の対戦。

3421を採用してきた大宮だが、対人守備に特長があるがゆえに中盤の選手がスペースを空けてしまう悪い癖があった。

京都にとってそこは狙い目となるのだが、高木監督は試合までの1週間を完全非公開にして、京都対策を練っている。

これまでの大宮の戦いは以下のちくきさんのnoteを参考にしていただきたい。

私が予想する大宮の戦い方は以下の通り。

・基本フォーメーションは3421
・鋭いプレスで京都のビルドアップを窒息させショートカウンターを狙う
・縦のコースを消してWBやCHの対人守備の強さを生かしてボールを奪う
・引いて守る時はスペースを消すことに専念し危険なエリアを使わせないように努める
・ボールを奪ったら1トップのファンマを起点に、京都が対応しづらいDF・MFのライン間に配置したシャドーを使ってチャンスを作る
・ボールポゼッションはあまり行わず福岡戦のようにロングボール主体

対人守備が強いということでプレスを受けた時や球際のところで苦しむシーンや、屈強なファンマを抑えきれず後手に回る時間はもちろん出てくるだろう。
しかし相手のプレスが止まる時間帯、ファンマが守備をサボる時間帯は当然出てくるので、そこでCHをうまく引きずり出して一美や重廣を起点に中央からチャンスを作っていきたい。

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2)試合展開及び雑感

◇両者のスタメン

大宮は3421ではなく、3センター(CH3枚)を用いた352。


京都は従来の4123で前節良いプレーを見せた福岡が引き続きDH(アンカー)に入った。

◇大宮の狙い

大宮は532の3センターの脇、WBの前のスペースをボールの奪いどころとしていた。

①2トップがCBにプレスをかけボールをサイドに誘導
②3センターが京都のDH、IHを見ながらボールサイドにスライド
③SB→WG→IHと外から打開してきた所をWB、CH、ボールサイドのCBで挟み込むようにして奪う

奪ってからは2トップの奥抜のドリブルやファンマのポストプレーを生かしながら前進し、追い越してくるWBやCHが厚みをもたらしてサイドから攻めてくる。
高い位置で奪ってからの高速ショートカウンターが軸である。

自陣に引いた場合は
・2トップとCHの石川が常にDH(アンカー)を監視
・3CHの鬼のようなスライドとCBのインターセプトでバイタルエリアを使わせない
・サイドでは奥井や吉永が京都の両WGがスピードに乗る前に潰すように徹底
・5トップ気味になる京都の選手にマンマーク

前線の2枚と中盤の3枚で五角形を形成し、中央から締め出すことを徹底していた。

この時も攻撃に転じると奥抜とファンマを生かしてカウンターを仕掛けるようになっていた。

全体的に京都がボールポゼッションする時に変形する235に合わせてマンマーク気味に選手がついてきていた。

従来の1トップではなく2トップにしたのは
・京都のCB2枚に対して数的同数でプレスをかけれること
・CBに数的同数で正対させること
安藤や本多が自らボールを運ぶことを阻止する狙いがある。

セットプレーを含むクロスはファーサイドから折り返してゴール前で押し込む形を狙ったものが試合を通して多かった。
2点目もそこから生まれたものである。

◇京都の狙いと打開策

対する京都は2トップとCHによってDH(アンカー)が消されていたので、いつものようにCB→SB→WG→IH→WGの流れでサイドから打開することを試みている。

他にも一美のポストプレーやDFラインの裏を狙うロングボールも何本か試みていたが、いずれも効果的とは言えなかった。

重廣には畑尾が、小屋松には奥井がマンマークで付くので、SBからボールを前進させる時にその2人が入れ替わり、マークを付きにくくさせることでビルドアップの出口を作っていた。
右サイドでも同様に、仙頭と宮吉がポジションチェンジを行っている。
他にもGK清水が高い位置でビルドアップに加わることで2トップに対して数的優位を作りプレスの逃げ場を作っていた。

◇前半

1失点目は大宮の狙い通りの形だった。
前半から京都のビルドアップを苦しめ、上記の狙い通りに3センター脇のサイドのところでボール奪取。
ファンマが起点となり茨田のラストパスを奥抜が流し込んだ。

かなり早い時間帯から相手の術中にハメられたがゆえの失点であり、これを防ぐには最後のところで安藤らが個人で止めるしかなくなってくる。

大宮が先制してプレスをスローダウンさせたことで、京都がボールポゼッション増えたが、前線のマンマークに苦しみブロックの外でボールを回すのみとなる。

25分、以外にも京都が同点に追いつく。
左サイドに回った仙頭がターンでCHを1枚交わしてゴール方向へ斜めに侵入。それに合わせて大宮の最終ラインが後ろに下がる。重廣が奥井を引き付け、一瞬空いたバイタルエリアで一美とワンツーで難しいシュートをねじ込んだ。

守備で苦しめられていたCHを剥がしたこと、ギリギリまで重廣が畑尾を引き付けており畑尾が仙頭に寄せきれない状況を作ったこと、仙頭が空いたスペースを見逃さずゴール方向に斜めにドリブルをしていったことが素晴らしかった。

まさにワンチャンスをものにしたゴールだった。

同点となったことで再び大宮のプレスが始まるが京都が選手のポジションチェンジなど工夫したことで無効化していたシーンもあり、何度か京都がピンチを迎えたものの悪くない展開だったと言える。
前半を1-1で終えることが出来ればハーフタイムで修正できるのでそれでよかった。

しかし河面にゴラッソを決められ前半が終わる。

2失点目がこの試合の流れを決定づける失点となった。

◇後半

大宮はリードしている状況なので、立ち上がりこそプレスをかけてきたがリスクを最小限に抑え、明らかにカウンター狙っていた。
同点に追いつきたい京都は「テンポをあげよう(中田監督)」という指示に応え、全員が動いてショートパスを繋ぎリズムを作る。さらにSBが前半よりも高い位置を取ることで攻撃に厚みをもたらしていた。

53分、DHの位置に庄司を投入。福岡を右SBに回すことでパス回しの起点を2つに増やした。
テンポが上がり始めたところに長短の高次元なパスを出せる庄司が加わったことでボールポゼッションで圧倒。
大宮は明らかにマークに付けなくなり後手になっていた。

55:30あたりからの庄司→福岡で右サイドからチャンスを作ったシーンは焦れずにテンポの早いパス回しで相手を揺さぶって生まれたものである。
しかしながら大宮は割り切って中央を固めていたのでシュートまではいけず。

61分に中盤でボールを奪いきれなかったところからファンマにカウンターを食らってさらに劣勢に。

その後闘莉王を投入し、ファイヤーフォーメーションとも言える状態で押し込み続けたがオレンジの壁を崩せずタイムアップ。
終盤は大宮の戦い方が明らかに変わっており、運動量の落ちた中盤とサイドは捨ててとにかく中央ゴール前を守っていた。
あそこまでされると正確無比なパスやシュート、カイオのようなデタラメなゴラッソがない限りはネットを揺らすことは難しい。

◇雑感

前後半通してボールポゼッション自体は猿でもわかるほどだ。そのわりにゴール前中央やサイド深くをえぐるシーンが少なく、ブロックの外で回させられていた感の強いゲームだったことから大宮の守備のオーガナイズが上回っていたと言えよう。

・高い位置からプレス→ショートカウンターで主導権を握る
・ボールを手放して相手を引き込み、PAの外・最終ラインの前で奪ってロングカウンターを狙う
・とにかくゴール前を固めて逃げ切る

戦況と体力によって上記のように守備の位置を変え、後半の猛攻を受けながらも無失点で逃げ切った大宮の試合運びは見事だった。そのことは素直に認めなければならない。

今季初の3失点を喫したものの、京都の守備に大きな欠陥があったとは言い難い。何度も書いたが対応のマズさという点でミスがいくつか出たことが失点に直結している。
致命的なパスミス、自滅から生まれたわけではないので、その辺はネガティブ捉える必要はない。

後半、特に70分以降は大宮の3CHのスライドが間に合わなくなるシーンが増えたものの、最終ラインでWB・CBの間(チャンネル)を広げてスペースを作ることができず、またも5バックを崩すことは出来なかった。
対人に強く引いて守る相手をどうズラしてチャンスを作っていくのか、大きな課題が突きつけられた試合だった。

さらに対人であったり球際でボールを奪われる・奪いきれないシーンの連続を見ると、組織力だけではどうにもならないものがあるんだなということを改めて感じた。

守備戦術の部分でハメられた失点は仕方ないとして、クオリティにこだわってやっていけば防げた失点はあるので、この敗戦から次に繋げてほしい。

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3)ゴラッソは止められたか

ゴラッソとは大宮の2点目、河面のシュートである。

結論から言うと、ゴラッソ自体は止めれないが失点は防げた

奥井のクロスからファーサイドで吉永、ゴール前でファンマと競り勝ってこぼれ球を繋いでのミドルシュート。
ここは止めようがない。

私が止めれる・止めるべきだった箇所は2つあると思っている。

①畑尾→茨田に縦パスが通ったところ
②2つ目は奥井のアーリークロスのところ

① 37:45〜大宮が恐らくこの試合で初めてポゼッション。
37:50に1度CBまでボールを下げさせたものの、畑尾から茨田に狭いところを通されてしまっている。

畑尾の近くには奥井と石川がおり、奥井には仙頭がついていて石川はフリーだった。
大宮が最終ラインでボールを持つとボールサイドのIHが前に出て442の形をとる京都は重廣が石川を見ながらボールホルダーの畑尾に寄せていった。

この時、最も危険なのは茨田にリターンの縦パスを通されることで、パスコースを切りながら寄せるべきだったのだが、パスコースを消しきれずに通されてしまった。

② ①の直後、茨田からボールを受けた奥井がドリブルで運んでアーリークロス。この時小屋松が追っており、縦に黒木、内側に重廣も戻っていた。

数的優位で囲んでいるにも関わらず、ボール奪取はおろかスローインに逃れることもファールで止めることもできずアーリークロスを許してしまった。
①よりも止めやすい状況のはずが対応が緩くなってしまったことは大きな反省点だろう。

ここで止めれていれば河面のゴラッソは生まれなかった。

細かいところであるが、こういったハイレベルな試合においては勝敗をわける失点に直結するところなので、さらにクオリティをあげて突き詰めなければならないし、ゴラッソで済ませてはいけない。

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4)最後に

2点ビハインドで大宮が引いて守っていたこともあり、中田監督の采配はかなり攻撃的だった。
守るのは庄司、安藤、本多の3枚もしくはそのうち2枚で、ほとんどが敵陣深くまで攻め上がり多くのチャンスを生み出していた。

リーグ戦で初の2点ビハインドということもあり監督がどのようなアクションを見せるか注目していたが、スタイルを貫きゴール前で確実にチャンスを作ることが半分、人数をかけファイヤーフォーメーションも厭(いと)わないことが半分で、カウンターのリスクを覚悟の上での非常に積極的な姿勢であった。

選手もそれに応えて最後まで走りきっていたので、敗戦の中に胸を打つものは確かにあった。

負けたあとでもサポーターがポジティブだったのは、内容以上に最後まで応援したくなる監督・選手の”気持ち”が見えたからだろう。

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正直なところ、上位との直接対決・6ポイントゲームで勝てば自動昇格圏内がグッと近づく試合で負けたのは痛いし悔しい。

けれども選手もサポーターも心が折れてる様子はないしチャンスもまだまだあるので、次節琉球戦から勝ち点を積み重ねて上を目指したい。

柏に勝った愛媛には圧倒的感謝🙏

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