2019第6節 FC岐阜×京都サンガ
3月30日(土)
明治安田生命J2リーグ 第6節
@長良川
FC岐阜 1-1 京都サンガ
得点者:ジュニーニョ(71分、京都)、粟飯原(83分、岐阜)
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1)進化する大木サッカー
◆岐阜の基本布陣
岐阜を率いて3年目になる大木監督。
昨季はシーズン途中に主力の古橋がJ1に引き抜かれ、後半戦はかなり苦しんだ。
主体はパスサッカーだったが433のウイングのクオリティが生命線になっていた部分があったからだ。
今季は中盤がダイヤモンド型となる4312を採用。
監督曰く「(ダイヤモンドの頂点は)トップ下とは考えていない」とのこと。スタートポジションこそ違えど、前の2枚と連携し3トップのような形をとる。
◆ストーミング型パスサッカー?
生命線のパスサッカーではボールサイドに密集地帯を作って細かくパスを繋いで崩していく。
ボールを失ったら素早く切り替えて、密集してるのを生かして相手を囲い込み奪う。そこからショートカウンターに転じる。
ビルドアップで前進できないと見るとロングボールを入れ、セカンドボールに対してタイトに寄せていく。たとえセカンドボールが拾えなくても、プレッシングからのショートカウンターに持って行ける。敵陣に押し込むためのロングボールも持ち合わせている。
ボールを手放すことを厭(いと)わず、相手のビルドアップを破壊する攻撃的な守備を行い自らの攻撃に繋げる、いわゆるストーミング型サッカーのような印象すらある。
プレスを回避され自陣にまでボールを前進させられると、個の能力に劣るバックラインの脆弱性が露呈する。ここは対人守備に強い阿部が生命線だ。また高さで劣る分ハイボールに強くはない。
ボールの保持、非保持に関わらず、真の意味で攻守において主導権を握ろうとする。
現代サッカーのいい所取りをしてるような印象があるのが現在のFC岐阜である。
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2)試合前プレビュー
◆見どころ
今回の対戦の見どころは、ピッチ上で何が起こるかというよりむしろ、知将とされる両監督がどのようなプランを持って臨むかだ。
京都は、密集プレスを回避するためにはピッチを広く使ってボールを運んでいくのが望ましい。その中でサイドチェンジを多用して相手の陣形を横に広げることが出来れば中央にスペースが生まれるので、そこを積極的についていきたい。
岐阜は得意なプレスで相手のミスを誘いショートカウンターに持ち込みたい。京都は常にパスコースをいくつも用意してビルドアップするので、リスクを冒してそこを妨げられればチャンスは増える。逆に潔く引いて守る時間も大事になってくるだろう。
◆試合展望、予想
私的なイメージ・感覚として、大木監督は頑固で我を貫いてくる、中田監督はスタイルを追求しながらも相手に合わせて柔軟に戦ってくる、というのがある。もちろん必要に応じて修正を加えることを怠る監督ではない。
それを踏まえると、中田監督が岐阜対策としてピッチを広く使ってボールを保持しようとし、大木監督はこれまで通りプレーエリアを限定してプレスをかけてくると思われる。
岐阜はそれがハマらなければある程度京都に合わせるように陣形を広げてサイドのケアをするのではないだろうか。
一方京都は、行き詰まった時にDFラインの裏を狙うボールであったり、大きいサイドチェンジをして打開していくだろう。
岐阜のプレッシャーでミスが起こり、そこからいくつかのピンチを迎えるだろうが、前半はお互いにビッグチャンスが来ることはないだろう。
ハーフタイムでの修正や選手交代で流れが変わる試合となりそうだ。
京都の戦いぶりからして今節もロースコアが予想される。
お互いに相手にボールを持たれることを嫌うので、主導権争いが楽しみである。
予想スコアは期待も込めて
FC岐阜 1-2 京都サンガ
得点者:永島悠史(岐阜)、小屋松知哉・ジュニーニョ(京都)
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3)試合後雑感
◆両者のフォーメーション
岐阜4312、京都541で共に前節と同じである。
メンバーは京都が前節同様、岐阜がCBイヨハ、右SB会津、OMF(トップ下)永島の起用など入れ替えて臨んだ。
※京都が紫色、岐阜が青色
◆前半
概ね予想通りの展開。
想定外のことがあるとすれば、京都が想像以上にボールを回せていたことと、左サイドの小屋松が突破するシーンが多かったことだ。良い意味で期待を裏切ってくれた。
●効果的だった京都のサイドアタック
岐阜は狭いエリアでのプレスを行うため、サイドチェンジをされるとスライドが間に合わず、サイドで1対1の状況ができやすくなる。
特に庄司→小屋松のパスがサイド攻略やチャンスクリエイトに直結していた。
左では小屋松が1対1で仕掛け、右サイドでもジュニーニョと福岡が2人で崩すシーンがあるなど、サイドからペナルティエリア内に侵入してグラウンダーのクロスを入れるという、理想的なサイドアタックが出来ていた。
相手にブロックされたもののシュートも打ててないわけではなかった。
●京都のビルドアップと岐阜の対応
ビルドアップは基本的に闘莉王・本多・上夷の3枚+庄司。岐阜は3バックを山岸とデフリースで見て、永島が庄司をマンマーク、各ポジションでマッチアップを作り京都を牽制。積極的にパスカットを狙ってきた。
前半はここでかなり苦しめられたものの、清水を使ったり庄司の上下運動でスペースを作ったりと工夫して回避しようと試みているのが見受けられた。
大きいサイドチェンジで相手を動かすことが出来た時はよりボールを前に運べていた。
◆後半
この試合を見るなら後半だけでお腹いっぱいになるくらい濃密な45分だったと思う。立ち上がりは岐阜が主導権を握るものの、京都が一瞬のスキをついて先制点をあげ、そこから主導権を握り返す。
しかし終盤に差しかかる頃、岐阜が2次攻撃でわずか10秒足らずで同点弾をあげる。
互いが主導権を交互に握る白熱の展開だった。
岐阜の戦術的な変更点と、それに対する京都のアンサーを中心に書いていきたいと思う。
●岐阜の変化
前半は2対3の数的不利でビルドアップを阻止しきれなかったため、後半からIHの三島が前に出て上夷をケアし、3対3の数的同数に。前半に引き続き永島が庄司を見ることでビルドアップを阻止。
さらに奪ってからはFW2枚(山岸、デフリース)がCBをピン止めし、DF・MFのライン間に三島や宮本などを配置することで縦パスを引き出す。そこに左SB会津がオーバーラップし細かいパスワークで主に左サイドからの攻撃を仕掛けた。
京都の中盤4枚がスペースを消す守備をしていたが、ジュニーニョや福岡を食いつかせることでパスコース創出に成功していた。京都の右SB福岡を釣り出してその裏を使おうとするシーンが多く、左からのクロスの本数も増えていた。
また左から攻撃し、右サイドの選手が中に飛び込んで仕留めようとする動きも目立った。
●京都の対応
押し込まれる展開が続き、カウンターのチャンスも早々に阻止され、FWの宮吉もなかなかボールを収められなかった。
65分、ボールキープ力とドリブル等推進力を持ったエスクデロを投入。
フォーメーションを4141に変更し、後ろを4枚にしてビルドアップで数的有利に、中盤を厚くすることでその後ボールを前進しやすくさせるとともに相手を前から追うことでボールを前進させない守備を徹底した。
ボール非保持時は福岡が前に出て442に。前2枚でプレスを行うことで岐阜はビルドアップに人数を割かなければならなくなった。
その結果、岐阜の中盤と前線が間延びしいい形でボールを入れにくくなった。
途中出場のセルが早速見せ場を作る。
71分、得意のボールキープからジュニーニョへ最高のラストパス。先制点をアシストした。
その後も下がってボールを捌いたり相手を背負ったプレーをするなど、持ち味を発揮して攻撃陣を活性化させた。
彼が自由に動くことで岐阜はボールの奪いどころを絞れなくなった。
前線の空いたスペースに飛び出しの得意な重廣が出てくることで、相手のCBはセルを潰しに行けない。
左サイドは小屋松と黒木が、右サイドは福岡と仙頭が制圧。そこに重廣やセルが絡んでサイドを崩すシーンが前半以上に増え、岐阜を押し込んでいった。
●フレデリックの投入
主導権を失った岐阜は新外国人のフレデリックを投入。
京都のCBが闘莉王と本多になったこと、岐阜が前線にフレッシュな選手を入れたことで、岐阜ボールになった時に京都の最終ラインが深くなる傾向が見られた。
フレデリックは中盤のスペースで宮本やデフリースらとパス交換や味方を追い越す動きで貢献。
81:20〜 京都のスローインをマイボールにしたあと、岐阜右サイドで味方と連動してボールを運んでいった場面がそれだ。
1度クロスを跳ね返されるも、同じく右サイドから同様に崩していき、同点ゴールに貢献した。
◆総括
前後半を通して両監督の特長が良く出た試合だった。また両者の高い修正能力もピッチに表れており、非常に見応えがあったと思う。
京都はボールポゼッションの中にサイドチェンジを織り交ぜることでサイドから突破を試み、岐阜はボールサイドに人数をかけることで京都のブロックを崩そうとしていた。
またそれが高いレベルで行われており、DFに大きなミスがなくとも両チームにチャンスが訪れていた。
どちらも途中出場の選手が結果を残すなどベンチワークも光るものがあった。
結果こそドローで満足できるものでは無いが、第三者目線で見ると今季1番面白い試合だったのではないだろうか?
過去5試合よりもさらに良い形でサイドを崩すシーンが多かったからかもしれない。
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4)京都の注目シーン(後半多め)
◆前半
・20:20〜 SBの裏を狙った小屋松に庄司がワンタッチパスでチャンスに
・23:50〜 庄司→小屋松へサイドチェンジ
・24:05〜 ①福岡が大外でボールを持つ。
②ジュニーニョが動いてCBを中に引き付けてCB・SB間のチャンネル(赤のスペース)を広げる。
③福岡→ジュニーニョ→再び福岡のワンツーで右サイド攻略。
◆後半
・48:47〜 ①前を向いた庄司から左のスペースに走る小屋松へロングパス。
②重廣がサポートに入りボールを受ける。
③黒木が大外からオーバーラップしCB・SBの間でパスを引き出してクロス。
→SBを釣り出して、CBとSBの間のスペースを利用した攻撃
・67:14〜 ①セルが下がってパスを受ける。同時に重廣はセルの空けたスペースへ
②福岡がセルのサポートに行き、ジュニーニョはSBの裏を狙って走る。後ろからは上夷が上がってくる。
→SBを釣り出して裏を狙う。同時に味方が上がってきてさらに厚みのある攻撃へ
・74:10〜 (清水までボールを戻してビルドアップのやり直し、左へ出したあと小屋松やセルが中央で絡み右へ展開)
(以降、下図参照)
①仙頭から重廣へ
②スルーして後ろに走り込んできたセルが受ける
③ワンタッチでSBの裏に走り込んだ仙頭へリターンパス
④ペナルティエリア内まで運んでクロス、セルのシュート未遂
相手陣内では狙い通りの攻撃の形が作れていた。あとはシュートコースがある状態で打てること、フィニッシュの精度の高めることで複数得点に繋がっていきそうだ。
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5)最後に
3CBの中央に闘莉王を配置することで高さ・強さのある選手に対応することができ、ビルドアップへの貢献も期待できる。裏のスペースは走力のある上夷と本多がカバーすることで、お互いの短所を補い合っている。一方で中盤の枚数が減るため、カウンターや中央での連携に迫力が無くなっていた。
この試合では途中で4141にフォーメーションを戻して中盤を厚くすることで、中央でもサイドでもボールを繋げることができチャンスになっていた。
しかし闘莉王と本多のCBに不安を残したままの試合運びだったことは否めない。
541も4141も一長一短。今後は闘莉王の有無で使い分けていくことがベストだろう。
どのような布陣でも選手達は各ポジションに求められる役割・動きを理解出来ているので大丈夫なはずだ。
相手や試合展開に合わせ、交代選手も使いながらの選択になってくる。
前置きが長くなったが、これらを踏まえて4141が私個人としては最も面白いと思っている。
闘莉王がどうとかセルを起用する方がいいとかそういうわけではない。
選手の距離感が最もいいと思ったのがこれだからだ。
今後の中田監督の采配を楽しみにしたい。
以上。
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