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2019第30節 徳島ヴォルティス×京都サンガ

8月31日(土)

明治安田生命J2リーグ 第30節
@ポカスタ

徳島ヴォルティス 2-1 京都サンガ
得点者:渡井理己(79分・徳島)、杉本竜士(88分・徳島)、中坂勇哉(90+5分・京都)

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1)可変システムVS可変システム

◇スタメン

スタメンと選手の並びは以下の通り。

徳島は、ボール保持時(攻撃時)325ボール非保持時(守備時)442となる。

京都は、ボール保持時(攻撃時)235ボール非保持時(守備時)451(4141)となる。ボール保持時に343になるケースもある。

※その時の選手の配置は後述の図解を参照

攻撃、守備、攻守の切り替えを、チームの特長を生かしながらスムーズに行うために可変システムを用いている。

◇徳島の20分

前半最初の20分は徳島のゲームだった。

徳島はボールを保持すると最終ラインの3人+2CHでビルドアップをする。岩尾や小西をフリーにしてしまうと前線に良いパスを通されてしまう。かといって下図のようにマークすると渡井(あるいは野村)へのパスコースができてしまう。

前節・福岡戦後半ではこの3-2のビルドアップに対応できず苦戦を強いられた。この日もバイス、岩尾、小西の3人を抑えるのに苦労した。

京都がボールを保持しても、野村の庄司へのマンマークや水戸並の寄せの速さに苦しみ、選手間の距離が遠くなってボールが回らなかった。

◇京都の25分

京都の取った対策は下図の通り。主に徳島がゴールキックから繋いでくるときに見られた方法。

一美が右サイドに追い込む。庄司を一列上げて、福岡と2人で2CHをマーク、ほかのポジションでもパスの受け手を潰す。逆サイドでフリーの石井は宮吉が、ライン間で猛威を振るう渡井は小屋松がケア。

渡井や野村へのパスを誘い込み、そこで奪うケースが3度ほど見られた。

徳島のビルドアップ隊を押し込むことで前線を孤立させ、中盤でのボール奪取回数を増やす。ロングボールも安藤や本多が体を張り、河田に仕事をさせなかった。

上記以外の場面でも、宮吉を前に上げた442で、DFとMFの間をコンパクトに守ることで、渡井や野村を試合から追い出した。

◇WG黒木

14:35~ 京都は下図のように選手を配置して343での攻撃を試みる。

442で迎え撃つ徳島はSHのポジション(渡井、清武)に高いポジションを取らせ、左右に開いたCB、前に出てくるSBにプレスをかける。

22:10~ 京都がボール保持。

22:18~ 本多が2トップの横のスペースからドリブルで持ち上がる。こういう場合小西か渡井が対応するのだが、前に出られない状況に。小屋松がハーフレーンで相手を引き付けているため、WGのポジションまで上がってきた黒木がフリーとなった。

このあと、本多→黒木→小屋松→庄司→一美と繋ぎ、一美がシュートを放った。

このシーン以外にも黒木が攻撃参加するシーンが多く、マークの厳しい小屋松の代わってゴール前に入ろうとしていた。

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2)知将対決後半戦

◇リカルドロドリゲス、奮起

後方でのパス回しこそ上手くいったものの、前半途中から前線が孤立する形となった徳島。後半に入ると下図のように小西を下げて4-1でのビルドアップを図る。

一美が岩尾をマークするので小西が前を向いてボールを触る機会が増え、パスを散らせるようになった。またバイスが一美の横からドリブルで運んだり小西が前に出て縦パスのコースを増やしたりと、前線との距離を縮める工夫をしてきた。

ここでのポイントは岩尾と小西が縦関係を作り、どちらかが前を向いてパスを出せるようにしている点だ。

ボールが前線に渡るとどうなるかは試合の通り。
次々チャンスを作り、枠内にシュートを飛ばしてくる。

◇負けていない中田監督

守備が安定したことでボールポゼッションはできるようになった。しかし攻め手に欠き、前半はなかなかチャンスを作れなかった。

後半に入ると、小屋松、黒木、宮吉に加えて一美や福岡までもが左サイドに寄って起点を作るようになる。そこから右サイドにサイドチェンジし仙頭の突破力を生かしてドリブル・クロスからチャンスを作った。

ゴール前に入る人数が少ないこと、後半から徳島が立て直したのでボールポゼッションを回復したいことから、石櫃に代えて先日加入したばかりの中坂を投入。 ☞右IH中坂、右SB福岡

ミドルシュートやPA内でのドリブルなど攻撃的な姿勢を見せてくれた。

徳島のほうがややチャンスは多いが、かなり拮抗した試合展開だった。

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3)新加入選手起用の代償

◇失点

中坂はスペイン3部への武者修行の成果なのか、パスコースを切ったり岩尾をマークしたりと前で守備をする分には問題はなかった。

気になったのはセット守備(451でブロックを作ったとき)の連携と判断だ。

チームに加入して日が浅いためチームの戦術の細かい部分にまでフィットできていないのは仕方がない。それゆえにボールホルダーに寄せるタイミングがズレてしまい、結果として1失点目につながった。

77:57~77:58 重廣がプレスをかけ小西に前を向かせず、石井へバックパスさせた。この時点で京都はIH重廣が前に出た442になっており、一美が岩尾へのパスコースを切っている。
78:01 石井→小西→岩尾とパスをつなぐ

京都が陣形変化するタイミングは小西→岩尾の横パスが入った時だ。下図のように中坂がプレッシャーをかけ、庄司と重廣が穴を埋めるようにポジションをずらす(ディアゴナーレ)。

しかし実際、中坂は77:58のところで岩尾をマークしようと前に出てしまったため、小西→岩尾とパスがつながったときにプレスをかけれなくなっている。野村へのパスコースが空いたことに気づき慌てて戻らなければならなかったのだ。

この先はハイライトの通りだ。

これが中坂ではなく福岡や金久保や宮吉なら防げたかと聞かれるとその確証は持てない。ただほんの些細なタイミングのズレが寄せの甘さにつながり、岩尾にラストパスを出させてしまったということに変わりはない。

それ以前に、ロングボールの処理で黒木と加藤に連係ミスがあり、マイボールにできたとこを逃してしまったのはいただけない。むしろそこを言及すべきか。

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ここで言いたいことは、フィットしきっていない新戦力を起用すると失点に直結するエラーが起こりうるということだ。

夏の加入で時間がないこと、実践にならないとわからないこと、そもそもサッカーとはミスのスポーツであることなど加味すべきことはあるが、繊細さや微調整を求めてる中でかなり大胆だなと思うわけだ。

中坂のプレーを見ると京都のスタイルにフィットするであろうことはすぐに分かった。ポジション柄、守備に定評があるわけではないので、シーズン終盤の時間がない中でどれだけ守備戦術を落とし込めるかが鍵であろう。

願わくば来季もお借りしたいとこだが・・・

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4)最後に

新加入選手に早くも辛辣なことを言ってしまったが、決してディスっているわけではないことを改めて強調したい。

ピッチに立つと果敢なドリブルやミドルシュートで存在感を示し、一矢報いるゴールまで決めてくれた。これを見せられると期待しないわけにいかない。期待するからこそだ。

中坂の加入は浮上のきっかけになるかもしれない。

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とはいえチームは4試合勝ちなし。

自動昇格が見える終盤戦、目先の結果をとるのか、チームの進化・クラブの成長のために内容をとるのか、非常に難しい局面だ。

だからこそここで、圧倒的内容で圧倒的勝利を目指すのだ!

レビュー書いてる割に身も蓋もないこと言うのねっていうツッコミはNGです。

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