2019第23節 京都サンガ×大宮アルディージャ
7月20日(土)
明治安田生命J2リーグ 第23節
@西京極
京都サンガ 3-2 大宮アルディージャ
得点者:仙頭啓矢(17分・京都)、オウンゴール(30分・京都)、福岡慎平(55分・京都)、ロビン・シモビッチ(75分・大宮)、大前元紀(91分・大宮)
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1)試合前プレビュー
2)両者の狙い
3)試合展開
4)雑感
5)最後に
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1)試合前プレビュー
今回に限っては大宮サポの方がめちゃくちゃ詳しいプレビューを書いてはったので、そちらを読んでもらいたい。
内容は
・京都のビルドアップ方法
・大宮のプレッシング手順
・大宮のカウンターアタック
・京都のロングボールの使い方
・対京都の注意点
・大宮がボール保持する場合の攻撃方法
となっている。この中から気になる事柄だけをピックアップして読んでいただいてもよいと思う。
これがあったので、僕からはすごく抽象的だが大事だと思う試合のポイントをご紹介。
コーナーキックや敵陣でのフリーキックはもちろんのこと、スローインやショートパスでリスタートする場面、つまり陣形が崩れやすかったり足が一瞬止まったりする時がチャンス・ピンチに直結するということ。
怪我人の多い大宮がどのような戦術を敷いてくるか分かりかねるが、いわゆる”一瞬の隙”を作ることなく、長崎戦や山形戦のように集中力高く粘り強い守備をしたい。
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2)両者の狙い
◇スタメン
京都は前節と変わらない4123。
三門や奥井、畑尾ら主力を怪我で欠く大宮は442。メンバーを見ても苦しい台所事情がうかがえる。
怪我明けの河本を起用すれば3バックも可能だったが、怪我明けであることとベンチにDFがいなくなることから起用を断念したのだろう。
◇大宮の狙い
●ボール非保持時
ボールに位置に合わせて全体が横にスライドして守る。2トップが庄司をマークしながらサイドに誘導し、サイドの高い位置で奪ってからショートカウンターを狙う(下図)。
●ボール保持時
2CB、右SB石川+CH大山で3-1でのビルドアップでボールを保持。CH小島が上下動で後方と前線を繋ぐ役割を担う。左SB吉永は外に開いてサイドアタックの起点に。CFフアンマがCBを、CF奥抜が庄司をそれぞれ引き付け(ピン留め)る。アンカー脇のスペースを、中に絞ってハーフレーンにポジショニングした両SHが使う(下図)。
◇京都の狙い
●ボール保持時
庄司を最終ラインに下げ、金久保がアンカーのポジションへ。SBが高い位置で外に張り出し、WGは中に絞る。全体としては343のような形をとる(下図)。
2CB、DH庄司+IH金久保がビルドアップをの中心となる。
数的優位を作ってプレスを無効化し、左右のCBが運ぶドリブル(ドライブ)や縦パスでボールを敵陣へと運ぶ。両サイドに形成した菱形を利用しながらパスやドリブルでゴール前に迫る(下図)。
※菱形は三角形(トライアングル)よりも1本パスコースが多く相手の守備に選択を迫ることができるのでパスをつなぎやすいというメリットがある
攻撃パターンとして、サイド深くからマイナス気味に折り返し、後ろから飛び出してくるIHがシュートを打つことが非常に増えた。福岡のゴール、62分の福岡のクロスバーを叩いたシュートがそうである。
●ボール非保持時
大前提として中央と両脇のハーフレーン、つまりフアンマ・茨田・バブンスキー・奥抜へのパスコースを遮断することが先決である。
金久保が大山をマークし、一美が大山へのパスコースを消しながらプレスをかける。サイドにボールが出たら両WGが、小島には福岡が対応に行く(下図)。要はビルドアップの中心となる大山を完全に消して、ほかの選手に持たせてプレスをかけようということである。
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3)試合展開
◇前半
開始10分こそ山形戦のようにボールを手放してカウンタープレスを狙いながら主導権を握ろうとする。しかし大宮のプレスとセカンドボールの奪い合いでボールが落ち着かず。
京都は庄司を最終ラインに下げて343の形でボールポゼッションをする(上述の京都の狙い)。
これが見事にハマり、大宮のプレスを回避することに成功。大宮が対処しきる前に攻め込み、仙頭が先制点をあげる。
・15:56~ 右サイドで安藤がボールを持つ。仙頭が下がって石櫃が前に、福岡がサイドライン際へとポジションを変えながら菱形を作る。右サイドに相手を引き付けてから庄司→黒木のサイドチェンジで打開。横に広くなった大宮守備陣の間で一美が受けて前を向き仙頭に。落ち着いて相手をかわして流し込んだ。
その後も京都はボール保持時の343とボール非保持時の451→442のスムーズな移行をメインに、235の普段通りのポゼッションも交えながら攻守に渡って主導権を握る。
大宮はあくまで2トップのプレスからサイドで奪おうと試みており、CHが前に出て2トップのプレスをサポートする動きは少なかった。そのため守備の基準点がなくなり押し込まれることとなった。この理由として以下のことが考えられる。
・急造の442の布陣なので極力シンプルにやりたかった
・CHが前に出ることで中盤にスペースができてしまうのを嫌った
・大山、小島の2CHでは守備における(三門のような)アグレッシブさが期待できない
京都の2点目は大宮のミスから。
・29:00~ 京都は4411の形で大宮にプレスをかけビルドアップを封じ込める。パスコースがなくなった菊地に対して大山と石川が同時に同じ場所へ下がってしまう。結局GK経由で一度はプレス回避したように見えたものの、プレスを怠らなかった小屋松と金久保が奪い、最後は小屋松がオウンゴールを誘った。
大山と石川の動きが重なったこと、菊地の球離れの悪さ、繋ぐ意識を持ちすぎ(京都にボールを渡したくないため)はっきりとプレーできなかったこと…複数のミスが重なった失点といえよう。
一気に劣勢になった大宮はバブンスキーに代えて大前を投入。
しかし京都が主導権を握り続けて前半を2-0で終えた。
◇後半
後半に入ると京都ボール保持時に大宮CHが前に出てくるようになる。CFの裏のスペースを消して、中盤でボールを受ける金久保や福岡に自由を与えない構えだ。それを受けて2CFはより積極的にプレスをかける。
ならばと京都はGK加藤順をボールの逃げ場としながら少ないタッチで前後にボールを動かし、大宮の間延びを誘う。55分の3点目、62分のクロスバー直撃のシュートともに大宮を間延びさせたところを狙ったものだ。
自陣深くまで相手のプレスを誘導し、CHが前に出てきて間延びしたところで一気に前へ送る。54分には一美がポストプレーで、61分には金久保が華麗なターンで菊地をいなす。菊地が前に出て潰そうとしたことで最終ラインには河面と石川の二人という状況。
どちらのシーンも仙頭からの折り返しに後ろから飛び出してきたIHがシュートを放った。
3点リードの京都はリスクを最小限に抑えポゼッション時は無理をせず、カウンターもしくは疑似カウンター主体に切り替える。
69分には小屋松に代えて新加入の藤本淳吾を試す余裕も見せた(右ふくらはぎを痛めて82分に宮吉と交代)。
大宮はシモビッチ、イッペイシノヅカと攻撃的な選手を投入して攻勢に出るも反撃及ばず。京都が3-2で雪辱を果たした。
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4)雑感
シモビッチのゴールは、CKの前のシーンを含めても止めようがなかっただろう。しかしながら2失点目は改善に値すると感じた。
安藤の縦パスには最後まで攻め切って勝つというチーム全体の強いが感じられたし、残すはアディショナルタイムのみということを考えればあそこで押し込めたらさらに楽になっただろう。リスタートの流れで相手のポジショニングが崩れてチャンスだったのは確かだが、京都も同様に整っているとは言えなかった。
残り時間と点差、そして選択するプレーに伴うリスク。すべてを総合的に判断すると確かに安藤のプレーはベターな選択の一つといえる。しかし結果論で言えばあのプレーは間違いなわけで、よりベターな選択はなかったものか。
勝ててよかったと安堵する中にまた一つ、試合の締め方の課題とヒントが得られた試合だった。
【追記】
試合全体としては京都のゲームだったように思う。相手の出方を見極め、用意していたであろうプランに移行してからは大宮を寄せ付けず。
大宮に怪我人続出・急造フォーメーションという点は加味しなければならないが、それでも今回ばかりは中田監督が上回ったゲームだ。リベンジを果たしたと言える。
書き出そうと思えば大宮の良かった点はいくつか挙げられるのだが、それをしてしまうと京都はその10倍ほど書かなければならないので割愛する。
2失点したことで中田監督の試合後インタビューはやや歯切れの悪いものとなったが、得点シーンの中田監督の表情・喜び方を見ればいかに良い戦いができたか想像に固くない。
つまり京都にとってはそれほど会心のゴールで、会心の勝利であった。
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5)最後に
開幕当初から取り組んでいる「サイドから折り返して中央で合わせる」パターンのひとつとも亜種ともいうべき「サイドから折り返して2列目3列目から飛び込んだ選手が合わせる」パターンが実を結んだ。
対戦相手はCF一美、両WGの仙頭・小屋松だけでなくIH金久保・福岡にまで注意しなければならない。京都としてはCFとWGに対応されつつある中で新たな得点パターンができたことは非常に大きな武器になる。
また戦術面でも相手プレスを無に帰す方法が次々出てきて、京都の恐ろしさを我ながら感じている。
曲者・中田一三は京都のポテンシャルをあとどれだけ引き出せるのか、今後が楽しみだ。
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