京都サンガ2021 第1節・第2節
めっきりマッチレビューを書かなくなってしまいました。
観る時間と書く時間と取れないのと、根気が続かないのと、特に實好体制の時は観てもよくわからないのと、色々あって久しぶりになりました。
曺貴裁監督が就任してから目指すサッカーのスタイルについてあれこれ議論なされてきましたが、開幕から2節経ったことで少しずつ見えてきたこととと思います。
それを極力分かりやすく書けたらなあと思う次第です。頑張ります。
【追記】※想像以上にボリュームあります
※見えてくるものや感じ取ることが今後の試合で変わるかもしれませんので今のところは話半分でお読みください。
1.基本フォーメーション
曺貴裁監督が採用しているのは433(4123)です。
しかし試合が始まるとかなり極端な陣形をとります。
【追記】サイドバック(SB)の役割が少なく見えますが、ピッチの縦100mを90分アップダウンするスタミナとチャンスの時に一気に駆け上がれるスピードを持っていることが大前提です。
※長い距離を走ってるのにボールが来ず再び下がる場面も多いので、良いオーバーラップには拍手で称えましょう。
タスクの量に差はありますが、重要度はすべて同等です。例えばセンターバック(CB)は少ない人数で広範囲を守らねばならず、なおかつミスが失点に直結してしまうためタスク量のわりに責任重大です。
この大胆なシステムが相手の好守を分断させ、徐々に狂わせる罠になります。
相模原のように引いて守ってきたら、京都がボールを握って攻める展開を作り押し込み続けることができます。
松本のように、京都と同じ土俵に上がってハイインテンシティなサッカーをしてきても、積み上げたトレーニングと豊富な戦力(交代枠5枚)の差で強度を最後まで保てるので、結局京都のペースになります。
弱点や脆さがあるのは事実ですが今のところ表立っていないので、練度を高めていくことになりそうです。
2.ボール奪取
中盤やサイドの選手の走力を生かしたプレッシングで相手を追い詰めてボールを奪う方法を採用しています。基本的にはボールホルダーから順に近いパスコースの選手をマークすることで行き場をなくし、相手に詰め寄りボールを奪いにいきます。
人を基準に速い切り替えと鋭いプレスを行っているため、構造的には「アーチ型」と呼ばれるプレッシングになってくるのではないでしょうか。
アーチ型とは、ボール(とボール保持者)を中心に文字通りアーチ型に選手を配置しパスコースを消していく方法です。特にサイドに追い込んだ場合によく見られる形です。
引用元:ナーゲルスマン一年目・RBライプツィヒの戦術分析~勝負を仕掛けるのはスタートラインを揃えてから~|14歳のサッカー戦術分析~日本サッカーの発展を目指して~ @soccer39tactics #note https://note.com/tacticalanalysis/n/ncaec2ce73678
ポイントとして京都の場合はボールサイドに極端に寄って奪いに行くことはしません(逆サイドの選手が中央まで来るほどの横圧縮ではない)。
考えられる主な理由としては以下の2点でしょうか。
①空いてるスペースやサイドチェンジのケア
②ボールを奪ったあと、空いている逆サイドに展開して攻める
ボールサイドのサイドバック(飯田や荻原)、インサイドハーフ(福岡や松田)、アンカー(川崎)、ウイング(曽根田、中川、宮吉ら)がボール奪取時のメインプレイヤーとなります。
※相手に質の高いボールを蹴らせないためのプレスでもあります
CBのバイスや本多は後方(裏のスペース)、最前線のウタカや李は前方(バックパス)へのボールをケアします。
またプレスにおいて大切なのが出足の速さ・鋭さです。
ボールを失ったあとの切り替えの早さ(ネガティブトランジション)やサイドチェンジされた時の横のスライドの早さにも注目です。
弱点としてセットしてブロックを作る守備というのはあまり仕込まれていないようで、プレスに行けないタイミングで相手がボールを持つとスペースやパスコースの消し方が曖昧になり、前進を許してしまうシーンが見られます。
3.ボール奪取後
複数の選手でボールを奪いに行くため、マイボールにした時に近い距離に味方が複数人います。
なので近い距離の選手間でボールを前に動かしながら選手も前に走り、縦に速くスピード感のある攻撃をします。
相手の陣形が整ってない状態で攻めきるためです。
この時のポイントが3点。
①斜め前にパスコースを作る
②相手選手の間のスペースを使う
③空けたスペースを使う
この3点は奪ったあとのカウンター時だけでなく、相手を押し込んで崩す際にも共通しています。
2年前(中田監督の時)のようにボールを保持してチャンスをうかがいスイッチを入れてスピードをあげると言うよりは、スピードを落とさずゴール前まで侵入する回数を増やしてゴールを目指すという感じでしょうか。
これら3点を行うために必要な事が曺貴裁サッカーの醍醐味である"走力"です。 前に人が走り前にボールを動かすことで"推進力"を生む、これが観る人を虜にする理由でしょう。
基本的に近い距離感でボールを前進させますが、縦を封じられたら直ぐに空いている逆サイドにボールを送って再びゴール方向に向かっていきます。
相手のどのスペースを狙いとするかはもちろん相手によって変わってきます。なので近距離での連携とサイドの突破力というのがゴールに向かう主なアクションといえるでしょう。
4.ゴール前の入り方
2節を終えた時点でのサンガはショートパスで細かく崩すよりもクロスでゴール前(ボックス内)に迫ることの方が多くなっています。クロスを上げたときに重要なのがゴール前の人数とポジショニングです。
人数が少ないとクロスに合わせる選手がシンプルにいませんし、ポジショニングが悪いとよいボールが来ても合わせられません。
CFを中心にゴール前に何人も入っていくのですが、その配置も面白くなっています。
サイドからのクロスに対して、ニアサイド・中央・ファーサイド・マイナス、いずれのボールにも合わせる選手がきちんといます。
クロスが多少アバウトとでも合わせる選手がいますし、人数をかけているので相手をゴール前に押し込めるというメリットもあります。
これはクロスを上げるほとんどの場面で起きている現象で、この再現性の高さはトレーニングの賜物でしょう(ゴールに結びついているかは置いてといて)。
5.京都の弱点
現時点で露呈している弱点は2つあります。
①CB周辺の広大なスペース
②つたないビルドアップ
①CBには開幕から2試合ともバイスと本多が起用されています。二人とも空中戦に強い選手です。さらにバイスは読みが鋭く、本多はカバーリングに特長があります。
ただ2人ともスピードに自信があるわけではないため、J2に多い快足のアタッカーに裏をとられると大ピンチです。特に中盤でプレスをかわされてスルーパスを出されると致命的です。
CB2人とも能力が非常に高く代えが効かない存在になので、出場停止や怪我の時に他の選手が台頭できるか未知数な点もあります。
②ビルドアップを行うのは2CBとアンカーの3枚が基本です。中盤やサイドの選手がサポートに下りてくるシーンは少なく、プレスを受けると前線にアバウトに蹴らざるを得なくなります。
前線では狙うスペースが共有されているのに対して、ビルドアップ時には狙うスペースの共有がなされていないように感じます。仮になされていたとしても、トレーニングの成果が出ているとは到底言えません。
松本のように激しいプレスを受け、もしボールを失った場合、失点覚悟のシーンになりそうです。
6.裏の顔
ボールを持つと、ポゼッションを高めてじわじわと、というよりむしろガンガン前に仕掛けていく京都の攻撃ですが、ボールを握って時間をかけた遅攻もできるのです。
相模原戦の67分、松本戦の65分に投入された三沢がキーマンになっています。視野が広くビルドアップや大きなサイドチェンジが得意な選手で、相模原戦で決めたようなミドルシュートや中盤からゴール前に飛び出す推進力も持ち合わせています。433のインサイドハーフ(IH)で出場すると、2CBとアンカーをサポートし、ボールに絡んで攻撃のリズムを生みました。そのうえでサイドのサポートやゴール前に入る動きなどIH従来の仕事もこなしていました。
この展開になると強い選手がもう一人います。同じくIHの福岡です。中盤でボールを引き出す動きやポジショニングに長けており、その良さを発揮しました。
三沢(と福岡)を中心としたポゼッションもスムーズにこなしており、どちらが表の顔かわからないのが正直な感想です。
引いて守る相手に対して緻密に崩していくトレーニングはしていないのでしょう。ゴール前を固められるとサイドからのクロスが増えていた印象があります。
ポゼッションに切り替えた時の振る舞いはもう少し観察が必要です。
7.2試合を終えた手応え
まだ第2節を消化しただけですが今年のサンガはかなり良い位置につけると考えています。ただしこれはCBのバイスと本多がコンディションをほぼ落とさずシーズンを戦えた場合です。
後ろの跳ね返す能力の高さで開幕から2連続クリーンシート(無失点試合)を達成しています。点を取られなければ負けることはないのでこの堅守は大きい武器になるでしょう。
ゴールこそ開幕戦のセットプレーとミドルシュートだけですがトレーニングの成果が随所に出始めていますので、流れの中からのゴールが次節あたりで生まれるのではないでしょうか。
中盤から前線にかけて戦力が豊富なこともアドバンテージです。コロナ禍の特例措置で交代枠が5枚あります。スタミナとフィジカルを消耗するサッカーですので、交代枠と戦力を生かして早い時間からフレッシュな選手に入れ替えることでサッカーの強度を保てます。恐らく夏場の失速も最小限に抑えられるのではないでしょうか。
そうなると気がかりなのはCBの選手層です。バイス、本多の後ろに控えているのは、怪我がちな森脇、昨季伸び悩んだ麻田、J2での経験に乏しい若手の長井や木村です。冨田や飯田もこなせるとはいえ、前線に比べると層の薄さは否めません。
若手が台頭するのか、補強に頼ることになるのか注目のポジションです。
少し話はそれましたが、90分同じ強度で戦えること、ボールを手放してもよし・ボールを握ってもよしの戦い方が既にできはじめていることは今後に期待が持てます。
戦い方だけでなく采配面を見ても選手の特長が生かされていますし、下馬評通り監督の手腕に問題は無いと思われます。
ビルドアップ、プレスの精度、フィニッシュワークなど改善点・修正点はたくさんありますが、練度や連携を高めた先でこのチームの最終系がどこへ向かうのかも非常に楽しみです。
8.最後に
想像以上のボリュームになってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
開幕戦のレビューを書きそびれたこともあり、開幕からの2試合で見えてきた二面性のある曺貴裁サッカーの大枠について書くことにしました。今後も試合ごとのレビューが書けるときはそれを、書けなくても数試合のうちに見られた変化などをまとめれたらと思います。
今シーズンもどうぞよろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?