今後データセンターの冷却に水冷方式が増えてくる
日経新聞に以下の記事が出ていました。
要約すると以下のような内容
更に要約すると
EV 関係の投資は抑制する
成長の見込まれる データセンター向けの水冷式装置に注力したい。
エアコンにも期待している。
ここでは、データセンター用の水冷式装置について注目したいと思います。
データセンターで求められる冷却
データセンターではサーバーラックの冷却が必須です。
データセンターにおける二大 インフラといえば
通信インフラ
電力インフラ
となります。
という記事が出ているように、データセンターでは非常に大きな電力を消費します。
特にハイパースケールと呼ばれるデータセンターでは 数十メガワット(MW)の電力が必要とされます。
例えば、あえて小さめと思われる北陸電力の場合、以下のようなデータがあります。
つまり、火力発電でいうと、5箇所の発電所で、4,564.7 千kW (=MW) を発電することが出来るということです。
一箇所の発電所で 913 MW 程度です。
水力発電に至っては、一箇所平均 15 MW 程度です。
ハイパースケールのデータセンターの場合、大きいものでは一箇所で 70~90 MW 程度のキャパシティを持っているところもあるので、火力発電所の1/10 程度の発電力を使用するほどの電力消費がありうるということになります。
なぜ、電気の消費の話をしたかというと、電気はエネルギーです。エネルギー保存の法則がある以上、エネルギーは保存されます。
電気を消費してもガソリンを使用しても、その大部分は熱エネルギーに変換されます。すなわち、サーバーを動かすと熱が発生します。
その熱を冷やさずに残しておくと、サーバーが熱暴走を起こします。パソコンと同じことです。
そして近年、大量のデータを処理するニーズが高まり、半導体の性能向上にも伴い、サーバーは高性能かつ小型化しています。これにより、データセンターの機器は かなりの高密度化 した状態となってきています。
一旦まとめると。
近年データの処理量が増えている。
大量のデータを処理できるサーバーが小型化されている。
機器の密度が上がり、発生する熱の密度も上がっている。
熱を冷却しないと熱暴走してしまう。
冷却装置も高性能にしないといけない。
ということになります。
これまでの冷却方法
これまでのデータセンターにおける冷却方法の主流は空冷でした。
自動車のエンジンでいうと、今どき空冷のエンジンなんて殆どありません。
自動車の空冷式は20年以上前の歴史的遺物と言ってもいいレベルです。
バイクで言うと、ホンダ・スズキ・カワサキ の4気筒 ネイキッド達が水冷になっても、ヤマハの XJ は空冷を守り続けていたのはある意味こだわりがあったのだと思います。
今でもバイクの排気量が小さいエンジンは空冷があります。
なぜ空冷を使うのか?
引き続き自動車バイクでの例えになりますが、空冷にすることのメリットの一つは故障を少なくすることが出来る。だと思っています。
水冷式は部品が非常に多くなります。水(液体)を使って冷却すると言うことは、水が必要となり、水を保つ必要があり、水を流す必要があるということになります。そのためには非常に多くの部品が必要となり、それを作動させるためのコントロールが必要になります。
部品が増えるということは、その設計も難しくなります。車体の重量も増えます。故障も増えます。メンテナンスも面倒になります。
多少乱暴な言い方ですが、データセンターの冷却方式も同じようなことが言えるということです。
また、電子機器を扱っているデータセンターにおいて、水はご法度であることは想像に難くないかと思いますが、水がご法度のデータホールにわざわざ水を持ち込む難易度も跳ね上がります。
データセンターで水冷式を採用することの難易度
データセンターで水冷式を採用することで以下のような点が難しくなってきます。
配管・チュービングが増えるため、スペースが必要になる。=空間設計が難しくなる。
データホールへ配管を通すために上げ床が必要になる。=上げ床分の材料費・工事費が増える。
水冷装置を実装することで、サーバーラックなどの重量が増える。=床の耐荷重要求が上がる。
運転状況のモニタリング箇所が増える。=センサーなどが増える。
故障したときの対応が難しくなる。
このような点を考えると、なかなか水冷まで踏み込めない & 水冷にする必要がなかった。というのがこれまでのデータセンターでした。
一方で 大学や企業のスーパーコンピュータを使っているような世界ではこれまでも水冷式が採用されていましたが、全体に比べると非常に限られた数でした。
今後の見通し
上述のNTTの記事にあるとおり、今後 高性能・高密度の要求はどんどん高まることになります。これは世間の技術革新と需要と供給に依るもので待ったなしです。
そうなってくると、今後データセンターにおける冷却能力もより一層上げていく必要に迫られます。
しかし、一方で先述の通り、これまで水冷方式を採用してきたデータセンターというのは非常に限られていました。すなわち、まだまだ 水冷についての設計・工事・運用の実績と知見が世の中には少ないと言うことです。
こうなってくると、先発のメーカーや業者はアドバンテージを持っていることになるので、より一層の研究開発や運用実績が貯まっていくことになると思います。また、後発組も需要に対して、アピールし採用してもらえる可能性は大きくあると思います。
一方で従来型のデータセンターの需要もまだまだあるため、空冷がそう簡単になくなるわけではないと考えています。
ただ、水冷式需要が増えるということで、それに対応できるようにすることはデータセンターとしては必須ですし、応えるメーカーなども技術力が醸造されていくことになると考えています。
一方で消費電力を抑えるには
消費電力が増えることで、それに伴う冷却の話となりましたが、一方でそもそもの消費電力を抑えるという取り組みも重要になります。
この様な取り組みもまた必要になってくることでしょう。
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