オルギア視聴覚室Vol.4(2018年) の感想
オルギア視聴覚室をご存じだろうか。女優のhocotenにより、やばい劇団・芸人・パフォーマーetc.etcを集めた闇鍋演劇祭。
2016年に始まったこのイベントは、まだ無名だったアンダーグラウンドシーンの劇団が多数出演。今では彼らは現在の演劇業界を代表する人気者となっている。現代演劇業界で重要なイベントだけどコロナ以降休止で、話題にするのも私くらいしかいなくなったので、noteにあげていなかった感想をtwitterからサルベージして記事にする。
2018年に行われたvol4を前編、2019年のvol.5を後編として2つの記事でお送りしよう。
まずは前編。Vol.4は、CINRA主宰のカルチャーフェス(ロックフェスのサブカルチャー版)NEWTOWN内のイベントで行われた。
(下は運営しているcinraが公開したその記録映像。一部に東京にこにこちゃん、はるかとピーチの映像が使われている)
2日間にわたるイベントをミックスしお届け。
順番は2日目の順番を記載する
一番
AUGUST HONEY (11日のみ出演)
ハチミツハルカとはちみつやよいによるふたりバンド。聞いていて気持ちの良いポップミュージック。アコギと鉄琴による幸せな曲と伸びやかで可愛らしいしかし力強い歌。あなたのための音楽なのだが、ちょっと歌詞がひねくれていて単なるホンワカバンドとは趣が違う。
二番手
宇宙論☆講座『音楽を語る五十部』
グダグダコメディとド派手な大仕掛けのミュージカル劇団。NEWTOWNではお化け屋敷も担当(一部私もお手伝い)しており、その宣伝とチン○についての二本立て。路上ミュージシャンを馬鹿にする話からメタネタと最低の爆笑芝居へ。小さいお客さんもいたので心配していたが、凄く笑っていた。下ネタで発想力が良い。音楽の使い方最高。
三番
超集団チャネ‼ちゃん 『次世代AIとゆらりんこによる歌(なかよしこよし/LOVELOVEウエディング)』
元・宗教劇団ピャー!!の塚田朋来が次世代AIという名前で活動する4人組ユニットのうち2人が登場。観客を巻き込んでの皆で体操。ぐるぐる回って二酸化炭素を吸うウエディングソング。演劇ではないし、歌唱パフォーマンスとは違うしあの時間は一体何だったんだ。すごい。
四番
パブロ学級 コント三本立て「とり」、「ダーク」、「槍」
3人組コントユニット(1人欠席)パワフルなコントな三本立て。馬鹿馬鹿しいアイデアでしっかりとした無茶苦茶。後に新メンバーが加入してお笑いユニットとして事務所に所属しプロになるが現在は解散。
五番
東京にこにこちゃん『魔女狩ララバイ』
魔女狩りが盛んにおこなわれている村。とある一家は徐々に魔女狩の密告を私的に利用し始めた。魔女狩りによって家族の絆が深まっていく一家を描いた悲喜劇。ブラックな笑いに悲しみが同居。1日目は観客参加型だったがド滑りしたせいで2日目は参加要素を排除。主宰の萩田さんは2日目の時寝坊したが、時間になっても来ない萩田さんに対し1日目滑りすぎたせいで自殺したんじゃないか疑惑が出たらしい。2日目は大受けだったヨ。
六番
はりねずみのパジャマ『正月』
正月に集まった一家の話が気づけば白亜紀にタイムスリップしてしまう。元の時代に戻るカギはマクドナルドのハンバーガー。何だか不思議な一家の話。正月の風景から一転するナンセンス、小ネタ盛りだくさんでその中に隠された伏線も上手い。この劇団は後に東京学生演劇祭優勝など活躍するが活動休止。主宰の並木は休止期間を経てお笑いコンビ回黙天として活動中。共同脚本を手掛けていた蓮見翔は残されたメンバーと共にコントユニット・ダウ90000を結成、現在は冠番組を持つ超売れっ子に。
七番
発酵バニラ『発酵バニラ・グレーテストヒッツ』
今井亜子、松島州伸によるパフォーマンスユニット。本人たちはやるつもりは無かったがオルギアのオファーがあったので今回限りの復活だったような。歌と踊りと芝居の不可思議ハイブリッド。浜辺を掘るとブラジル人が出てきたり、突然ハローキティ登場したり。ナンセンスだけど演技体は現代口語演劇的でどこか切なさを感じる。中々面白かったのでこれっきりは勿体ない。
八番
はるかとピーチ『心からの』
コントユニット・ピーチ(一人欠席)と女優の桑名悠(AUGUST HONEYハルカの女優名義)によるユニット。コントユニットのピーチはイベント時に仕事の都合で一人欠席してしまう為、ゲストの女優と演劇を作ろうとするが女優はわがままで思うように進まない。そこで、こちらも上から目線で接してみることに。変わり種が多いこのイベント中では珍しいくらいのちゃんとしたコント。安定感。
九番
劇団「地蔵中毒」『リーディング公演~慟哭~』
リーディング「渡辺えり子が、成城石井の中を原付で移動する日」、「下唇を震わせるだけの時間」、「巨大ダコくんの冒険」の三本立て。というか下唇を震わせるだけの時間はまじで下唇を震わせるだけの時間で、これはリーディングじゃないだろ。大勢が一列に並んで真面目に異常な内容を読む姿はシュールを通りすぎて可愛らしい、でも毒たっぷり。ラストに臓器提供カードに丸を付けてみんなで大盛り上がり。何で?
十番
木場智徳(10日のみ出演)
元お笑いトリオ卯月のメンバー(卯月から木場を追い出して誕生したのがザ・マミィ)。観客からお題を貰って即興で架空の豆知識を言う芸(だったはず)。観客大盛り上がり。現在は木場事変としてお笑いトリオ大仰天で活動。M1グランプリ2022で準々決勝進出。
十一番
フェッティーズ『SMってなぁに?』
現役女王様たちによるSMアイドルユニットこの時は女王様3人組。女王様達によるSM体験講座とSMコント。真面目なSM文化の講義を分かりやすく伝えてためになる。講義だけじゃわからないと実演、出番を終えて客席にいたパブロ学級ヒヒ丸が舞台に挙げられ、公開SM体験。異様な空間に大盛り上がり。SMはエンタメだ
十一番
銀杏亭魚折『ツキ集め』(10日)『ぜいきん』(11日)
関西の実力派アマチュア落語家。創作落語をしっかりとした語り口で口演、フェッティーズのカオスな空気を喋り一本で塗り替える。現在は1人コント時の名義どくさいスイッチ企画としても活動し、R-1グランプリ2022準々決勝進出。
十二番
公社流体力学『しんだ魚ももとにもどるんだよ』
私ですね。知人女性が小学校時代に体験した話。不思議な雰囲気のクラスメイトが死んだ魚を目の前で生き返らせたことから始まるガールミーツガール。時間警察が突撃してくるシーンでは大絶叫しました。クラスメイトの正体とか物語構造とかよく考えてみると『粘膜少女戀愛奇譚』(2022)とかの原型かもしれない(今気づいた)。こういう話好きなんだなぁ。
この時の公社はせんがわ劇場演劇コンクール前で公社の事なんて誰も知らない状態。そういうこともあり1日目は宇宙論☆講座の後だったのだが、宇宙論が終わった瞬間満員のお客さんが出て行って4人だけになった。よく見たらその4人全員友達。2日目はお客さんが減らなかったので嬉しい、そこそこウケた。知り合いでも何でもない無名の赤の他人なのに、突然オファーが来た。オルギアというかhocotenさんフットワーク軽い。
十三番
りっくんがっくん『りっくんがっくんの踊りと歌』
兄弟の歌と踊りに、三葉虫マーチ参加(だった気がする。何しろ5年前のことなのであやふや)。やけくそぎみにも見えるパフォーマンスに大盛り上がり。公社流体力学よりもウケてた。現在は解散し金田陸、カネダガクとして活動。盛夏火などに俳優として出演。
十四番
コンプソンズ『ガールズバンド』
女子高生達のパンクな青春かと思いきや、パンクの定義や男で大騒動。イカレタ男の乱入で血みどろのバイオレンス展開。そこから最終的に向井秀徳が乱入してきて(劇中の話ね)謎の大団円。パロディーの多用でこういうナンセンスコメディ劇団なのかと思ったら本公演見たらシリアスでびっくりした記憶。コンプソンズが公開している映像とタイトル違うが、当時のパンフレットに『ガールズバンド』とタイトル記載があるのでその表記で書く。
十五番
鳥模倣クラブ
お笑いコンビ春とヒコーキとピン芸人町ルダさんによるユニット。2組のネタとユニットコント。2組のネタは面白かったが、鳥模倣クラブとしてのコントはヤバイやつ二人とツッコミでマッドな笑いがたっぷりで更に面白。この時は無名だったが、春とヒコーキのぐんぴぃがこの後にバキバキ童貞としてブレイク。何で売れるかわからんね。
十六番
イヌガイ 「トイレの神様・新約」(映画上映)
ディレクターの土井省吾とパブロ学級の恵庭W之介による映画製作グループ。この作品はうんこ映画祭2018大阪でグランプリを獲得。トイレから現れた糞尿まみれの女神に誘われ過去に戻る男を描いた作品
十七番
じゅりあなたけし 『てるくはのる』(映画上映)
すべてを把握したい女のエスカレートする欲望を描いた映画。しかしの最中に実在のストーカー女性へのインタビューが挟み込まれ、リアルとフィクションが混ざる異色ストーカー映画。生々しいエキセントリック。
十八番
ボボライブ
(オルガナイザーGX/ティッシュラッシュ/マザー・テラサワ/シオちゃんハセちゃん/ルンルンキンジョウ/プラネットレジェンド大西健介/ズンズンポイポイ/山村和光/ラムズ風間/もう1人のふるちゃん/大陸/日本クレール)
お笑いコンビオルガナイザーGXが主宰するお笑いライブ。オルギア自体がイベント内イベントなので、これはイベント内イベント内イベントだ。地下芸人たちが多数出演。
ティッシュラッシュは刻み方が良い。マザー・テラサワはダンディ坂野は宗教であるという変な説を変な理屈で観客に納得させる、大陸は何でもかんでもパンと絶叫する男なのだが、突然にパターンを崩し爆笑を起こすテクニカルなネタ。オルガナイザーGXはワードセンスが恐ろしく魔球。あまりにも滅茶苦茶なネタで困惑だけ生み出したプラネットレジェンド大西健介。ラストは尻を叩いて終わる
尚、当日仕事の都合で出演キャンセルした芸人がいるのだが、その芸人の名はヒコロヒー。この感想書くために出演者確認してビックリした。ブレイク前の若干の邂逅。
十九番
としくに
大トリのとしくにはチ〇毛を燃やす。実際に燃やした。尚、最初にこれからやることを宣言し、男の全裸を見たくない人は今すぐ退出するようお願いしていた。いきなり脱ぎだすとわいせつ物陳列罪だが、観客の同意の元であるのならば合法だという。確か暗闇の中で毛を燃やす炎だけ輝いていたような。あまりにもひどい悪臭が漂い、公社は会場から飛び出しトイレで吐いた。トイレが近くで良かった。
出演者がラストで嘔吐する演劇フェス。これがオルギア視聴覚室だ(風評被害)。
次は後編、翌年のVol.5。アングラの祭典Vol4に対し、Vol5は恐ろしく豪華なラインナップになった。次の記事をどうぞ