ゴキブリコンビナート「痙攣!瘡蓋定食」 の感想
作・演出:Dr.エクアドル
7/28〜31(会場:埼玉県川口市某所)
女から分泌された体液を使うローション工場。そこに潜入したのは行方不明の女を探す男。そこで女は限界集落に行った聞き怪しげな村へ向かう。彼の脳裏には初めて出会った光景が浮かぶ。妹と共に経営していた体液クラブに現れた彼女。実は妹とは因縁のある人物で。
史上初、脚立に登って入場する演劇。
登った先には、螺旋階段状の客席があり最下層には水の入っていないプールがある。迷った結果、一番上三階の端っこで観劇することにした。間違いなくこの会場で一番安全な場所だろうから。
案の定、二階より下はとんでもない量の水が降り注ぎ・噴出し、挙げ句の果てに本物の燃え盛る松明が客席を疾走して水責め・火責めの大盤振る舞い。
じゃあ三階で高みの見物、とはならず。水はかけられ俳優たちは乱入し、下層ほどでなくても巻き込まれる。絶対安全席なんて存在しない。
女を探す旅は、孤児院時代の過去話となるのだが、実は孤児院の姿をした児童売春施設でその裏には権力者の姿がある。獣と交わる子供たちの姿は、まさしくエログロ。しかしゴキブリらしいマヌケ感が描かれる。
中々ハードな内容、と思いきや例年よりライトな仕上がり。
なんとこの作品、最終的にはラブコメに着地するのである。邪悪な児童施設という地獄から抜け出した兄妹、地獄で愛を求める女、地獄から追いかけてきた男。みんな恋を求めて走り回って、ハッピーエンド。
こんな内容でハッピーエンドにできるのはゴキブリだけだよ。
役者は暴れまわり、舞台の骨組みにまたがり宙づりになり。そして、大終盤頂上にある吊り橋(足場が縄でつながってるだけの簡素なもの)に役者が掴まった状態で、ほかの役者陣が骨組みごと揺らす。
考えてみて、人がただ掴まっているだけの7、8メートルくらいある巨大な骨組みが右に左に大きく揺れる姿を。勿論、Dr.エクアドル氏は本職の舞台美術家なので安全なんだろうけど、それはそれとして怖い。
本当に、よくこの内容で死人が出ないなと感心する。自分が役者だったら怖すぎてやりたくない。その分どえらい迫力に仕上がった。こんなのはゴキブリだけだ。
社会の底辺の苦しみは薄めで、初心者向け。 でもこのダイナミックさは他じゃ味わえない。
アバウト30年のキャリを持つにもかかわらず客席は老化することなく若い人も見に来ている。唯一無二。