
かながわパフォーミングアーツアワード2024 の感想
かながわパフォーミングアーツアワードのコンペの感想。
元々、神奈川かもめ演劇祭として始まり、かながわ短編演劇アワードになり2回目の改名。安定しないねぇ。
元々アート色の強いコンテストだったが、この改名はその表れか。
6団体の作品が上演され、グランプリを目指す。
またコンペ外である高校演劇2校、神奈川県立厚木高等学校演劇部(3月16)日々輝学園高等学校横浜校演劇部(3月17)も上演される。これが変わらないのは嬉しい。
DANCE PJ REVO「STUMP PUMP YOKOHAMA」
現れたダンサーたちはまるで労働するかのように、段ボールを運び入れ巨大なビルディングを築き上げる。
数々の受賞歴を誇るダンサー田村興一郎プロデュースカンパニー。見るのは初めてなので、小道具めちゃめちゃ使うんだなぁと。でも、労働者の動きがキレがあってダンスの見せ方として捻りがあって面白かった。着地は手堅いけど、もうちょっと遠くの着地点も狙えたんじゃ無いかと思う。
世界劇団『the replication』
体を寄せ合う二人が話し合うが、話はまとまらない。
せんがわでオーディエンス賞を受賞した愛媛の幻想劇団なので、もっと物語色の強い作品を描くかと思ったらセリフの見せ方はあれど、パフォーマンス色の強い内容で驚き。ただ二人が話すだけだが、くんずほぐれつの肉体で空間を使い世界観がどんどん飛翔していく。
サンロク『三本足で山を登っている!』
自己紹介のような私演劇のような軽やかな作品。福島、千葉、兵庫という各地方を拠点とする演劇人によるユニットだがローカル感は薄い。メンバーが佐藤真喜子、松崎義邦(東京デスロック)、山田遥野(青年団)ということもあって現代口語のスタンダード的。面白いけど、少々文章にしづらい面白さ。見たらわかる。
老若男女未来学園(2年連続2回目)『一度に全部は無理だとしても』
男女が喋り下手な友人を聞き役にして相談屋を始める
昨年は無名の状態で初選出され高評価、2年連続選出。人間関係の微妙な距離感を描き、出場団体の中で唯一ストレートな演劇。しかし、友人役を人間とロボット二人(一人と一台)一役で演じる。人間が操作するシステムなのだが、機械の不用意な動きで相談に来た女性を傷つけてしまう所が、人同士のままならないコミュニケーションをユーモラスに表現。
譜面絵画『ホームライナー新津々浦1号』
とある夜のたわいもない会話のワンシーン。
かながわ短編演劇アワード時代に戯曲コンペに2回選出されたが、本選には初登場。自己紹介から始まり、シームレスに本編へ。軽やかな現代口語演劇なのだが、広告に追いかけられた知人のようなシュールなアイデアも含まれる。イメージの膨らみをしかし、口語の地平から離れないように。
神田 初音ファレル『懺肉祭 ~希求夜想曲 Ver.~』
ステージ脇で家族のエピソードを語る神田、そしてダンスへ
今回唯一のソロダンサーは、パーソナルな語りから始まる意表を突く構成。暗闇で一人孤独にスポットライトを浴びてポツポツと語る。しかし、暗転から一転証明と肉体が混然一体となったソロダンスへと移行する。照明によって作り出す光景は、幻想的でその中で肉体にものがたりを宿す。
粒揃いだけど強い本命がない中で最後の神田が持っていった。
というわけで優勝予想は、神田 初音ファレル
そして結果は、神田 初音ファレルがグランプリ。やっぱり。
観客賞がアイデアが秀逸だった老若男女未来学園
MVPが戯曲を評価されて三橋亮太(譜面絵画)。
パフォーミングアーツが強いのでダンス勢に比べ、会話劇勢は地味に映るかと思ったが三橋が評価されるので肉体派だけじゃないよと目配せ。
今年はどれ見ても面白かった。