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劇団ヅッカ+Paul.U『登録された鉄の隙間、風の子たちのステップ』 の感想

作・演出/マツモトタクロウ(会場:Traffic Tokyo 六本木)

ハクビシンを見る相手の気を引きたくて彼女は嘘をつく。タップダンスする男や手が長い女性と知り合いになって。

今回は、ミュージシャンPaul.Uと共作したアルバムの発売記念パーティの表題作として上演された作品。

出番がPaul.Uを含んだDJに挟まれる形で上演される。選曲がシアトリカルで、劇への期待を高める。
連射される不可思議な言葉はリズムとなり壮大な光景へと 現実から飛翔するイメージが連なるも、純粋な思いが物語を強固にする。
会場は六本木の地下にある秘密クラブめいた空間。地下神殿のような作りで
正面舞台と、会場の後ろ部分にある2回の渡り廊下に当たるロフトの2面使いをする。
凛×天歩企画に提供した「かに 座の女の子とい かに クラブで仲良くなる かに よる」で見せたデーモンズ的ナンセンスやり取りを今回も披露する。というか、今回はがっつりモヘーさんが俳優として出ている。かに座では映像出演しており、マツモトさんってデーモンズから影響受けてんだなぁと。
良いけれど、『演劇:恐怖について』『祭典:RAKUDA』のようなリピートの使い方で観客を殴ってくるオリジナリティに胸躍った身としてはフォロワーのような方向よりも、独自の世界を見せてほしいと思う。
ただ、別の意味のオリジナリティはある。方法論は影響を受けているが描くものはまるで違う。
デーモンズが混沌へ向かう道筋なら 劇団ヅッカは青春。 アナタと私のセカイ系と言うべき広がりを使って気持ちを爽やかに描く。
ナンセンスさも狂気よりも脱力的な雰囲気を作り上げる。それによって登場人物たちの親密な空気を作り上げる。白い衣装の彼らも相まってまるで寓話のような世界観。
ヅッカはいわゆるポストモダン文学的な質感、を持ち合わせており物語構造をデザイン化。単純化し再構成することで新しい姿かたちを創造する。
そして、この作品においては感情がデザイン化されている。
一見デフォルメされているように見えて、その感情の深い部分を表象化している。


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