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若手演劇人三冠2023(若手演出家、かながわ短編、せんがわ劇場)

文学賞三冠という言葉があります。これは、
大衆文学の直木三十五賞、山本周五郎賞、吉川英治文学新人賞
純文学の芥川龍之介賞、三島由紀夫賞、野間文芸新人賞
 という二種類三つの文学賞であり、新人・中堅の作家の登竜門と言えるこれらの受賞によって知名度を高めていくわけである。文学界は上手くこれらのブランド化に成功した訳だ。
 演劇界に足りないのはこのブランドだ。正直演劇界において、若手向けの賞を受賞したところで大きな影響がなかったりする、受賞結果が話題にもならない。それは大勢の人が演劇コンクールとかに興味がない存在自体知らないからだ、ならば文学賞三冠のような権威づけをするブランディングをしようじゃないか。
 ということで勝手に若手演劇人が取るべき登竜門的3つの賞を若手演劇人三冠と呼ぶことにする。それは

若手演出家コンクール
かながわ短編演劇アワード
せんがわ劇場演劇コンクール

の三つだ。これらは短編上演をして勝敗を決める物で、無名の若手が取れる賞なのだ。他にもいくつか上演を評価するコンテストはあるが、お題の戯曲があったりラインナップが有名どころ中心だったりなので無名の若手劇団の特色がわかるコンテストとなるとこうなるのだ。
関東ばっかりなのは、関西の賞を知らないから。知ってる人が関西版作ればいいじゃん。
 ということで2023年の三冠最前線を紹介します。

若手演出家コンクール

2/28~3/5

春陽漁介(劇団5454)「宿りして」(東京)
 こりっち舞台芸術まつりにも選出経験のある実力派。
西田悠哉(劇団不労社)「生電波」(京都)
 ロームシアター京都と京都芸術センターの若手進出企画“KIPPU”に選出
ニノキノコスター(オレンヂスタ)「「サトくん」のこと」(愛知)
 名古屋の人気劇団として10年以上のキャリア。数々の候補歴、P新人賞受賞。
村田青葉(演劇ユニットせのび)「アーバン」(岩手)
 かながわ短編演劇祭の戯曲コンペを優勝した岩手の実力派。東京へ殴り込み

 割とメジャーどころから外れた人選をするコンクールだが、今回は各地区の代表を集めましたという感じで驚きはないけれど安定したいいラインナップ。全員何らかの賞や若手企画に選出されているので、今年の3冠で最もお買い得感がある。
 なお、次点が発表されている。下平慶祐(ex.もぴプロジェクト)、はぎわら水雨子(食む派)、ここが入っても面白かったとと思うが。
 3/6追記 観たので感想書きました。


かながわ短編演劇アワード

3/25~26

県立座間総合高等学校演劇部「お前が邪魔で勉強ができない 女×女ver」(神奈川)
魔法少女JINDAIS☆「マジカル人付き合い」(神奈川)
 という、高校演劇枠から二校
関田育子「micro wave」(東京)
 マレビトの会出身で独自のミニマルな作風が評価されている
演劇ユニットせのび「レーン」(岩手)
 若手演出家コンクールに続き二度目の登場
白いたんぽぽ「ひももも」(大阪・東京)
 ファンタジックな物語を描く
スペースノットブランク「また会いましょう」(東京)
 独自の空間芸術でせんがわ劇場演劇コンクールに続く三冠二つ目を獲れるか
老若男女未来学園「シーユーレーター」(愛知)
 日常にユーモアをねじ込む作風

 3冠の中で唯一高校生枠がある賞。前身のかもめ演劇祭合わせると、アート色強いのを評価するコンクールに見える。少なくともエンタメ系の分は悪い気がする。関田育子はこういうコンテストに出るんだぁと勝手に驚いた。
 実は、同時に戯曲コンペも開催するのが特色でそちらは打土井大「ロコモコ・ヤミ・アロハ」、近江就成(劇団春泥み)「最終バスの住人たち」、髙谷誉(D地区)「おかえり未来の子」、中村大地(屋根裏ハイツ)「ナイト・オン・アース(remix)」萩谷至史(mooncuproof)「ユニフォームの中は」 が候補。

追記
大賞&観客賞は関田育子「micro wave」
戯曲大賞は髙谷誉「おかえり未来の子」
関田は現代口語演劇の新たな才能と言われて評価が確立してたけど、何かしらの受賞するのは今回が初めて。高谷はAAF戯曲賞でも最終候補に選ばれていて、気鋭の劇作家として上昇したか。


 

せんがわ劇場演劇コンクール

5/20~21

TeXi’s [ティッシュ]『夢のナカのもくもく』(東京・神奈川)
 
手数の多い演出で抽象的な人間ドラマを上演する若手劇団屈指の天才。ファンタジックなタイトルに反して谷崎の名作『春琴抄』をベースに人間の抱える問題を描く。
さんらん『シャーピン』(東京)
 下町・葛飾を中心に活動する人情劇団。今回はシャーピンの屋台を生業にしているテキ屋の男がシャーピンが出せなくなったことを描く人情悲喜劇。
終のすみか『SUNRISE』(東京)
 知名度は低いが、人間関係を空間の機微で描く演出で新たなる才能を感じさせる要注目劇団。喧嘩をした人物を描くということ位しか分からないがどんな作品になるか。
演劇ユニットせのび『リバー』(岩手)
 若手演劇人三冠トリプルファイナリストですべて別の作品で勝負する岩手の実力派。人間ドラマをアイデア溢れる空間演出でドラマとアートを融合させる。三冠三部作最後の作品は、盛岡と東京は新幹線で一瞬・国道も繋がっていているのに遠く感じる街の関係を描く。
劇団野らぼう
『ロレンスの雲』(長野)
 巨大な人形を扱う長野の野外専門劇団。P新人賞受賞経験もある人形演劇の雄が殴り込み。ロミジュリをベースに雲の世界を旅する夫婦を描くという。長野の野外劇団が東京の劇場で勝負
 
 3冠の中でもノンジャンル色が強いコンクール。人気劇団の中に無名の変なことやる団体が入ってくることがよくある。ただ今年は未知の団体寄りか。この中だと受賞歴のあるせのびと野らぼうが有利か。せのびは史上初の三冠王達成の可能性あり。
 野らぼうは、若手演出家コンクールのオレンヂスタに続きP新人賞大賞受賞者の登場。Pは日本唯一の人形演劇専門のコンクールなのに知名度が低い。
 私がいつも天才だと褒めているTeXi’sは賞レースに現れるのは東京学生演劇祭以来。是非とも若手トップの才能をかましてほしい。
 ここは、1次審査2次審査を経てファイナリストを決めるが1次審査通過団体も発表している。
エンニュイ、 劇団ジャンガリアンハムスター、 QoiQoi 、自己批判ショー、白いたんぽぽ、Sky Theater PROJECT、田中寅雄Produce、ダンスカンパニーデペイズマン、 不条理コントユニットMELT 、 マリアッチ。
 この中だと、昨年の若手演出家コンクールファイナリスト・田中寅雄Produce、かながわ短編ファイナリスト経験の白いたんぽぽ(上に名前があるね)・エンニュイ何かが入っていてもおかしくなかった訳だ。せのびは去年2次審査落選からの今年本選なので、今年落ちた彼・彼女らも来年頑張ってほしいね。


さて、3/3現在。まだ上演を見ていない状況で予想をすると

☆ 若手演出家コンクール
村田青葉(演劇ユニットせのび) 
このコンクールはは新しさよりテクニックを評価する傾向があるんで。最もそつのなさそうな所を。

☆ かながわ短編演劇アワード
スペースノットブランク
 
3冠の中で最も舞台が広いせいか、視覚的に面白い所を評価するイメージなので空間芸術味のある所を。過去にもファイナリスト経験があるのもプラス。

☆ せんがわ劇場演劇コンクール
終のすみか
 お前TeXi’sのファンじゃないんかいと言われそうだが、あそこは自力で売れると思うので地味で発展途上だけど明らかに才能のある劇団がこれを機にスターになってほしいと思って。

もう一度書くけど、この3賞を獲ってもフーンとしか思われないことが多々ある。が、3冠というブランドを作ることによって、これらの受賞者ですと言っただけで「この人は演劇界ですごい人なんだ」と思われて仕事がバンバン増えるようになる。なにより、どの劇団を観たらわからない時の絶対的な指針(若手の中でもここを観れば外れがない)は演劇文化を広めるに絶対必要。
 だからみんな、演劇コンクールの優勝者はすごいってのを積極的に広めて、仕事どんどん増やしてあげよう。皆お金が欲しいから。

※5/26追記
3冠全ての結果がでました

● 若若手演出家コンクール/ニノキノコスター(オレンヂスタ)
● かながわ短編演劇アワード/関田育子
● せんがわ劇場演劇コンクール/劇団野らぼう

はい、予想全滅。
今年P新人賞 の大賞受賞者2団体が勝利、P新人賞出身ともいえる。日本唯一の人形劇専門の演劇賞なのでこれで知名度をもっと上げてほしい。

これらは予想外の結果という訳じゃなくて普通に優勝候補が順当にとっているので十分当てられたのだけど、ことごとく公社は見る目がないな。
特にせんがわなんてこれで4連敗。
過去、公社がファイナリスト発表時の段階でやった受賞予想は第10回がキュイ、11回灰ホトラ、12回ほしぷろ、13回終のすみか。ことごとく相性が悪いんだなぁ

by公社流体力学
 
第10回せんがわ劇場演劇コンクール【【【 優勝 】】】

(公社は自分がグランプリを獲った回も外しています。真っ先に自分をグランプリ予想から外しました。)

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