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若手演劇人三冠2024(若手演出家、かながわパフォーミング、せんがわ劇場)
若手演劇人三冠とは、若手演劇人が取るべき登竜門的3つの賞
若手演出家コンクール
かながわパフォーミングアーツアワード
せんがわ劇場演劇コンクール
のことである。
東京圏の賞だが全国の劇団が対象であり、上演主体のコンテストで戯曲賞でもお題の戯曲があるわけでも、無名有名バイアスもかからない。そんな賞がこの三つ。
文学賞とかスポーツとか映画にはあるのに演劇には三冠がないから私が勝手に呼び始めた。今年のファイナリストが全て決まったので紹介。
去年の
若手演出家コンクール
2/27〜3/3(会場:「劇」小劇場)
三冠の中で最も歴史のある賞。メジャーどころから外れた人選をすることが多いが今回もそういったラインナップ。
大信ペリカン(シア・トリエ) 『驟雨』
1996年結成劇団を率いる福島のベテラン。地元でアートスペースを運営しながら、ギリシャ悲劇のアレンジ、福島原発演劇、音楽コメディ、幅広く作る芸達者。
鈴木あいれ(コメディアス)『キャッチミー開封ユーキャン RTA』
重い物を運ぶ、箱に閉じ込め脱出、といった設定を実際に俳優にさせる物理的コメディの人気者。その箱脱出作品をリアルタイムアタックに。失敗したらどうすんだろう?
中山美里(演劇企画もじゃもじゃ)『不眠症と河』
人と人との間にあるもじゃもじゃを探究した作品作りだそうだが、パンが喋ったり、自作BL漫画の演劇化などちょっと風変わりな作品を上演してるそう。
八代将弥a.k.a.SABO(16号室、room16)
『演出家コンクール最優秀賞受賞予定作品』(5年ぶり2回目)
愛知の実力派が2回目の登場。前回は青年の心の闇を空間の枠を作って演出。以降、名古屋に根ざした活動で脚本を手がけた短編映画がNAGOYA NEWクリエイター映像AWARDグランプリ。いよいよ名古屋から飛び出すか。
※追記、結果が出たので感想書きました
かながわパフォーミングアーツアワード
3/16〜17(KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ)
4年ぶり2回目の改名。しかも、かもめ時代のことをなかったことにしてるし。元々、アート寄りの人選だったがパフォーミングアーツ全体を対象にしたことによって、よりほかの2賞よりアーティスティックに。
神奈川県立厚木高等学校演劇部(3月16)
日々輝学園高等学校横浜校演劇部(3月17)
三冠唯一の高校演劇枠を導入しているのは変わらないのは嬉しい。
DANCE PJ REVO「STUMP PUMP YOKOHAMA」
数々の受賞歴を誇るダンサー田村興一郎プロデュースカンパニー。シビウ国際演劇祭でも上演し、金沢21世紀美術館のアンド21にも選出されるなど中堅ダンスカンパニーとして着実な歩み。
世界劇団『the replication』
せんがわでオーディエンス賞を受賞した愛媛の幻想劇団が、2冠目を目指し神奈川へ登場。オールドスクールな構えで描くファンタジーの中には現代社会の叫びが込められている。かながわではグランプリ獲ってリベンジ。
サンロク『三本足で山を登っている!』
福島の佐藤真喜子、千葉の松崎義邦(東京デスロック)、兵庫の山田遥野(青年団)という各地方を拠点とする演劇人によるユニット。昨年は集団制作による作品を手掛けているが、今回はどのような作品か。
老若男女未来学園(2年連続2回目)『一度に全部は無理だとしても』
昨年、無名の状態で初選出され無冠を嘆かれる高評価を獲得。今年行った東京公演も素晴らしかった。人間ドラマの中に映像も使った妙に緩いユーモアを取り込む独自の空間芸術。2連続選出は勢いの証。
譜面絵画『ホームライナー新津々浦1号』
かながわ短編演劇アワード時代に戯曲コンペに2回選出され戯曲で高い評価を得ていたがいよいよ本選ファイナリスト。現代口語のフィールドで評価された劇団は戯曲の構造に意識的で、観客における新たな体験性を作り出す
神田 初音ファレル『懺肉祭 ~希求夜想曲 Ver.~』
横浜ダンスコレクションで奨励賞を獲得したダンサーは、刀剣乱舞や緑黄色社会との共演など活動を広げる。しかし、今回唯一のソロダンサーとして賞取りに挑んでくれるのは賞レースマニアとしてうれしい。
※ 結果が出たので追記
せんがわ劇場演劇コンクール
三冠の中で最もノンジャンル色の強いコンクール。ここは一次審査突破団体発表後に本選審査員が二次審査を行いファイナリストを出す。セミファイナリスト11団体のレベルが高く、どこが通ってもおかしくなかったがこのメンツを見てなるほどそう来たかぁと唸った。アート系と物語系のバランスが取れたラインナップ。今年は全くの無名がいないのは寂しいが、全団体面白いと質は保証します。何故なら私は一次審査員。
喜劇のヒロイン『いない、いない、いないっ!』
愛知と東京の2拠点で活動する団体は、人を食ったようなユーモアを武器に二回目の一次審査を突破、ついにファイナリスト。親しみやすい若い才能はオーディエンス賞の最有力かもしれない。
佐々木すーじん『kq』
ダンサー・音楽家であり、scscsとして活動しながらソロでAAF戯曲賞最終候補にも残る才人。そのソロで、演劇コンクールという場を大いに荒らすことができるか。この異能は台風の目になりうる。
バストリオ『セザンヌによろしく!』
パフォーマンスアートコレクティブ。人間・時間・音を大きく広げていく豊かな空間芸術。独自の作品を制作し高い評価を受けている彼らが、演劇コンクールという場もアートで埋め尽くす。
ポケット企画『さるヒト、いるヒト、くる』
北海道から飛び出し全国学生演劇祭の頂点に立った彼らは、その歩みを止めることなくおうさか学生演劇祭で優勝、WINGCUP参加と大阪でも活動。そしてついに、北海道演劇の至宝を東京は知ることになる。
屋根裏ハイツ『未来が立ってる』
利賀演劇人コンクールで優秀演出家賞受賞、田畑実戯曲賞受賞と演出・戯曲で目覚ましい活動をする若手劇団がかながわの戯曲コンペに続き、2つ目の三冠取りへチャレンジ。その才能の頂点を示せるか。
、なお、ファイナリストへあと一歩だった一次審査通過団体はどれも面白い団体なので彼らも要チェック
● 紙魚、● ドライブイン札比内、● 努力クラブ、
● 人間の条件、● マリアッチ、● 令和座
※ 5/19結果が出たので追記
という、感じ
さて、このなかではなかなか面白い関係がみられる。
“ サンロク ”の松崎は俳優として譜面絵画の公演に参加。
若手演出家ファイナリスト・“ 中山美里 ”の演劇企画もじゃもじゃはせんがわ一次突破の“ マリアッチ ”と対バン公演を行っており主宰がコンクール上演作品に俳優として参加。
“ 老若男女未来学園 ”と“ 喜劇のヒロイン ”は共にもう一団体を加えて合同イベントを行ったことがある。
というように切磋琢磨した演劇人たちが成果をあげ続けている。
そういえば、三冠すべてに愛知の団体が選出されている(八代に上記の喜劇・老若)。愛知というか名古屋は独自の演劇文化があるが近年は今一つその存在感が薄かったが、ファイナリストたちを始めとして若手劇団たちが高い評価を受けるようになり、今また名古屋の演劇が熱くなり始めている。(去年の若手演出家優勝も愛知のニノキノコスターだし)
最後に現段階の優勝予想すると
● 若手 大信ペリカン(シア・トリエ)
● かながわ 老若男女未来学園
● せんがわ 佐々木すーじん
若手は、意欲的な演劇より技術評価をするんでここは場数を踏んでいるベテランが取ると予想。逆に鈴木あいれは最下位。そして私がだから若手コンはダメなんだよとキレる(公社好みの演出家は評価が伸びないジンクス)。
かながわは単純に好きだから。普通に考えるとダンス2団体か譜面絵画なんだけど、老若のこないだの公演が面白かったから御贔屓を押さないバカがどこにいる。
せんがわは、一番ここが受賞したら面白いというワクワク重視。
結果、これまでの傾向とか読んで予想したのが若手コンのみという結果に。
だから予想はずれてばっかなんだよ公社は。
※ 5/21追記
結果が出ました。
● かながわパフォーミングアーツアワード
神田 初音ファレル『懺肉祭 ~希求夜想曲 Ver.~』
● 若手演出家コンクール
八代将弥a.k.a.SABO(16号室、room16)
『演出家コンクール最優秀賞受賞予定作品』
● せんがわ劇場演劇コンクール
バストリオ『センザンヌによろしく!』
事前予想全外し!
しかし、悔しくないのは鑑賞後の予想が初めて全当たりをしたのだ。神田とバストリオは圧倒的だったし、傾向を読んで八代優勝を予想して当てた。
しかし、せんがわは対抗馬なしの圧勝と思っていたのに無冠を繰り返してたいた(盛夏火、せのび)ので、バストリオ無冠の世界線も考えていた。
が、さすがにそんなことなかった。
充実のコンテストでした。
筆者
公社流体力学
(せんがわ劇場演劇コンクール10代目グランプリ。
自身が出場した回は真っ先に自分を優勝予想から外したため、とんでもない大外しを自分で引き起こしたマッチポンプ型の予想屋)