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PSYCHOSIS 「HOKUSAI and the Dr.Caligari」 の感想

作/高取英 演出/森永理科 (会場:BUoY)
11/1~5

ナチスドイツは、ドイツを代表する映画監督フリッツ・ラングの代表作『メトロポリス』に登場するロボットを実際に作る計画を立て、カリガリ博士に依頼する。そのフリッツ・ラングは北斎の春画を映画化しようと計画する。ナチスドイツが暗躍する時代よりはるか昔、娘のお栄と共に暮らす葛飾北斎は呑気に風呂に入っていた。

月蝕歌劇団の流れを汲む団体が、高取英の『カリガリ博士 −葛飾北斎とその娘お栄篇−』をアレンジ。荒唐無稽な内容をBUoYの空間名一杯使って描く 王道アングラエンタメ。
猥雑とした世界観で、ビジュアルバリバリの俳優たちが縦横無尽。白塗りにナチスの制服は何て相性が良いのだろうか。アングラでしか得られない栄養を摂取。

 平和に暮らしていた北斎は一人の花魁を助ける。彼女は北斎・お栄親子と親交を深めるが実はタイムスリップしてきた人間であり、これによってナチスの陰謀に巻き込まれてしまう。こんな無茶苦茶な設定にも拘らず、一人一人の心情を丁寧に描写し、ナチスという世界で巻き起こる陰謀派閥も描く。その果てにあるのは物悲しい終わり。手練れの集まりで、安定感がありながらパワフルで濃厚。
 アングラが額縁演劇から解き放たれて、広々とした世界を作り出している。過剰なまでのエネルギーは舞台の上では収まりきれず、空間を広く使うことによって異空間を作り出す。

でも全部成功とは思えない。 マジでBUoYというのは難しい場所で、空間を使い切ろうとすると空間に飲み込まれてしまう。今回も、飲まれて散漫に感じた部分があった。結局は部分で演技をしており、メインで使うところがいくつか決まっていた。全部使い切ってやるという意欲はあるが、見せ方を考えるとこういう演出になったのだろう。

私はBUoYでの上演をいくつも見たが、BUoYの使い方で100点満点出したのはゴキブリコンビナート『膿を感じる時』だけ。 それだけ難しい。
拷問のシーンは客席から見づらいところで行い、映像を壁に映し見れない観客がいないようにしていたが、映像いらない。拷問と呻き声だけ響かせ、観客に想像させる方が個人的に好き。映像自体は良かったけれど。
そう、もっと観客が見れず声だけで想像させるくらいの乱暴な使い方を期待していた。
結局、行儀がよく常識的なのだ。

とはいえ、流石の面白さ。 やっぱりこういうの好きだなぁと。
あと、演劇のクオリティと関係ない話なので最後に書くが 森永理科さんは中学生時代に『みなみけ』『瀬戸の花嫁』を見て好きになった青春時代憧れの声優さんなので本物だぁという思いで見てた。

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