多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 『メビウスの輪〜縁の交わり〜』 の感想
多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 六期生 卒業制作演劇公演
『メビウスの輪〜縁の交わり〜』
オノマリコ、野田秀樹の脚本を 佐藤佐吉見本市で観客の度肝を抜いた陰山あんな 勢いと熱量と団体芸で東京学生演劇で爪痕を残した旦 妃奈乃(四日目四回目) が演出。
『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』
演出:陰山あんな
女子大に入学した学生たち。彼女たちは仲良くなったり仲を違えたり。そんな中旧体育館の解体工事を知り数人の学生は反対運動をする。
オノマリコの幻想的青春演劇を陰山が演出。優しい手触りで彼女たちの心に触れる。わたしは陰山をトンチキ演劇の新星だと思っていたが、どうやら先人の演出を噛み砕いて構築する演出家っぽい。 今回は大分優等生。 幻想でありながら彼女たちの琴線に触れる演出は安定しているが、演出家の個性という意味では弱いかな。 ただ、俳優の軽やかな身体に見本市のカエルの痕跡を見たりした。
『エッグ』 演出:旦妃奈乃(四日目四回目)
寺山修司の未発表原稿。それはエッグというスポーツで東京オリンピックを目指す物語。
野田秀樹の脚本を5割カットし旦が加筆したRemix版。 勢いと熱量と団体芸を武器とする旦の演出に野田の荒唐無稽な物語はバチバチに相性が合う。 うわぁ面白い。
四日目四回目を学生演劇祭で見た時は旦のナンセンスな脚本も合わさり、抜群のパワフルさだったが同時に荒削りな部分も多かった。しかし、野田の脚本という武器を手に入れた今回は演出の力強さがダイレクトに味わえた。 いやまぁ、あのナンセンス脚本も好きなんだけど。
どんどん進んで行くテンポ感で笑える部分もきっちり仕上げる。へんてこりんな部分なんて旦の得意分野だ。 後半、エッグの正体が明かされて以降スピードを落とす。丁寧に心情を紡ぐ。でも力強さは忘れない。彼らの叫び寺山の叫び、旦はそれをちゃんと観客まで届ける。