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オルギア視聴覚室vol.5(2019年) の感想

現代東京小劇場業界、最重要イベントの感想をTwitterよりサルベージ。
2018年のvol.4を前編、2019年のvol.5を後編としてお送りする。の、後編。
cinra主催のロックフェスのサブカル版、NEWTOWN内のイベントとして開催。10月19日、20日の2日間に渡り開催。下は、CINRAによるNEWTOWN全体の記録映像。オルギアからは劇団ジェット花子、天ぷら銀河の映像が使われている。


順番は20日をベースに、19日のみの出演者をミックス。



宇宙論☆講座 『SMAPのカバーを中心に』
 (20日のみ)
 JASRACから許可を得てらいおんハートをカバーをするため、集まった宇宙論の出演者一同。のはずだがメンバーの肉体がドラムだったことが判明し大騒ぎ。ワチャワチャドタバタ大騒ぎして、ラストにらいおんハートを全員で大絶叫(≒熱唱)。音程滅茶苦茶でも関係ない、これぞパワープレイ、カオスの嵐で大爆笑、最高。

ピーチ コント三本立て「ヘレン・ケラー」「優先席」「火事」
 
有名な逸話を水の連呼で気づけば詐欺事件に発展する『ヘレン・ケラー』老人に優先席を譲れ。正義感による行動が老人によって翻弄される『優先席』そしてタバコの不始末から友人の異常性が現れる『火事』。特に火事は傑作。機会があれば、自分で上演したい。でも、解散しちゃったんだよね。3人のキャラクターが際立ち最高だったんだけど。尚、2日目は音響トラブルで開始が遅れたのだが廊下から圧をかける栗田ばねさんが面白かった。

劇団ジェット花子 『ポンちひ郎の在宅介護について』
 
現役介護士のポンちひ郎が小規模多機能在宅介護について説明する。まさかの真面目な講座。サポートの劇団員3人の座ってるだけなのに出る異様な存在感。本来はナンセンス劇団らしいが、翌年に解散してしまったので最初で最後の観劇が介護講座だった。

天ぷら銀河 『笑うことがエロい世界』
 
女性の家を訪ねた男。親密な仲の二人だが徐々にアプローチし始めるが・・・。 恋愛物語の恋愛要素を笑いに置き換えるだけでここまで楽しい。舞台の真ん中に置かれたおでんが湯気を出しはじめたらそりゃもう展開は一つだけ。目の前でその通りの展開やられたらもう笑うしかない。天ぷら銀河は佐藤佐吉演劇祭参加、かながわ短編戯曲賞ノミネートなど気鋭の団体として注目を浴びるが活動休止。現在は主宰の伊東翼はソロカンパニー夜となくで活動中。

劇団「地蔵中毒」 『 リーディング公演、秋。』
石ノ森章太郎先生にロードローラーをぶつけるために努力する男の話や、脇の臭いを嗅ぐ等の詰め合わせ。一列に並び無感情で珍妙な内容をまじめにリーディングする、ラストは去年同様臓器提供に丸をつけて皆で喜ぶ。リーディングの殺傷度が更に上がった。

劇団どろんこプロレス『ぽんこつ』
 うんこ太郎一人芝居による一人の男の話。何をやってもダメなぽんこつ男は運命の女性と出逢い彼女のために頑張ろうとするうちに周囲から認められていき・・・。真面目で優しくて努力家、だけどそれが全部上手く行かない。どんなに頑張っても全部自分のせいで失敗する。あがけばあがくほど周囲から失望される。刺さる場面が多すぎる。彼に感情移入をしてしまう。頑張ってほしいがすべて奪われた瞬間の絶望感で叫びそうになる、もう止めてくれ彼は幸せになりたかっただけなんだ。うんこ太郎さん熱演。後にAPOFES2020で上演されオーディエンス賞受賞。公社流体力学賞短編部門受賞。

フェッティーズ(19日のみの出演)
 昨年は女王様三人組だったが、一人脱退し男性メンバーが加入。ただ、この時は女王様2人による出演。昨年に続き真面目なSM講座から、今回は沢山のマスクコレクション。教養とフェチのエンタメ。現在は方向性の違いにより活動休止。

MC松島(19日のみの出演)
 UMBや戦極といったMCバトルで活躍し、オルギアの2日前にアメトーークで取り上げられたばかりの北海道を代表するラッパー。(尚、オルギアはNEWTOWNから独立してhocotenさんが独自オファーしているので主催のCINRAの担当者がMC松島参加に驚いていた。)ゴリゴリのイメージに反してゆったりとした喋りのHIPHOP講座からの「さん」、「300秒で歌う人生」。ムードたっぷりでチルいシチュエーションでかますラップは流石の貫禄。自分の世界にした。現在は松島諒の名前でラッパーの他に映画監督や漫画家として活動している。


MONJU N CHIE(19日のみの出演)
 男女3人組のHIP-HOPクルー。会場を大きく盛り上げた3本マイク。教室が熱狂のライブハウスに。ノリのいいトラックに個性を与える男女のハーモニーでバイブスをぶち上げる。その後も活動を続け2023年、1stアルバム「MONJU N CHIE」全国流通発売。

オトウトの課題(19日のみの出演)
 MONJU N CHIEのMCオトウトのソロ名義。モンチエで熱くなった空間を一転して極上のメロディを奏でて優しく冷ます。でもただのチルではなく鍵盤オンリー、ギターオンリーと変化を与えて観客を飽きさせない。モンチエといいこの人は器用なミュージシャン何だなぁ。ラストは100年前のブルースで締める。

オオヤヨシツグ 「サッチー脱税→チーム消滅」(19日のみの出演)
 ミュージシャンでもあり、個展を開くイラストレーターでもあり、MV監督もする多彩さ。ラッパーだがこれがただのラップじゃない、これは魂の叫び。野球少年だった彼。とある有名野球監督の奥さん(まぁタイトルで分かるよね)が運営していた少年野球チームに所属するも、そこで彼に不条理が襲う。まだ小学生の彼にはどうしようもない。心に溜まった澱を叫ぶ。この曲のフックの絶望感とどうしようもない憤り。最近は幾何学模様(フジロックにも出演したバンド)のMVを共作で制作。



本橋龍(ウンゲツィーファ)(19日のみの出演)
 現代小劇場の重要団体であるウンゲツィーファの主宰。ソロで行っている朗読と弾き語りパフォーマンスをやるということなので演劇じゃないのかと思いきや。横にジェンガをする女(オルギア主宰のhocotenさん)が。パフォーマンスの最中に女と会話をする男、そしてその男は積みあがったジェンガを破壊する。ミニマルな装置で無限に広がる暗い世界。朗読と弾き語りでも演出1つで演劇に変わる。

盛夏火『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・デジタル・ハリウッド』
 イベント会場になった廃校の卒業生である男女。七不思議だったり昔を懐かしむ。ミュージシャンになったクラスメイトが、イベントに出演するという。そしてなんと彼女がバックバンドで出ることを知った男は自分もステージに出たいというが彼は楽器が出来無くて・・・。初めて団地を飛び出した盛夏火は、イベント会場を設定に取り込む青春(が既に終わった大人の)演劇。 成長した女性と知識ばっかりつけてガキのままの男。バカみたいな話の裏に過ぎた過去と現在の対比による悲しみがある


超集団!!チャネちゃん
 ある惑星に住む人々の話。4人組から次世代AI・せいこまじゅうの二人が参加。短編演劇、なのだが台本が直前に完成したため、今から次世代AIが暗記してから演劇をするという。暗記しようと必死な台詞が響く中、せいこまんじゅうさんが暴れる。19日は絵を描いたりして準備して20日は新聞を配り観客に持たせて舞台にあげて一体今何が起こっているのか分からない観客をそのままにして演劇をした。19日は大トリで、暗記が上手く行かないままイベントのスタッフが終わりの時間ですと登場して強制終了。これこそアングラ演劇。その後、前身団体colorful75歳での活動を活発化させるが続報なし。

ぎゅうにゅうとたましい
 変わった名前で示すように、独自の世界観を持つラッパー&トラックメイカー。ゆるやかな力の抜けたラップでどんどん世界が広がる。ソフトだけど、このラップは深い。現在もマイペースに活動中。

マーライオン
 曽我部恵一、澤部渡(スカート)からも評価される実力派のシンガーソングライター。サポートメンバーに盛夏火に出演していた新山さん。そう、盛夏火劇中のミュージシャンになったクラスメイトとは彼のこと。オルギアとは別ステージで演奏していた。 優しい歌声で激しいわけではないのに体に刺激を与える数々。ラップも取り入れ「ばらアイス」で締める。現在もコンスタントにシングルを発表。


町あかり(20日のみの出演)
 フジテレビの子供向け番組でうたのお姉さんとして出演するシンガーソングライター。番組そのままのあかりおねえさんとして登場。童謡の楽しい替え歌とオリジナル童謡。「ぼくは有識者」はほのぼとして良い曲。アレンジ童謡の「池じゃなかった!どんぐりころころ」はなんと電気グルーヴの石野卓球アレンジ。町あかりの歌い上げる手法で、この童謡達が素晴らしいJ-POPとして響き渡る。そしてラストは代表曲「もぐらたたきのような人」で盛り上げ終わる。ポップだが歌謡曲の香りもあり老若男女好きになれる。そ2022年に、『総天然色痛快音楽』でミュージックマガジン年間ベストJ-pop/歌謡曲部門1位を獲得。


怪奇!YesどんぐりRPG 『プレイヤーチェンジ』(20日のみの出演)
 ネクストブレイクと噂のトリオは化け物。始まりから終わりまで爆笑しか聞こえない。連発するギャグが外れない。プレイヤーチェンジが格好いい。ただこの日の主役はどんぐりたけし。どんぐりはギャグの天丼、挨拶ギャグ一本だけでもシチュエーションを変えたり変えなかったり。勢いが落ちない分かっていても笑える。廊下でどんぐりたけしと叫んだら爆笑。笑いすぎて死ぬかと思った。ギャグだけ、と思いきや実は全体の構造がとても練りこまれたシュールパフォーマンスの極致。その後は、テレビに多数出演の人気者に。ブレインク前夜に間近で観れて本当豪華。

徳原旅行 「テレビCM」「Youtuber」(19日)「バス運転手」「タクシー運転手」(20日)
 マセキ芸能社所属のピン芸人。オファー時は無名だったが、オルギアの前日にネタパレで初テレビ出演。TV出演後初ライブがこれというhocotenさんの先見の明。日替わりで合計4本のネタを披露。19日は音響ネタ二本。 ネタパレで披露した「テレビCM」はとんでもないCM、暴走が何処までも飛んでいく。 発想の面白いネタから一転して「YouTuber」はシンプルなボケ一本で勝負。これも面白。20日はマセキが若手ライブにつけるネーミングの謎センスいじりから始まり、音響ネタじゃない「バス運転手」。バス運転手の特殊な仕事はあのバスの運転だった。世代なので笑った。 「タクシー運転手」は音響ネタ。有名な怪談まさかの方向で笑いにする。その後も活躍し、R-1グランプリ2022準決勝進出。


春とヒコーキと町ルダさん (20日のみの出演)
昨年は鳥模倣クラブという名義で出演していたコンビとピン芸人。この時点でバキバキ童貞としてネットのおもちゃ(≒人気者)として話題のバキぐんぴぃが芸人としての本領発揮。いるだけで面白いのは流石。3人の化学変化



オルガナイザーGX 『代々木アニメーション学園』
 昨年はボボライブ主演として出たが、今回は単独出演。出ただけで危険な香り。よつやなぎさんの独白から始まり、怖い雰囲気からの代々木アニメーション学園。学院じゃなく学園。スローなテンポの声優育成コント。劇中の二人は真面目教えよう教わろうしてるのに生まれるアナーキーさ。コントとしては結構長いネタなのだが、しっかり笑いを外さない。面白かったが現在は解散。

銀杏亭魚折 『嫁いびり』(19日)『惚れ薬 (短縮版)』(20日)
 関西の実力派アマチュア落語家。今年も創作落語で登場。19日は、去年フェッティーズのあとで場が荒れてる中で落語をやる羽目になり今日は自分のあとがフェッティーズとMC松島で順番がおかしいと嘆き一笑い。 嫁いびりスクールに通う女性。嫁をいびれるか不安な母と心配する息子。そしてもう一人と交錯する。流石に安定して笑えて、オチも上手い
 20日は後半に登場したがこの時点でまさかの1時間押し。イベントの終了時間の関係で後半の出演者が上演出来ない可能性が生まれたため急遽ネタ変更し、見事に巻くことに成功。しかし笑いはしっかりプロの仕事。 江戸時代、惚れ薬を求める女の子。材料を集め作った惚れ薬はなんと・・・。 惚れ薬うどんが面白い。確かにこれは男惚れるとは思うけど。

トリコロールケーキ 『たきび』
 地蔵中毒との合作でも知られる人気ナンセンス劇団。観客が焚き火を想像しなければ始まらない。 知り合いの庭で無断で焚き火をする4人。1人が金持ちの庭なのにウッドデッキがないことに疑問を持つ。 脳軟化なナンセンスな会話の果てにまさかの音楽劇、普通に曲が良いしワードセンスの切れ味も鋭い。コロナ以降、公演活動は休止だがWEBラジオ「ラジオポトフ」を継続し、作・演出の今田は映画脚本を手掛けるなど活躍。


コンプソンズ  『前戯の子』
 タイトル通り天気の子のパロディかと思いきや宮本から君へパロディも。最低なパロディをひたすら人力と熱量だけでぶっ飛ばす。丸くなったAマッソなんて時事ネタも投入、まさかこの時普通に売れっ子になるとは思わなかったな。ラストは感動と爆笑。動画を見て。


中野坂上デーモンズの憂鬱『藤』
(19日のみの出演)
 佐藤佐吉賞受賞の人気劇団。怒る先輩、怒られる後輩二人。ところが、先輩は後輩の名前を間違えて覚えていた。という、ありがちなアイデアから藤の文字を含む苗字を軸に徹底した不条理を作り上げていく。意味が説明されないまま先輩は自分を見失ってしまう。笑いに包みながらも気味の悪い異世界。動きもなく舞台装置もなくとも演出1つで異形を作りあげる松森モヘーの演出。その後活動休止するも松森モヘーとして外部の作・演出を多数手掛けている。

パブロ学級  3人でのコント3本立て「師匠と弟子」他
 メンバー加入で5人組になったコントユニット。今日は3人での登場。「絶対にこにこちゃんに繋ぐぞ!」と叫んで巻くが、きっちり爆笑を獲る。この時出番の準備しながら舞台袖(廊下)で観ていたためちゃんと見れてない。でも最後の達人と弟子コントはそんな状態でも面白かった。取材にきた記者の前で達人がデモンストレーションをしたら弟子が勝ってしまい・・・。単純だからこそのパワー。ラストのコントはまさかのスタンガン(本物)登場で全力疾走の追いかけっこ。舞台袖に向かって走り出したのだが、そこでは私が観ていたので、私もスタンガンに追いかけられた。観客が観れない舞台裏で公社も全力疾走していた。

公社流体力学  『某県某所廃校』
 女性が行方不明になり同性の恋人は心配していた。そんな時彼女から地図が送られてくる。その地図を頼りに行くと、廃墟となった教室にかつて同性愛を否定されて自殺した少女の霊が いた。私は両日ともに18時台の出演だったのでMr.18時台と名乗っていた。ドラマティックなホラー百合演劇。今考えると、しっとりした内容なのでオルギア向きじゃないと気づいたが、ウケて欲しい笑いどころでウケ、評判も上々だったから良かった。vol.4の時は無名で誰も公社に興味を持ってなかったが、1年経ってせんがわのチャンピオンとして凱旋。次のにこにこちゃんに繋ぐため無駄なお喋りを省き爆速で本編に入った。でも、意外と巻けて調子に乗って宣伝してたら上演できるかギリギリで焦ってる萩田さん(東京にこにこちゃん主宰)がすごい勢いでドアをノックしていたので切り上げた。

東京にこにこちゃん 『バスガイドガールの恋』
 男はバスに乗ったがが、そこにいたバスガイドは個人的な思い出の場所ばかり案内している。どんどん彼女の異常性が明らかになるが、何故そんなことをするのか。やがて彼女の正体が明らかになって・・・。矢野杏子演じるバスガイドの暴走する笑いで引っ張るナンセンスコメディから、やがて感動的な純愛物語に変身する。東京にこにこちゃんの本領発揮。てっぺい右利きさんの困惑演技は絶品。


今田・大谷の『ほくほく!カレーラジオ』(20日のみの開催)
 アフタートークならぬアフターラジオ公開収録。トリコロールケーキ今田と地蔵中毒大谷のWEBラジオ、ゲストにhocotenさん。1時間押しから巻きに巻いて奇跡的に実施。結局30分たっぷり実施。ちょっとだけ私の声が聞こえる。



アングラの祭典だったこれまでから、ミュージシャンが増え幅広いサブカルイベントになった。それでいて劇団も佐藤佐吉祭参加の実力派が初参加で、さらに層が厚くなり豪華なイベントとなった。
オルギアの劇団たちは特異な個性を持ったオルギア系と呼ぶべき存在で、音楽業界でいうところのナゴム系、密室・地下室系のようなサブカル集団。
twitterで調べればお客様がアップした舞台写真がいくつかあるので是非とも見てほしい。全部ここに貼るの面倒くさいので自分が写ってるやつと自分のやつだけ。だって私の記事だもん。

じゃあもう一度前編から


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