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ちょっとはいしゃく『DOLL』の感想

演出:虻蜂トラヲ 作:如月小春 会場:シアターバビロンのほとりにて

名作を “ちょっと拝借” するユニット。これまで、つかこうへい・高橋いさを・モリエールといった劇作家の名作を上演してきたが、今回は伝説の女性演劇人如月小春の名作を取り上げる。

名門女学校に入学した五人の少女、個性バラバラで衝突しながらも仲を深める。そこからしばらくたった未来では警察が彼女たちの部屋を調べる。普通の少女たちが何故あんな事件を起こしたのか。

  80年代小劇場LOVEを貫き通す真っ向勝負の上演。会場のど真ん中に細長い舞台を設置し、そこを右に左に走り回って少女たちの機微を描く。
舞台は可変式で、“中”を横にしたステージから真ん中の四角が左右に分かれる。 冒頭、左右に分かれ中央が一本道になったところに作品タイトルが現れる。うーん、これオープニング演出・ジ・イヤー受賞。

作品本編はオールドスクールの演技と演出で勝負。 特に警察パートは4人が団体芸を見せて走って叫ぶ大迫力。これこそ小劇場の醍醐味。演劇らしい演劇でしか得られない栄養素がある。
 先鋭的な作品が多い現代において、こういった物は一歩間違うと古臭いものになりかねない。そこを 主演である五人の女優が持つ魅力を引き出して繊細に力強く少女たちの道行を描く。

そう、この作品の魂は5人の女優である。彼女たちをどう煌めかさせるかが演出の腕の見せ所である。そして、見事に成功している。

岡本真奈(ちょっとはいしゃく)、明るく元気で序盤を引っ張り見事な落差で終盤を引っ張る
札内萌花(スターダストプロモーション)、しっかり者をハッキリとした佇まいで魅せる
やまだまや(多目的ユニットかませゐヌ)、力強い顔立ちで少女の心情を明確に見せる
吉沢菜央(キルハトッテ)、最もキャラクター性の高い不良娘を演じ作品をかき回すが作品が壊れない塩梅を心得て絶妙
大久保祐南、弱い心を全身から放出する素晴らしい泣き虫演技

特に大久保は本当に泣き虫なんじゃないかと思うほど真に迫っている。泣く顔笑う顔すべてが輝いている。

女生徒パート、警察パート。この2つの道行が一つになる時左右に分かれていた舞台は一つにつながる。このアイデアはなるほどなぁと唸った。このための可変式か。

昔懐かしの小劇場を浴びたい人は今後の彼らを追うといいかも。


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