書店営業はじめました
ナナルイの社長ではなく、新聞社で働いている方が書きます。
ひとり出版社なので、社員とも名乗れず、社長からは「ボランティアさん」と言われています。
いまもナナルイ仕事とのダブルワークです。営業とは無縁の人生を歩んできましたが、『日常的な延命』をきっかけに、本格的な書店営業に挑戦することにしました。初めての営業は緊張の連続でした。声が震え、早口になり、脇汗をかき、本当に営業できているのか不安でした。
チラシを作り、名刺を配り、本を見てもらうために書店を訪れます。大型店では、書店員さんの手が空く時間がほとんどなく、短い時間を見計らって接触します。もちろんレジに入っているときに声はかけられません。一方的に一分程度で早口に説明を終えます。毎回、反省の連続です。
「書店員さんは目も合わせてくれないのか」と、がっかりして帰ると、後から注文が入ることもよくあります。逆に、にこやかに、いますぐに注文してくれそうだったのに、梨の礫ということもあります。
営業下手の自分みたいな人にも、独立系の書店のみなさんやさしい。丁寧に聞いてくれます。
それぞれの選書にこだわりがあり、本棚を見るのが楽しみです。営業中に1冊の注文をもらうために、2冊、3冊と買ってしまうこともあり、利益は出ませんがそれもまた楽しみの一つです。営業のたびに積読がたまり、平行して読んでいる本が10冊以上あります。
独立系で売れている本というのもあることを知りました。夏葉社さん、百万年書房さん、点滅社さんなど。
独立系書店さんだけで、「本屋大賞」をやったらおもしろいかもしれません。大型店とはかなり違うラインナップになると思います。
現在、約70店に営業しました。ここまで来るともう意地です。関東近辺で100店を目標にしています。遠方へ行くときは多少は旅行気分がないとやってられないので、例えば、真鶴の道草書店さんを訪れる際は、リーズナブルで美味しい寿司屋さんでお寿司を食べることにしています。
「本の棚貸し(シェア型本屋)は本屋にあらず」という記事を読んだことがありますが、この考えが書店の可能性を狭めていると思います。注目している書店では、本棚をシェアすることで棚主とつながり、コミュニティを形成しています。収益だけでなく、新しい書店の役割を担おうとしています。
最近、お世話になっている、大宮の夢中飛行さん
でこぼこ書店さん
藤沢のBOOKYさん
などは、相談会や勉強会、読書会など、本だけを売る書店から地域コミュニティのハブとしての役割を果たしています。
ここ2、3年、ありがたいことに独立系書店が急激に増えました。雑誌や新聞の街歩き特集で、知り合いの書店さんが取り上げられているのを見るとうれしくなります。ナナルイもそうですが、ひとり出版社も増えています。メガヒットは大手出版社に任せて、売れないけど、そこそこ売れる、良質な本は、小規模出版社で。みたいな流れになればいいと思います。
本が売れない時代です。昔は出版社が特権的な地位にありました。合同会社という制度もなく、起業するにも数百万円かかりました。取次と契約することも難しく、今でも大手とは強力なコネがないと口座は開けませんが、今はトランスビューや1冊取引所のような仕組みもあります。プロモーションも、新聞のサンヤツ広告など、SNSがない時代ではやれることは限られていました。組版ソフトの使い方が難しく、素人が本を組版することもとてもできませんでした。しかし、今は誰でもやろうと思えば始められる環境が整っています。
出版の民主化というと大げさですが、そんな未来を夢見て、今日もまた一冊の本を届けに書店を訪れています。
独立系書店とひとり出版社とのコラボもやりたいです。ちょっとおもしろい本ができるかもしれません。
2、3年のムーブメントで終わらせず、なんとか粘って10年続けられたら、出版のあり方も大きく変わっているかもしれません。そんな新しい時代が楽しみです。