ゼミ(又吉)
大学入試。
寒い寒い内地の3月、大学の食堂でデッサンの試験を受けた。
いくつかの立体を想像で組み合わせたものを描く内容だったと思う。
1浪し、かつ前期日程も不合格であとがない状況。
配られた真っ白のB3サイズの用紙。
念のために手を挙げて質問した。
「縦書きでもいいですか」
たまたま近くにいた試験官が教えてくれた。
「自分で考えてください」
「うそー」と思った。
甘ちゃんニキビ10代の僕は
「良いですよ」という優しい答えを期待していたんだと思う。
この試験官が、その後ゼミの恩師となる方。
大変お世話になって大学には7年も通ってしまった。
卒業してから10年近く経って、
先週、何人かのOBと先生を囲み、リモートでのゼミを開催した。
あれから「自分で考えたこと」を話す。
そして「先生が考えてきたこと」を聞く。
学びたい人が自主的に学者のもとに集って勉強していたことが大学の起源、
とこの前読んだ本に書いていた。
「さなぎのゼミ」と掛け持ちの新しい大学生活。
メタボリックヒゲ30代になってしまったがワクワクしている。
(又吉)