振り返りふじさん2-登頂を目指して-
前半では知らぬ間に下山している我々だったが、やっとスタート地点に着き、再度頂上を目指して進み始めた。
気持ち的に吹っ切れた私は、もう目の前に集中しよう!ただ今を楽しもう!と心切り替えた。そしたらおのずと視界が広がって景色を楽しめるようになっていた。
そんなことも知らないB型の親友ちゃんはペースを掴み始めたのか、はじめよりは少しリズム感のある足取りになってきていた。
タイムキーパーは私の担当!
休憩を含めた30分サイクルで登っていく。
常に意識するのは
①こまめな水分補給。
②膝をあげること。
③息をしっかり吐くこと。
水分補給は言うまでもなく大事。
膝を上げれば一歩、一歩と気付いたら踏み込んでいる。
高山病だけにはなりたくないから呼吸には細心の注意をはらう。息を吐ききることで酸素を沢山取り込める。
これは4年前の富士山登頂の経験がある私がこれだけは欠かさないようにする!という3箇条で、もちろん親友ちゃんにも行きのバスで何回も叩き込んだものだ。
少しオーバー気味に富士山はなめちゃいけないよ。ってビビらしたつもりだったけど、どうも2人でいると緊張感っていうのが生まれないのか、普段と変わらない会話がそこにはあって、しまいには『今頭の中何流れてる?』とか始まって、相方はその後、果てしなくずーっと歌ってた。歌うとかめっちゃ酸素必要ですよね。歌うのやめないのこの人ほんとバケモノだなとか思った。
そんな片隅で、少し昔のことも思い出したりしてみた。我々は小学校から現在のアラサーになるまでの仲。登下校はいつも一緒だったなぁ。とか。その時いつも相方は歌ってたなー。とか。一緒に歌う時ももちろんあったけど、記憶ではほぼほぼ聴き役だった。むしろそれが心地良くてすきだった。雨の日なんかはそれぞれ傘があるのに1本に収まってやつの歌を聴いてた。何十年経っても変わらないお互いの関係が急に愛おしく感じた瞬間でもあった。なんだか少し懐かしく、あったかい気持ちに浸ってたんだが…
まぁ気付いたら前方に親友ちゃんの姿。いつの間に入れ替わってる(笑)私について来なさいと言わんばかりの頼もしい背中。あぁ、そうだ。こうだった。この感じだった。いつもこの位置配置だった。妙にしっくりくるなあ。なんて、またまた昔を思い出してはノスタルジーな気持ちになったのだった。
そんな六合目、七合目だったような気がする。
当日は天候にも恵まれ、気持ち良い気温の中、奥深くまで広がる緑と青の景色にただただ感動しながら進んだ。
登っている時はひたすら坂と見つめ合う。頂上が壁のように立ちはだかっているような感覚がして挫けそうになるけど、一瞬立ち止まって後ろを振り返ると景色が最高だった。背中に沢山のパワーを受ける。また一歩づつ進む力を与えてくれる。自然って偉大だ。
富士山初心者がまず選ぶであろう吉田口コース。砂利のに足を取られるようなコースやちょっとした岩場のコースもあって、私たちが苦手なのは砂利。足がとられるから踏ん張らなくちゃいけなくて余計に疲れる。気を抜くと滑って転けそうになる。このコースではわかりやすく会話が閉じる。一方、2人の得意な岩場では、わかりやすく会話が弾む。『あー!そういえばロッククライミングしてみたかったんだよね〜』『今夢叶ってる!一石二鳥』てな具合に。
こんな能天気な2人には、打ち合わせなどなくとも絶対に口に出さない言葉があった。
ネガティブな言葉『疲れた。』
お互いがたとえ疲れていても、そのワードだけは選ばないことが分かりきってるから、ちょっと辛い時、しんどい時こそ声が出る。もちろん自分のためでもある、でもそれが相手のためになる。自分を鼓舞する。相方を支える。
『頑張らない!』
『期待しない!』
『過信しない!』
って2人だけの合言葉ができていた。
この先の登頂まで何回も何回も唱えた言葉だ。『がんばれ!』とか『もうすぐだ!』とかポジティブすぎないところが私たちらしい。登頂に向けて一定の精神状態でいるための我々にとって最適な言葉。
『がんばれ』って好きじゃ無いの。もう頑張ってるから。気づいたら頑張りすぎちゃうから肩の力を抜くための『頑張らない!』
七合目辺りから増えてくる山小屋だけど、次の山小屋が私達の予約したところかもしれない!とか期待するだけ無駄。『期待しない!』
自分はできる!それは地上においてのデータでしか無いので。今標高何メートルにいるかわかってる?『過信しない!』
周りから見たら変な人たちだったろうな。これ結構な声量で唱えながら登ってたから笑
次に続く…
次で最後かなぁ〜