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恋とか愛とかやさしさなら/一穂ミチ

はじめに

私の今年のベスト小説🥇

実は、Instagramではすでに
3回も投稿しているのです…

投稿しすぎでは?と
思われるかもしれませんが、
Instagramは字数制限があるので
そんな中には
到底おさまりきらずで🥲

そのくらい、考えさせられる作品でした。

Instagramでの投稿

まず1回目、好きだったところの抜き出し。


そして2回目、ネタバレなし感想。


最後の3回目は、ネタバレあり感想。

初読の感想

初読が11月で、
そのときに書いたのが上記の感想です。

3投稿にも及んでいることからも
分かると思うのですが、
すごく好きな作品で。

ただ、今思うと、
どこまでも「他人事」でした。

「え〜?私だったらどうする〜?」
という、自分には関係ないけれど、
考えてみようかなぁくらいの感覚。

ベスト9には入るけれど、
1位ではないよな〜と思ったのを
覚えています。

再読の感想

そして、本日再読。

初読から1ヶ月ちょっとしか
経ってないけれど、
自分の状況に大きな変化があって、
今ならきっと、もっともっと
新夏に感情移入出来る気がして。

「自分事」として、
この作品に入り込める気がして。

…やっぱり、そうでした。

同じ部分も抜き出したけれど、
抜き出し部分にも変化があって。

今回抜き出したのはこちら。

抜き出し

だって、盗撮したんでしょ。「性的姿態等撮影罪」でしょ。それはなかったことにはならないんでしょ。(p.31)

真剣に向き合えないのなら、他人に助けを求めるべきじゃない、そう考えた端から「何でわたしが?」とも思っている。わたしがしでかした犯罪でもないのにこんなに悩まなきゃいけないのはおかしい。低温火傷のように、盗撮のことは皮膚の下で常にじくじく疼いていた。生活のふとした瞬間、生まれ直したように何度でも新鮮に気づかされる。あ、そういえば、啓久って、盗撮したんだった。求婚された夜と、電話で報された朝の間に見えない線が引かれ、「そこまで」と「ここから」の自分が断ち切られてしまった気がしている。もう、あれ以前の気持ちを、あれ以前の自分を、一生取り戻せない。(p.40)

もう一回だけ忠告しとくね。今なら引き返せるから流されないで。再犯の可能性もあるんだから(p.51)

「相手の立場に立って考えなさい」、幼稚園から小学校高学年あたりまで、周りの大人に何度も言われたおなじみのフレーズ。人間関係における鉄則みたいに思っていたけれど、啓久になったつもりになろうとしても「わからない」が先に立つ。啓久の行動も動機も、新夏の理解が及ぶ遥か外側にあった。ずっと「わかんない」って思ってる気がする。でも「わかった」って思えたところで、それが何になるんだろ。(p.61)

「新夏に魅力がないとは全然思わないけど、ファミレスのドリンクバーと同じじゃない?そんなに喉渇いてなくても、とにかく何杯か飲まなきゃ損みたいな。質とか好みは度外視なんだよ」
「理解不能ですね」
「男の欲望って、女から見ればブラックボックスみたいなところあるよね。得体が知れなくて。」(p.67)

鏡の中の自分と向き合うと、至らない、という言葉が浮かんだ。わたしの外見が至らなかったから、啓久は盗撮なんてしたんじゃないだろうか。わたしがもっと美人だったら、きちんと化粧をしていたら、髪を伸ばしてつややかに手入れしていたら、ボディメイクを頑張っていたら、短いスカートを穿き、バッグに化粧ポーチを持ち歩いていたら。自分の好みを押しつけてこない啓久のやさしさに甘えてあぐらをかいていたから、こんなことになったんじゃないの?無表情な鏡像に問いかける。何でわたしが責任を感じなきゃいけないんだろうね、とも。(p.69-70)

わたしの彼氏、盗撮で捕まったんですよね、別れてないんですけど、と言えば、こんなにやさしい運転手さんだってわたしを軽蔑の目で見るかもしれない。共感が裏返って敵意に変わる。危ない男の傍にいる女だって危ないに違いないんだから。(p.79-80)

言えないよ。神尾くんも新夏もお互いひと筋って感じだったからさ。覚えてる?前に何かの拍子で新夏が『啓久のスマホを見たいと思ったことがない』って言ったんだよね。それはもう、曇りなき眼でさ。まぶしくて目がしぱしぱしちゃった。これ、いやみじゃないよ(p.86-87)

啓久以外の人となんてしたくない。啓久にしか見せたくないし、啓久しか見たくない。でも、啓久はそうじゃなかった。こんな、自傷みたいな気持ち悪い想像が何になるの。思い知らせたいんじゃない、わかってほしいだけなのに。(p.107-108)

性加害同然の不倫やらかした男と同じくらい、それを受け入れるパートナーが気持ち悪いよね。みっともない共依存を、時には「子どものために」なんて言葉でごまかして、男はどうせ反省もなく同じことを繰り返すのに。不倫夫と別れない芸能人も無理。テレビに出てたら即チャンネル変えるし(p.109)

「わたしも恥ずかしいよ」と新夏は迫った。「あなたが恥ずかしいことをした日から、ずっと。恥ずかしい人を許したくて、わかりたくて諦められない自分も恥ずかしい人間だと思う」(p.128)

大好きだった。その声、その呼び方、わたしの目に映るあなたが、今でも。写すことは移すこと。この瞬間の啓久を焼きつけたら、きっと胸の中からいなくなってしまう。耐えられない。わたしの外で完璧に残り続けるより、わたしの中で薄れて褪せて、でも消えないでいて。(p.144)

まとめ

人からの目なんてどうでもいいと思いながら
完全に人からの目を
気にせずに生きてなんていけない。

わたしも恥ずかしいよ。
あなたが恥ずかしいことを
した日から、ずっと。

この言葉がずっと
頭の中を巡っています。

なんで私は何ひとつとして
悪いことも恥ずかしいこともしていないのに
こんな思いをしなければいけないのか。

こんな立場に立たされないといけないのか。

いろんなことを考えなければいけないのか。

「盗撮した」という状況とは
全然違うはずなのに、
置き換えられてしまって、
同じ状況に思えてしまって、
この作品をベスト本に
選ばずにはいられませんでした。

早く結婚した方がいいとか、
この人を逃したらもう他の人は
現れないかもしれないとか、
そんな思いが正常な判断を
妨げてしまいますよね。

流されないでほしいなぁ、みんな。

多くの人に届いてほしい作品です。

未読の方は是非読んでみてください。
既読の方は、感想を聞かせてください。

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