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言葉をもたないもの:#1 香り

ある土曜日の朝、いつもそうするように庭に出て、太陽の光を浴びる。のびをして、深呼吸。そのまま、庭に植わっているラベンダーの香りをかいだら、涙がでた。香りが水のように、スーッと心に流れ落ちるような感覚。その瞬間に、閉じこもって窮屈になっていた感情がわっと出てきた。

思い返せばその数日前、生活にアロマを取り入れる友人から届いた服を抱きしめた時にも、ぽろりと涙がでた。何が苦しかったのか分からないけれど、ガチガチだった心身を香りがほぐしてくれて、ふっと力が抜けた気がする。(それは香りだけでなく、大切な友人からの贈り物だったというのも関係あると思う)

心身がガチガチなときは、いつも頭でひとりごとがいっぱいだ。ずーっと考え事をしている。プライベートも仕事も垣根なく、誰かに何かを伝える必要がなくても、どうやって伝えよう表現しようと、言葉を探し続けている。しかも、たいていネガティブに。眠れなく夜も多い。

最近のそんな時に、起きたできごと。言葉をもたない香りというものに、涙がこぼれるほど癒された経験は、私にとって大事だった。書くことで伝えよう伝えようと仕事を(時に趣味も)、必死にしてしまうことがあるけれど、言葉をもたずとも感じられる何かがあって、心が動くことがあるのを改めて体感できたのは、とっても良かったなと思う。

服もまた、香りをもたないのだよな

後日、お世話になっているアロマセラピストさんにこの話をしたら「それはいい経験をしましたね」と言われた。なかなかないことらしい。アロマセラピストさんは今回のことを「アロマが心に響く」と表現されていて、できごとを言語化してもらいしっくりきた。真ん中にすとんと落ちた後に包んでもらえるような響きで、音楽ともまた違い、言葉のように具体的でもない、香りだけの響き。

それからしばらく、私は香りに頼りながら生活をしている。

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蒔田志保
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