Vol.0 マウントレーニアと私
2008年、4月。
受験勉強から解放された私の心は、異常に気持ちが高ぶっていた。
おっきなレンタカーを借りて、はるばる地方から両親と引っ越し。
荷物を降ろして、パソコン台を組み立ててる間も、ワクワクが止まらない。
初めての一人暮らし。初めての都会。
私はここで、自由になるんだ。
一通り生活の基盤ができたところで両親が帰り、ポツンとひとりぼっちになったワンルーム。
夜になって周りが暗くなったら寂しくなるかなと思ったら、全然そんなことなかった。
とにかく解放感が半端なかった。
好きなテレビを、家族の目を気にせず見られる幸せ。
(しかも地元では放送されていないアニメが普通に放送されてる。すごい)
スーパーやコンビニに行く。
自分で食事を用意する。
そんな行為でも、すごくドキドキしたのを覚えています。
「珈琲を飲むこと」
それは都会に出て達成してみたいことの1つでした。
「背が伸びなくなるからコーヒーは飲んじゃダメ!」と言われて育った私にとって(そのくせに150cmで成長は止まってしまった)
珈琲は憧れの飲み物だったのです。
そこで当時、コンビニに行って見つけたのが、マウントレーニア。
なぜそれを選んだのかは覚えていませんが
(多分パッケージかな。今と全然変わってないよね)
チロルチョコでしか味わったことのない、ほろ苦い大人びた味に、ほんのり甘い飲み物。
正直、しばらく、これがおいしいのかわからなかった。
でも、
❞これが都会の女の子が味わってる飲み物なんだ❞
そう考えると、「珈琲を飲む」その行為に、病みつきになっていました。
あれから約15年。
すっかりマウントレーニアの甘さは身体に堪えるようになってしまったけど。
真面目に勉強することしか知らなかった私にとって、憧れだった味。
飲むと羽目を外した気分にさせてくれた、背徳の味。
でも今では飲めなくなってしまった味。
私にとってマウントレーニアは、そんな飲み物になりました。
大学への入学が、勉強のゴールだと信じてやまなかった、
あの頃の私を象徴するかのような。
それが間違いだったことに気付くのは、もう数年先。
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